第140話 和気あいあい

『くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!首を斬ったくらいでいい気になるなァッ!普通に斬っても僕を倒すことは…出…来…な…い…?あれ?…首…が…元…に…戻…ら…な…い…?』


(ユニークスキル「切断」をクロンの完全解放に乗せると、“概念”ごと「切断」するトンデモ能力が生まれるんだよ。今は、1日一回しか使えないけどね。あと、斬口に精霊殺しの毒を仕込んどいたから徐々に朽ち果てていくし、スピネルの黒衣も斬口に残ってるから再生したり修復したりすることも出来ないよ。でも、忠告通り、油断せずにきちんと還ってもらおう。)


コウスケが左手中指の”修復した指輪”に魔力を流すと神社の鳥居のようなオブジェクトと桜の大樹が再び現れた。


…箱庭「誅魂の社」…


『そ…の…ヘンテコ…空間は…壊した…はず…?』


(素材さえあれば、何度でも修復できるんだよ。)


再度、展開した桜の大樹から花びらが舞始めた。


桜の花びらは、再び、ゆっくりと元精霊王の周囲を覆い始める。


『う…わぁぁ…ぁぁ…ぁぁぁッ!嫌だ…ぁぁぁぁ…ぁぁッ!』


桜の花びらが触れるたびに、元精霊王の身体が溶かされていく。


『コウスケッ!まだ油断するんじゃないわよッ!この不燃ゴミは処理が大変なんだからッ!残滓だけでも生き延びると、“覚えてろぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!いつか必ず復讐してやるぅぅぅぅッ!”なんて叫んで、逃げちゃうんだからッ!』


『全くもって、そのとおりじゃッ!コイツは、リサイクルもリユースもできない、害悪を撒き散らすだけの危険廃棄燃料じゃ。最後の最後まで気を抜くのではないぞッ!』


(もの凄い言われようだな…。)


コウスケは魔力を練り始め、イメージを完成させると、漆黒の死神鎌を横薙ぎに一閃する。


「闇の力の奔流よ、敵を飲み込め―“ダークメイルシュトローム”―」


元精霊王を中心に円形状に闇のオーラが渦巻き始めると、桜の花びらを巻き込みながら、元精霊王の生命力を吸収していく。


精霊殺しの毒に侵され、斬口は再生できず、桜の花びらにミキサーのように切り刻まれ溶かされ、闇のオーラの渦に生命力を吸収されていく。


『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


(まだ、叫ぶ力が残ってるのか。凄い生命力だな…。)


更にコウスケが左手”薬指”の指輪に魔力を流すと、元精霊王がミキサーされた状態のままスッポリ硝子の球体水槽に閉じ込められた。


…箱庭「球体硝子乃水槽」…


(これで効率よくミキサーできるし、逃げられないかな。)


『コウスケッ!ナイスアイディアよッ!透明だから、苦しんでいる姿がみんなによく見えるところが最高ッ!』


『フハハ。さらに水槽を二重三重にしてはどうじゃ?下から火で炙るのも良いかもしれんのう。』


《風の精霊》達もやって来て会話に加わる。


『おっいいね♪風の結界も張って、さらにぜ~ったい逃げられないようにするのも良いね♪』


『雷の鎖を張り巡らすのもいいでごわすな。』


『火で炙るのは大賛成だけど、水でコーティングしてからの方がいいわ。』


『フフ…。ウインディの水でレンズを造って、私の光を反射させましょう…。』


『氷漬けにするのも良い…。』


『ガラスを更に強化できるゾイッ!装飾を施すのも良いなッ!』


『ぜひ、アイツの悪名を後世に残すためにガラスに文字を彫りましょうッ!タイトルは、“天下の大裏切り者”でどう?』


『い~や、シンプルに“嫌悪の塊”なんてどうかな?』


『そんな、生易しいタイトルではダメよッ!“足の臭いを凝縮したような身も心も汚い精霊もどき”くらい書かないとダメだわッ!』


『フハハ。そんな立派な名前をつけなくとも良いのじゃッ!一言“ゴミ”で良いッ!』


“「食王様が華麗に美しく聡明に消滅させた何かの物体」が良いに決まっているッ!”



(会話は物騒なのに、和気あいあいとしてるな…。)

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