壁の花の繁栄

 誰かが壁に花の絵を描いた。

 それを見た他の人たちが後に続くように花の絵を描いた。

 壁は花でいっぱいになった。



 ある日、壁は砕け散った。


 空から落ちてきた爆弾によって。


 花の絵は煤けた町の各所に散った。

 長い長い曇り空。

 日が差さなくても花の絵は枯れることなく、ささやかながら大地を彩った。


 やがて、本物の花が咲くようになった頃。

 花の絵は拾われ、再利用された。

 壁に埋め込まれ、その壁に誰かがまた花の絵を描いた。


 町は花でいっぱいになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る