第110話 オーバーキル

コウスケが、白と黒の階層で作戦会議をしていると、ブレイブとアーチャーが報告にやって来た。


『コウスケ様、殲滅完了して参りまシタ。やはり、御見立てどおり、様子見だったものと思われマス。相手には、作戦や戦略といった概念はなく、理性の無い獣のように直線的に襲ってくるだけの雑魚ばかりデシタ。個々の強さもワイバーンレベルでとてもドラゴンと呼べるものでは到底ありませんデシタ。』


『怪我人ゼロで倒せちゃったですよ~。あれは遠距離攻撃訓練よりも楽勝でした~。』


(様子見だったとしても、強い個体や偵察・報告用の使い魔的なヤツが混ざっているはずなのにそれも無いようだったしな。)


「お疲れ様。カブトムシ達を通して、活躍をみていたよ。ブレイブ、“連”をもう使えるようになったんだね。アーチャー、あそこで遠距離攻撃にシフトする作戦は見事だったよ。」


『『有り難き幸せ(~)ッ!』』


(俺が苦労して開発した技術を短期間で会得するとは…。ブレイブは流石だな。アーチャーも指揮官として順調に成長してきたな。ちょっと、俺と思考が似てきたけどね。)


そう考えていると、会議に参加していた紅ゴブがスクリーンに映るドラゴンを発見した。


『若旦那の予想通り、本隊が攻め込んで来たみたいでゲスね。数は少ないでゲスけど、…シルバードラゴン…ゴールドドラゴン…プラチナドラゴン…ヒトの世界に干渉するということで本に載っているくらい有名なドラゴン3体ですね。どうしやすか?若旦那。』


(白と黒がやる気満々の顔してるんだよなぁ。)


「当初の作戦通り、白と黒のドラゴン部隊に任せる。白、黒、お願いね。」


『『おまかせください。』』


スタンバイしていた白と黒は、直様部隊を連れて飛び立っていった。


コウスケは、椅子に座り直すとあることを思い出した。


「ダミアン。そういえば、この前取り付けた迎撃用の魔道大砲ってどうなってる?」


<そういえば、性能テストをせずに放置していましたね。なんだか、設置して満足していましたね。試しに、あのドラゴンどもにぶっ放してみましょうか?大してダメージは与えられないと思いますが、牽制程度にはなるでしょう。>


(ダミアンの言う通り、紅ゴブのカブトムシ達が優秀すぎて活躍の場を失ってしまった迎撃装置の起動テストするのも良いかもな。)


「白と黒が現場に着くまでにもう少し時間がかかるから、ダミアンの言う通り、この機会を利用して性能テストしてみよう。あと、せっかくだから他の迎撃装置も試してみよう。」


<はいッ!早速、魔道大砲からぶっ放しますね。エネルギーは十分。照準も良し。それではマスター、記念すべき第一発目ですので、合図をお願いします。>


(記念式典みたいだな。ダミアンなりの心遣いだから、ノリよく行こうかな。)


コウスケは、前の世界のアニメに登場していた戦艦の船長をイメージしながら合図を出す。


「…魔道大砲…発射ぁぁぁッ!」


「続けて、対空用パイルバンカー…発射ぁぁぁッ!」


「さらに、対空用ミサイル…発射ぁぁぁッ!」


「さらに、対空用魔道レーザー…発射ぁぁぁッ!」


「最後に、ジェノサイドクラッシャー…一斉発射ぁぁぁッ!」


(ふぅ。叫んだらスッキリした。でも、恥ずかしいな。慣れないことはするもんじゃない…うん?)


コウスケがあたりを見渡すと会議に参加していたメンバーがスクリーンに釘付けになっていた。


(うん?スクリーンになにか映って……。なんだ?ボロボロのドラゴン3体が黒こげになって、墜落している…。)


紅ゴブが青い顔でコウスケに問いかける。


『若旦那…。ドラゴン達のバリアをかき消した初撃の魔道大砲は、まぁ、常識の範囲内でやんした。しかし、次の総ミスリルできた巨大な槍はなんすか?軽々とドラゴン達を串刺しにしちまいやしたよ。さらに次の巨大な瓢箪みたいな弾はなんすか?着弾した瞬間、大爆発起こしちまいやしたよ。しかも、その次の白さんのブレスみたいな光線も意味がわからないでゲス。そして、最後の攻撃に至っては完全に理解不能でゲスね。光ったと思ったら、ドラゴン達が意識を失い墜落しちゃったでゲスよ。はぁ…。』


<マスター…。完全にオーバーキルでしたね。>


「うん…。」


コウスケは、現場で立ち尽くす白と黒の映像を眺めていた。

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