9-ⅩⅩⅧ ~文化祭に潜む怪人を探せ!!~
「……どういうつもりです?」
安里はじっと、息を切らす愛を見やる。彼女は、確か夜刀神刀を取りに、自分の教室に戻っていたはずだ。
「……文化祭の中止は、待ってください!」
「いや、あの。……状況分かってますよね?」
愛がこの状況を分かっていないはずがない。いくらなんでも、そこまで馬鹿だとは思えないが……。
ちらりと、エイミーを見やる。一方で彼女も、いまいちわかっていないようで、安里に向かって首を横に振っていた。
「愛さんだって見たでしょ? あの蓮さんがやられたんですよ?」
「……それは、わかってます」
「だったら……」
「でも、蓮さんは、死んではいないです。何だったら、傷一つついてないんですよ?」
「それは……」
確かにそうだけど。だが、あくまで蓮を基準とするのはいけない。エンヴィート・ファイバーは、紛れもなく溶岩となって人を殺している。
「……あの時も、蓮さんは手も足も出なかったですよね」
蓮と愛が、初めて出会った時の事件。悪魔ネクロイと蓮は対決したが、実体のない
ネクロイを蓮一人でどうにかすることはできなかった。
それはネクロイも同じで、蓮をどうあがこうと倒すことはできなったわけだが。結果、安里により肉体を用意し、そこから出られなくなったネクロイを蓮が叩きのめしたのだ。
この時点で、わかっている。
「……蓮さんだって、「最強」ではあるんでしょうけど「万能」じゃありません。相性の悪い敵だって、いるんです」
だから、諦めるにはまだ早い。
「……しかしですね、被害が出るかもですし……」
「大丈夫です。今のところ、そう言った被害はありません」
「……なんで、わかるの?」
「見てますから。今全部」
委員長の言葉に、愛はそう返す。そうしたところで安里は気づいた。
(愛さん、霊視しながら僕らと話している……!)
眼球を切り替え、霊視モードにすれば、彼女が何をしているのかがはっきりわかった。
愛は、学園全体に、自身の霊力を張り巡らせていた。今いる理事長室も、愛の霊気で充満している。
(……僕みたいなことを……!)
安里も似たようなことをよくやるので、彼女のやることは
よくわかった。ただ、自分の場合はあくまで「存在」を拡大しているだけだ。そこに、さほど体力の消費はない。
だが、愛の場合は文字通り「力」なので、消耗も激しいだろう。
「……理事長さん」
「何?」
「……どこまで時間をいただけますか?」
もうやってしまっている以上、こうなったら仕方ない。愛もこうなったらなかなかに頑固者だという事は、安里もとっくにわかっている。
「……事態が事態だ、とあなたは言っていたはずだよね」
「はい。正直、めちゃめちゃヤバいです」
安里の補足に、理事長はふむ、としばし考え込んだ。
そして。
「3分。――――――これ以上は待てない」
「ありがとうございます。感謝しますよ」
安里はにこりと笑うと、愛とエイミーを連れて、理事長室を後にする。
残された理事長と委員長は、ポカンとしたままその場に取り残された。
********
「見つける根拠、ありますぅ?」
移動しながら、安里は問いかける。だが、愛はじっと集中しており、返事はない。
「……どんなに見てくれが違おうが、生命であることに変わりなければ」
愛の代わりに、背中の夜刀神刀からから現れた夜道が答える。
「うわあ、や、や、や、や、ヤトガミ……! ホンモノ……!!」
エイミーがその瞬間バグる。何を隠そう、彼女は宇宙剣豪ヤトガミの大ファンであった。その本人の前なのだから、限界オタク状態になるのはある意味仕方ないと言える。そんなこと言っている場合じゃないのだが。
「生命なら、魂がある。その魂の波長さえつかめば、愛なら位置を探るのは造作もない」
「でも、その肝心の波長がわからないじゃないですか」
「それも何とかなる。そもそも魂の性質にだって、共通点はあるからな。例えば、そこの龍娘と、さっき部屋にいた女たちでは、えぐみが違う」
夜道曰く、あらゆる五感に例えた性質が、地域によってあるらしい。地域と言うのは、宇宙全体のスケールだが。
「地球、というのか。この星の魂は性質的に「なめらか」だが、よその連中だと色々と変わってくる。その、えんゔぃーと・ふぁいばーとやらがよそから来たものだというのなら……」
「……見つけた!」
敷地中の魂を総当たりで探り、愛はひときわ異質な魂を見つけた。その特徴は、明らかに他の魂にはない「重み」である。
愛が叫ぶと同時、安里はスマホを手に取る。連絡先はもちろん、別働で動いている萌音と九十九だ。
「……特進科2―Aのメイド喫茶です! 急いで!」
「ですって」
『了解』
『すぐに行くわね』
スマホを切ると、安里は溜め息をつく。
オカルトのパワーは凄まじい。こんなことなら、最初から彼女に頼めばよかった。
こんな簡単に見つけられるのなら、モガミガワが血涙を流し、発狂してまで作製したEサーチャーが、無用の長物だったではないか。
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