第85話 閑話 蝿の王3

帰還石で拠点に戻ると執事姿の悪魔が出迎えた。


『はて、エンヴィー様はご一緒ではないのですか。』


(俺様よりもエンヴィーの世話を焼くムカつくヤツめッ!)


「主人が帰ってきたら、“お帰りなさいませ”だろうがッ!クソじじぃッ!」


執事姿の悪魔は片眉を上げ、憐れむような表情になった。


『はて、ワタクシの主人はエンヴィー様であり、あなたではありません。…それにしても“ノロイ”にかかっているご様子ですが、スロウス様とでも戦ってきたのですか?』


…スロウスの“ノロイ”にかかっている?…


…なぜ…-蝿の王-の姿になったにも関わらずクソ鳥の動きをなぜ追えなかった?…


執事姿の悪魔の言葉で点と点がつながった。


「エンヴィーのやろぉぉぉ、本気でやりやがったなぁぁぁッ!」


パチンッ!


執事姿の悪魔が指を鳴らすと、屋敷中の悪魔達が集合してきた。


『フフッ!理解が追いついてまいりました。エンヴィー様は、ようやく我王様を見つけたのですね。そして、ワタクシ達に復讐の機会をお与えくださった。そうですよね?』


「…我王?…復讐?…」


執事姿の悪魔はこみ上げてくる笑いをこらえながら答える。


『あぁ、あなたは主体的に物事を考えずに短絡的な行動ばかりとっていたので、お分かりにならなかったのですね。エンヴィー様は、真の主-我王様-を見つけるまで”仕方なく”あなたに力を貸していたに過ぎないのです。そして、それを勘違いし目に余る行動を取り続けた結果、こうして屋敷中の悪魔から深い恨みを持たれているのです。特に最近のあなたは、“嫉妬”だけではなく“憤怒”“怠惰”“傲慢”“色欲”のオンパレードでしたから…。本来、大罪武器とは溢れ出る欲望を戒め昇華へと導く存在。欲望を叶える存在ではないのです。悲しいことにセブンウェポンの”仮”の所持者の皆様は誰一人理解している者はいませんがね。』


集まってきた屋敷の悪魔達は状況を把握すると武器を構えて次々に臨戦態勢に入る。


『使い潰された弟の仇ッ!』

『面白半分で潰された右目が疼くぜぇッ!』

『娘を返せぇぇぇッ!』

『やっと、この日がきた…。』

『お前だけは許さねぇぇぇぇッ!』

『絶対に復讐してやるッ!』

『…………。』


(な、なんだよ。コイツら…。何をしても問題ない下僕じゃなかったのかよッ!!)


困惑している俺様の表情を見て執事姿の悪魔は腰に下げていたレイピアを鞘から抜いた。


『今の“ノロイ”にかかっているあなたになら、ワタクシ達でも刺し違えることくらいはできるでしょう。……覚悟しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!外道がぁぁぁぁぁッ!』

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