第29話 星暦552年 青の月 27日 飛ぶ
「丘の上とかに持って行けばケレナ一人でも飛べるけど、とりあえずはここに来て?
そうしたら、僕が精霊に頼んで空に持ち上げてもらうから。僕も一緒に飛べるし、ちょうど良いでしょ?」
シャルロがケレナに
そう、ちゃんと一緒に飛べるんだよね。
『一人でなんて危険すぎる!』というシャルロの主張の下、俺たちも自分たち用の
と言うか、試作品ではなく新しいのをケレナに渡すことになるんだろうね。
今回のケレナの初フライトは当然、シャルロが同行。
・・・明日・明後日で俺とアレクの分も作ろっと。
学院長の分も作らないといけないし。
少なくとも学院長はちゃんと注文してくれたんだが、ケレナは払ってくれるんかな?
まあ、注文ベースで将来的にはそれなりに売れるんじゃないかと思っているから、別にコミッションを払ってくれなくてもいいけど。
あまり、頼まれたら無料で作ってあげる習慣を作るのはイマイチだと思うし・・・。
シャルロがまだまだ『甘やかしたい』フェーズにいるようなのでとりあえずは俺とアレクはあまり口を出さないことにしている。
ポヤポヤなシャルロじゃあ、ここで何か躓いたら次の恋がちゃんと認識されるかどうかすら怪しいからね。俺たちとしては細心の注意を払って邪魔にならないようにしているのさ。
◆◆◆
昨日早速試乗に来た学院長は、何点か安全面や機能面で改善点を指摘した後に、ビジネスとして良い提案をしてくれた。
レンタルビジネスを始めてはどうかと言うのだ。
適当な好奇心が豊富な魔術師と手を組んで、この
勿論、飛んだ客が買いたいと希望したら注文ベースで作る。
空を飛ぶ魔具というのは現時点では魅力的とは言っても未知な魔具なので、レンタルと言う比較的お手頃な値段で空を飛ぶ楽しみを味あわせて釣り上げるのだ。
元々魔具を買うだけの金が無い相手にはレンタルという形で提供し、金持ち相手には買ってもらえば良いという訳だ。
安全面の考慮や空へ上がる為に精霊に頼むのが一番経済的であることを考えると、魔術師の協力が必要だ。俺たちが魔術師を雇って完全に俺たちのビジネスとしてやっても良いのだが・・・話し合った結果、継続的なビジネスを運営するのは現時点ではまだやりたくないという結論で意見が一致した。
なので、レンタルビジネスのパートナーとして若い魔術師と手を組めばいいと言うことになった。
運営面の色々はそのパートナーに担って貰うと言う訳。
俺たちが魔具を、そしてそのパートナーの魔術師が労力を提供する。
客が多くなってきた場合の人員増加もそっちに任せてしまえば俺たちにとってはあまり面倒なことにはならないし。
中々悪くないアイディアだと、学院長が帰った後に俺たちは話し合って合意した。
なので学院長へはアイディア料も兼ねて、ちょっと値引きした値段で
あの人ったら、空を飛んだ後に値段を聞かずにオーダーしてんだもんね。俺たちが引き渡しの時に物凄く高い値段を言ったらどうするつもりだったんだろ?
まあ、特級魔術師様ならそれなりに資金力もあるだろうし、俺たちも学院長を敵に回すような値付けをする程馬鹿じゃあないけどさ。
「きゃ~~!!!!!」
安全ベルトを巻き、台へ固定して上空へ上がって行ったケレナから絶叫が聞こえた。
もしかして、本人に自覚なく、高所恐怖症だったりしたのか??
慌てて俺とアレクが上を見上げ、必要に応じて手を貸す為に魔力を高める。
「凄い!!!!空よ、空!!!!」
嬉しげなケレナの声が響いてきた。
あっそう。
女性とか子供の悲鳴って分からないよなぁ・・・。
嬉しい時も悲鳴をあげていたら、ヤバい時に助けが遅れても知らんぞ~?
◆◆◆
それなりにたっぷり魔力が込められていた魔石がすっからかんになる寸前まで空を飛んでいた(ありゃあ、シャルロが精霊の助けを得て上昇気流を作っていたな)ケレナは、俺たちに
どうやら、彼女がウチに遊びに来る回数はますます増えそうだ。
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