第103話 一を飲んで十を知る
執事のブルーダが優雅な手つきで、日本茶を淹れていた。
『いかがですかな。我王様。』
(ブルーダは、見た目も中身も完璧な執事だな。これが紅茶だったら、もっと様になったんだろうけどね。)
コウスケは香りを楽しんだあと、一口飲むと濃厚な味わいと深い甘みとコクが口一杯に広がった。
「うん。茶葉の栽培・収穫・加工・淹れ方・陶器どれも合格だね。これなら、食いしん坊軍団も納得すると思うよ。」
ブルーダは安堵の表情を浮かべて、にっこり微笑んだ。
(これだけ良い茶葉が量産できるようになったから、お菓子作りにも使ってみようかな。ユニはああ見えて和風なものが大好きだから、抹茶のスイーツなんか作ったら、飛び上がって喜ぶだろうな。)
隣で日本酒を飲んでいる人化形態のクロンは、理解できないというような表情でコウスケを眺めていた。
『そんな葉っぱを乾燥したもののどこが良いのかのう。皆、この神酒である日本酒を飲めば良いものを…。』
(日本茶の良さを伝えてみるか。)
「クロン、これを飲んでみてよ。」
コウスケは、次元収納から日本茶で作った特製の氷を取り出すと、クロンのグラスにゆっくりと入れた。
『わわっ!何をするのだ!日本酒に氷など邪道なことを!』
「まあまあ。飲んでみてよ。」
クロンは、恐る恐る氷の入ったグラスを口に運ぶと目を見開き驚愕の表情を浮かべる。
『こ、これは驚いた…。良い意味で日本酒の表情が変わった。この新鮮な苦味が加わることで今までの感じなかった特徴がわかるようになった。そうかッ!熱燗にすることで味わいが変わったように、相性の良いものを組み合わせることでも味わいが変わるのじゃな。我はそれでもそのまま飲むのが好きじゃが、これはこれで一つの楽しみ方かもしれん。そうかッ!コウスケはこれを伝えたかったんじゃな。凝り固まった狭い視野ではなく、もっと広い視点で物事を考えることを…。他者を認め他者を尊重する…。そうすることで、自分自身を更に一歩前に進められると…。深い…。深いのう…。』
(ただ単に、昔好きだった飲み方を教えてあげただけなのに…。)
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