第17話 閑話 ~聖剣クロン~

我は、聖剣クロン。古より造られし聖剣の一つである。インテリジェンスウェポンとも呼ばれ、かつては勇者と共に魔王を討ち滅ぼしたこともある伝説の剣……。


ジュゼ王国の糞ども!なぜ、我を“神殺し”なんて呼んでおるのだ?おい!お……い…っ!…なんだ…この…魔…法…陣は…?


ジュゼ王国は他者から搾取するため、国を挙げて日々隷属技術の向上に勤しんでいた。“隷属の首輪”は、この国が開発した代表的な魔道具で、重要な戦略物資になりつつあった。


聖剣クロンは、隷属の魔法陣が何層にも敷かれた宝物庫の一室に封印され、力のみを搾取される日が続いた。


ある日、数十年ぶりに人間が近づいてきた。


「“神殺し”。あなたに、ユニークスキルを2つも持った特別な餌を与えるので、もっと強力な毒を「合成」して、この国を更に発展させなさい。」


『………。』


「ああ!そうですわ!古い文献に、直接血を吸わせると一滴で国をも滅ぼす素晴らしい毒が作れるとか……。くふふっ、そうと決まったら、早速、宝物庫から“神殺し”を持ち出す許可を貰わなくちゃ!」


人間は、足早に宝物庫から去って行った。


『ユニークスキル2つ所持者…異世界人か…。』


………数日後………


聖剣クロンは、封印を解かれ、豪華だけで何の効果も付与されていない箱に入れられて宝物庫から持ち出された。


(ここ何十年かの間に、我がインテリジェンスウェポンであることが失伝しておったのか?)


見張りの人間が交代する隙をうかがって封印されていたスキルを発動した。


……形状変化スキル発動~ナイフ型~……

……念動力スキル発動……


小さなナイフ型に変化し、念動力で箱を開けて脱出した。


(あやつが異世界人か。まだ、子どもではないか。可愛そうに、全身アザだらけで、手の爪が全て剥がされておる…。)


聖剣クロンは、異世界人の手の届く場所にそっと身を置いた。


「………んッ!?こんなところにナイフがある。盗むことになるけど仕方ない。いざというときのために使わせてもらいます。」


黒目黒髪の小僧は、聖剣クロンを懐にしまいこんだ。


……オヌシを見定めさせてもらうぞ……

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