第73話 星暦553年 紫の月22日 船探し(3)
「海上から見ているだけでは深いところに沈んでいる船は見えないと思うんだよね。
だから、小型のボートを蒼流に頼んで海底近くで動かして貰いながら探すのが一番良いんじゃないかな?」
一応浅瀬はダルム商会が既に探したとの事だが、明日の朝に空滑機でもう一度上を飛んで浅瀬に引っ掛かっていないか確認する予定だ。
「シャルロの提案は良いが、どうやってまっすぐ予定通りのところを進んでいるか分かるようにする?」
前回は歩きだったから後ろに延ばした縄を時々確認することでどうにかまっすぐ進んだが、今回は船での移動だ。歩くよりずっと早く距離をカバーする必要があるし、カバーしなければならない範囲も圧倒的に広くなっていることを考えると、一々後ろの縄を確認し、それを巻き戻してまた縄を置き・・・・なんてことはやっていたら時間がかかってしょうが無いだろう。
「あの目付役の航海士の人に海上で俺たちが進むべき場所へ移動して貰って、そこから垂らした鎖でも目安に進むとかはどうだ?」
名目上は俺たちの手伝いと言うことで、昨日会った航海士が一ヶ月俺たちにつきっきりで付いてきてくれると昨日言われた。1ヶ月探して見つからなくても手数料は払うと雇い主は合意しているが、ちゃんときっちり努力していることを確認するためにお目付役として付いてくるんだろうな。
それこそ探し始めて3日目に見つけたのに知らぬふりして1ヶ月自分たち用に沈没船を探して毎日金貨1枚請求されたりしたらダルム商会もたまったものではないだろう。
「航海士って船がどこに居るのか知る技能があるんだろうけど、陸地もないところでそこまで正確に分かるんかね?」
宿屋に来る前に、
そんな中でどこに進んでいるか、分かるのか?
太陽や星の場所から計算出来ると言っていたが、そこまで正確なのだろうか。
まあ、俺たちが探す範囲だってそこまで正確じゃあなくても良いって言えば良いんだけどさ。
「まっすぐ進むことに関しては、コンパスで一定方向に進むことを確認すれば良いと思う。
だが、どこまで進めばいいかを確認する方法は必要だな」
アレクが海図を見ながらつぶやいた。
「こことここに、あらかじめ縄でも張っておいて、その間をコンパスで方角を確認しながら進むか?
どうせ海底を確認するために
かなり魔力の無駄遣いではあるが、まあ1日金貨一枚貰っているのだからその為に魔力を使っていると考えれば当然の労力とも考えられる。
どうせ海の中を船で進むのは蒼流か清早にやって貰うんだから、魔力的にも厳しくはないだろう。
「そうだね。
あ、だったら調査範囲に関しては縄を張るんじゃなくて、海底から2メタぐらいの高さの氷の壁を蒼流にばばっと作って貰っちゃおう。
これだけ大きな範囲を区切るのに縄を使おうと思ったら、そのための縄を持ってくるだけで疲れちゃうし、時間も凄く掛りそうだよ」
シャルロがお茶を淹れながら提案してきた。
本来ならば何百メタもの範囲に氷の壁を作る方が数十メタずつ縄を張るよりもずっと大がかりで疲れる作業だが、どうやら蒼流にとっては大した手間ではないらしい。
つくづく、常識の範囲を超えている。
これで、船とかも見つけられれば更に良いんだけどねぇ。
シャルロが関係しない人工物なんて、先月作った物も50年前に作った物も『最近の船』と見なしてしまう精霊の時の感覚というのは残念としか言いようがない。
ま、贅沢を言っちゃあいけないけどな!
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