第23話 閑話 ~因果応報~
「騎士団長!正規ルートのトンネルが塞がれていた件ですが、土魔法使いによるとトンネルは中まで完全に塞がれており、魔法による撤去は困難とのことです。」
…………
「騎士団長!食料が残りが少なくなっております。ランクエラーでは、もともと食料調達が難しいのですが、今回は特に難しく、森エリアでの木の実や果物の現地調達すら難航なしており、食料の消費が予断を許さない状況になっています。」
……………
「騎士団長!迂回ルートを抜けましたが、巧妙に隠された落とし穴トラップがいくつも設置されており、大きな被害を受けています。」
……………
「騎士団長!森エリアのあちこちにワイヤートラップが仕掛けられていて、大きな被害を受けています。」
……………
「騎士団長!崖から巨大な岩石が落ちてきて、大きな被害を受けています。」
……………
「騎士団長!突然大量の水が押し寄せてきて、大きな被害を受けています。」
……………
「「「「騎士団長ッ!!!」」」
……………
騎士団長は、ランクエラーの捜索を任命され、騎士団の精鋭100名を連れ、捜索を開始していたが、日々報告される情報にノックアウト寸前だった。
ランクエラーは、モンスターが強いうえに経験値やドロップもない最悪のダンジョンだが、今回はおかしい。トラップの数が異常なのだ。
「…もうすでに8割以上の隊員が機能していない。このままでは、文字通り全滅してしまう。…仕方がない…。撤退するぞ!」
騎士団長は、全ての責任を被る覚悟で決断した。
(しかし、我々はなにを相手に戦っているのだ?相手は本当にこんな地獄のようなダンジョンに1ヶ月以上の隠っているのか?)
ドサッ!!!
「…ッ!?」
突然、身体の力が抜けて、地面にひれ伏した状態になった。
更に、首に痛みが走り、一瞬意識を失った。
次に気づくと、緑髪の耳長の女が目の前にいた。右手に“神殺し”を持って…。
「お久しぶりです。私の村を滅ぼした時は、副団長だったようですが、出世したんですね。騎士団長殿。」
『ほう?貴様が騎士団長か?フハハ!安心せい。言葉と痛みだけは機能できるように毒を調整しておる。貴様には、色々と聞かせてもらうぞ。』
(ぐッ!?あの緑髪は、魔の森付近に住んでいた少数民族の≪病気持ち≫か?最近壊れて廃棄したと聞いていたが、生き延びていたか…。それよりも、問題は“神殺し”だ。インテリジェンスウェポン…?意思を持っているのであれば、王国に強い恨みを持っているはずだッ!積極的に敵対されたら取り返しがつかないぞッ!)
『どのような方法で我等の居場所を突き止めた?今回の捜索を指示したのは誰だ?どのような能力者を抱えている?どのようなアイテムを所持している?…全部、聞かせてもらうぞ。』
「クロン様。どうやら、コウスケ様を拷問していたのも、この塵だそうです。長く苦しめて情報を引き出すためにも、あの方法を試してみてはいかがでしょうか?」
(コウスケ!?確か、あの≪ハズレ≫の名前!やはり、あの異世界人が絡んでいたのか!何故拷問したのがわかる?あの方法とはなんだ?)
『ほう?コウスケをあんな状態にしたのは、貴様じゃったか。召喚されたばかりで、右も左も分からない子どもをいたぶって喜んでいたとは、良い趣味をしているのぅ?しかも、女神に祝福された御子ぞ?我も聖剣の端くれゆえ、いまからおこなう方法はさすがに躊躇うのじゃが、貴様には遠慮はいらないみたいじゃの。いままで、その手で何人罪のない人間を犠牲にしてきたのやら。』
(すべて筒抜けか…。しかし、あの≪ハズレ≫に女神の祝福だと!…)
「ま、待ってください!!何でも≪従います≫から、命ばかりはお助けください。」
(いつでも発動できるように“帰還の石”を身に付けている。それに、切り札もある。時間稼ぎをしながら、なんとか情報を少しでも引き出さなくてはッ!)
『フハハ。本当に油断できんな。懐に”帰還石”を隠し持っておるのだろう?情報を少しでも聞き出してから逃げるつもりかのぅ。』
(思考を読まれている!?くそッ!覚えていろ!―“帰還”―、……発動しない?確かに首に掛けていたはず…。本格的にマズイ!……こうなったら……)
『帰還の石は使えなかったみたいじゃな?…すると…今度は、“隷属”した≪時空間の精霊≫を使って、無理やり転移する気じゃろう?精霊は助け出して、今はユニの中で眠っておるわ。酷使するだけ酷使して、最後はダンジョン内転移を無理やり使わせて使い捨てるか?本当に救いようがないヤツらじゃ。…もう遠慮はせん。…条件は揃った…それでは始めるぞ…。』
………ユニークスキル「合成」を発動します………“魂”と“隷属の首輪”と“隷属の魔法陣”を「合成」します………
『よし…。貴様の魂に直接“隷属”を刻みつけてやったぞ。何度生まれ変わっても二度と外れん。これで、搾取される側の気分を味わってみるがいい。それこそ、“マシーン”の【称号】がつく程にな。』
「頑張ってコウスケ様のために働くのですよ。」
『それでは、まず、どのような方法で我等の居場所を突き止めたのか、教えてもらおうか………………。』
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