その者

 友達みんなで探検ごっこをして遊んでいた時の事です。

 偶然、出会ったのです。【その者】と。

 初め、私たちはその風貌から【その者】を警戒して、近寄ろうとはしませんでした。遠巻きに見つめるだけ。

 恐る恐る声を掛けてみても【その者】はどこから来たのか、それどころか口を開けたり閉じたりするだけで何も言葉を発しませんでした。

 ……でも、よく聞こえないのかなと思い、近づいた瞬間でした。

 なんと【その者】は何もないところから火を出して見せたのです!

 でもそれだけじゃありません。【その者】は物を出したり消したりして見せたのです!

 そして、驚く私たちの前に今度は一瞬で花を咲かせて見せました!

 またも驚き、はしゃぐ私たちの方に【その者】はその花を放り投げました。

 みんながその花を欲しがり、押し合いへし合いになりましたが、手に入れたのは私でした!

 私が花を振り、喜んでいると、なんと【その者】はいつの間にかいなくなっていたのです。

 そう、自分を消してしまったのです! 私たちはこれに大興奮! こんなことができるなんて神様に違いありません!

 私はおうちに帰ると、母に今日見たことを伝えました。神様に出会ったと。


「ああ、この星の住人の生き残りね」


 母はまるでおうちに出る害虫を見たような顔でそう言い放ちました。

 そして操縦席に行き、おうちを飛ばしました。また薬を散布するようです。

 せっかくこの星の神様に出会ったと思ったのに、私は母の反応の薄さになんだか熱が冷め、花を床に放り投げました。硬い音がしました。

 私はポッドに入り、友人たちとゲームを始めます。

 今日こそ、ラゴッソポポテイウム人を殲滅するのです。

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