第63話 死神
…ランクエラー マスタールーム…
ダミアンからのプロテクト作業の完了連絡を受けたコウスケ達は、ランクエラーに戻っていた。
「ジュゼ王国の次はロプト公国かぁ。」
(こんなに執拗に狙ってくることを考えると、俺とクロンの能力は結構バレているな。しかし、転移場所をマーキングするためだけにユニークスキル持ちを送り込んでくるなんて頭がおかしすぎるだろ。)
<マスター。ランクエラーにジュゼ王国とロプト公国の軍隊が近づいています。あと1日程で到着する見込みです。>
(自分たちから仕掛けてきたくせに、弔い合戦のつもりか?)
「ダミアン、”引っ越し”しようか?」
<”避難”ではなくて“引っ越し”ですか?>
「うん。ヒスイが昔住んでいた魔の森の奥に大きな龍脈があるみたいなんだ。そこなら周辺のモンスターも強いし、なかなか人間は攻めこんで来れないらしい。ヒスイも調律の仕事がしやすいから良いかなって。」
<ランクエラーはどうされるのですか?>
「ランクエラーごと”引っ越し”するよ。自称ダンジョン神から交換したユニークスキル「ダンジョン改変」で一時的にダンジョンを圧縮できるようになったんだ。あと、”ダミーコア”を“スペアコア”に改変すると作業が楽になるからダミアンさえ良ければ………………………………」
<ッ!!!素晴らしいですッ!!!い、今すぐー“スペアコア”ーに生まれ変わらせてくださいッ!>
(食い気味で返事してきた…。でも、ダミーコアじゃなくなったら“ダミアン”っていう名前は変えてあげた方が良いかな。…いや、それだとダミーコアだから“ダミアン”と安易に名付けしたことがバレてしまう…。)
「う、うん。もともと“引っ越し”するために必要だったから、こちらからお願いするよ。」
<よ、喜んでお引き受けしますッ!これからはより誠心誠意お仕えすることをお約束しますッ!マスタァ~……本当に嬉しいですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!>
「う、うん。それじゃ、スキルを使うよ。」
<はいッ!>
……ユニークスキル「ダンジョン改変」を発動します…
コウスケは表示されたコントロールパネルを操作していく。
…ダミーコア“ダミアン”をスペアコア“ダミアン”に改変します……
…
「ダミアン、どう?何か変わった?見た目はあんまり変わっていないけど。」
<あぁ……。マスターとの繋がりを感じます。能力も権限も増えたので、今まで以上にマスターのお役に立てそうです。>
「良かった。じゃあ、俺は龍脈を探しに行くから。後は頼むね。」
<お任せくださいッ!>
……魔の森最奥部……
ユニが索敵スキルでモンスターを次々に発見していき、モンタが千里眼・鑑定スキルでステータスを確認していく。
「コウスケ様、モンタ、500m先に敵影を確認しました。」
『あっちだな。…あれは3体ともトロールだぜ。高レベルの自己再生スキルを持っているから、一気に倒すか燃やすか凍らせると良いぜ。』
「ありがとう。トロール3体ね。雷魔法で痺れさせて、氷魔法で氷漬けにして、風魔法で小間切れにするか。」
(この二人がいると、敵を倒すのがただの作業になるんだよな。まあ、楽だから良いんだけどね。)
コウスケは二人からの情報をもとに、魔法を選択し魔力を練り上げていく。
…チェインライトニング(雷魔法)
…ブリザード(氷魔法)…
…ウインドスラッシャー(風魔法)…
トロール達は苦しむ間もなく絶命した。
……ユニークスキル「交換」を発動します。対象と「交換」したいものを選択してください………
………
『コウスケ…。この先にとんでもない化け物がいるぜ。エルダードラゴン…実在してたのか。ステータスは文字化けして見えねぇ。』
(鑑定が文字化けするのは初めてだな。相当実力差があるのか、特殊な結界を張っているのか…、鑑定阻害系スキルを持っているのか…。まずは会話をしてみるか。言語を利用していればユニークスキル「異世界言語」で会話できるはず…。)
「会話してみるか。」
『フハハ!エルダードラゴンか。相手にとって不足なし。』
(クロンはすでに戦う気満々だな。)
コウスケは移動系スキルを使用せず、ゆっくりエルダードラゴンに近づき話しかけた。
