最後の時間
周りの景色がゆっくりだ。ああ、これが死ぬ前に見る走馬灯ってやつか。その割に昔の思い出は蘇ってこないが……。
自分で思い返すしかないか……。と言っても、もうあまり覚えていないがな。歳のせいだ。長く生き過ぎたかな、なんてな。
長い……か。
……しかし長いな。
おい、もう充分だぞ。
おーい。
迎えに来てくれ。
おーい。
天使か? 死神か? どっちでもいいぞ。
おーい。
遅いぞ!
……おーい。
怒鳴って悪かった。
もう少し待つぞ。
しかし、体が痛いんだがなぁ……。
それにしても誰も全然動かないな。完全に止まっているようにも……。
……おーい、いつまで待たせるんだ?
おーい……。
ちょっと誰か出てきてくれないかー?
おーい。
悪魔でもいいからー。
おーい。
おーい……。
おーい…………。
「ご臨終です」
取り囲む家族が泣き腫らす。夫婦の友人でもある医師がたった今、夫に先立たれた妻の肩にそっと手を置いた。
「ありがとうございます先生。本人も満足してたと思います。もう歩くこともできずに、痛みに耐えながらも最後まで……」
「……大丈夫、きっともう天国です。彼の体は時を刻むことを止め、魂は解放されたのです」
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