「こんにちは。お話しませんか?」
エルダードラゴンはコウスケの姿を見るなり、口にブレスを溜め始めた。
『人間と話すことなどない、どうせ龍脈の力を独占するためにやって来たのであろうッ!死ねぇぇぇぇぇぇぇッ!―滅びのブレス―ッ!』
エルダードラゴンは、レーザービームのようなブレスを吐いた。
閃光と共にブレスがコウスケに襲いかかる。
「…そのまま返します。」
…時空間リフレクター(時空間魔法)…
ブレスは反射され、反射されたブレスがエルダードラゴンの顔に直撃した。
『な、なに時空間リフレクターだとッ!…グハッ!…おのれぇぇッ!よくもやりおったなぁぁぁぁッ!』
コウスケは無表情で問いかける。
「話し合いの余地はないんですね。ここからは本当に命の奪い合いになりますよ。」
エルダードラゴンは問いかけを一蹴し、右腕を振り上げた。
『人間との話し合いなどもとから存在せぬわッ!死ねッ!』
コウスケの胸のペンダントから≪闇の精霊≫が顔を出した。
『へへ~ん。ようやく出番のようね。クロン、相手はエルダードラゴンよ。ちょっと卑怯くさいけど、あの技で倒すわよッ!』
『フハハ!あの技ならばエルダードラゴンの装甲も簡単に貫けるのう。よし、わかった!そうと決まれば、コウスケッ!いくぞッ!』
コウスケはため息をつき、振り下ろされたエルダードラゴンの右腕を見つめながら、≪闇の精霊≫の真名を呼んだ。
…精霊纏装―スピネル―…
≪闇衣―グリムゾン・ダークネス―≫
闇の集合体がコウスケの身体の周囲を覆い、エルダードラゴンの右腕を受け止めた。
『精霊纏装だとッ!その技は数百年前に失伝したはずッ!…精霊達が力を取り戻しておるというのか?』
コウスケは闇衣をクロンに纏わせ、巨大な漆黒の死神の鎌を造り出した。
-グリムゾン・デスサイズ・リーパー-
巨大な漆黒の死神の鎌を持ち、闇衣を身に纏う姿はまさに死神そのものだった。
『し、死神!?わ、儂は何を相手に戦っているのだ…!?』
…闇衣ステルスモード…
…気配遮断スキル発動…
…短距離転移(時空間魔法)…
コウスケは姿と気配を消してエルダードラゴンの背後に転移するが…。
『…ッ!ハッハッァ!死神のような格好になったが、所詮は人間だなッ!転移先が魔力の流れで丸見えだぞッ!死ねぇぇぇぇぇぇッ!―ドラゴンテイル―ッ!』
魔力の流れで転移ポイントを読まれてしまい、強力な尻尾による攻撃を受けた…
…かのように見えたが、攻撃を受けたのは“闇の分身”であった。
闇の分身は飛散し、エルダードラゴンの背後に死神の姿が現れた。
「…格上相手に単純な転移攻撃はしないよ。いくつかフェイントを入れないと痛い反撃をくらうからね。まあ、格上と戦ったことがない奴には理解できないと思うけど。」
巨大な死神の鎌が、エルダードラゴンの首を両断しようと振り下ろされた。
しかし、左腕でガードされてしまい左腕と首半分を切断するところで止まった。
『バ、バカなッ!わ、儂の鱗がたった一撃で…。ドラゴニックオーラも纏っていたはずなのに…。』
(一撃で倒せると思ったのに…。思った以上に装甲が堅いな。本来の防御力に加えてスキルで強化しているな。でも、間違いなく深いダメージは与えているはず。)
コウスケは一切動揺することなく次の攻撃へ移行する。
…ダークネス(闇魔法)×5…
…ダークプリズン(闇魔法)×5…
『な、なんだこの闇魔法は!?レジストに時間がかかるぞッ!?』
…闇衣ステルスモード…
…気配遮断スキル発動…
…短距離転移(時空間魔法)…
(時間稼ぎの阻害魔法が思いのほか効いているし、さっきの転移フェイントも成功しているから、このまま攻めていこう。)
コウスケは魔力を練り始め、イメージを完成させると、大鎌を横薙ぎに一閃する。
「闇の力の奔流よ、敵を飲み込め―“ダークメイルシュトローム”―」
台風の様に円形状に闇のオーラが渦巻き始めると、回りの物体を引き寄せながら、引き寄せた物体の生命力を吸収していく。
闇のオーラの渦は、やがて、エルダードラゴンに向かって進路を進んでいった。
『はぁはぁ…。こ、今度は一体なんだッ!?こ、こんなの儂は知らんぞぉぉぉぉぉ…ち、力が、力が吸われていくぅぅぅぅ…』
(なんだ?なぜブレスや魔法で相殺しようとしないんだ?)
『フハハ!弱い者をいたぶることしかしたことがないから、強者との戦い方を知らないようじゃな。せっかくのステータスが泣いておるのう。』
『コウスケッ!あんなヘタレ、さっさとやっつけちゃってよッ!』
(なんか腑に落ちない結果に終わりそうだけど、最後まで気を抜かずに倒そう。)
コウスケは、再度、魔力を練り始めた。
『…ッ!待ってくれッ!話し合いに応じるッ!応じるからもうやめるのだッ!』
そして、エルダードラゴンの言葉に一切耳を貸すことなく、大鎌を横薙ぎに一閃する。
「闇の力の奔流よ、敵を飲み込め―“ダークメイルシュトローム”―」
闇のオーラが渦がエルダードラゴンに向かって進んでいき、始めに放った闇の渦と合流するとさらに勢いを増した。
『おぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉぉぉ力がぁぁぁぁぁぁ…。やめてぇぇぇぇぇくれぇぇぇ…。』
(…なんかまだ余裕がありそうだな。)
コウスケは、再度、魔力を練り始めた。
『お、おい…。まさかもう一撃撃つつもりか?せめて傷が回復するまで待ってくれェェェッ!』
イメージを完成させ、再度、大鎌を横薙ぎに一閃する。
「闇の力の奔流よ、敵を飲み込め―“ダークメイルシュトローム”―」
闇のオーラが渦がエルダードラゴンに向かって進んでいき、2発目と合流するとさらに勢いを増した。
『おぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉぉぉ力がぁぁぁぁぁぁ…。やめてぇぇぇぇぇくれぇぇぇ…。』
(…まだ余裕がありそうだな。)
………
…ようやく5回目でエルダードラゴンは地面に倒れ込んだ。
(スゴい生命力だった。あとは苦しまないように息の根を止めるか。)
コウスケは大鎌を振り上げて魔力を練り上げていく。
すると、エルダードラゴンが人化して幼女の姿になり、命乞いを始めた。
『た、頼む。…命ばかりは助けてくれ。』
(自称ダンジョン神に続いて、エルダードラゴンも幼女に変身したな。この世界は幼女だと助かる確率が増えるのか?)
「命の奪い合いになるといったはずだよ。」
『エルダードラゴンらしく、誇り高く散るがよい。』
『負けそうになったからって調子がいいのよ。話し合いなんか存在しないんでしょ。自分の言ったことに責任持ちなさいよ。』
…取り付く島もない…
命乞いが効かないと悟ったエルダードラゴンはもとの姿に戻り、龍脈から吸収した力を解放した。
『フハハ!そうだッ!エルダードラゴンッ!死力を尽くして戦うのじゃ。』
そして、エルダードラゴンは…力を振り絞り…
………逃走を図った。
『ヒィィィ!お母ぁぁぁちゃぁぁぁん!!』
コウスケは大鎌を振り降ろした。
「今度こそさようなら。」
…宵闇の静刃…
漆黒の飛ぶ斬撃はエルダードラゴンの首を静かに両断した。
………器に対して既定値を超える経験値を獲得しました………溢れた経験値を使用してレベルアップシステムを次のステージに移行します………
………レベルアップしました………
………ユニークスキル「交換」を発動します。対象と「交換」したい物を1つ選択してください………
・龍闘気スキルLv:10Max
→ドラゴニックオーラを纏うことができる。
・龍息吹スキルLv:10Max
→ドラゴンブレスを吐くことができる。ブレスの属性は素質に左右される。
・厄災龍の武具(剣、楯、鎧、兜、ブーツ)
・ステータスオーブ(全+1000)
・交換しない
(超豪華…。)
コウスケは「龍闘気スキル」を選択した。
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