第68話 潜入!詩谷大学のこと(前編)

潜入!詩谷大学のこと(前編)








「よ~ほほい、よ~ほほい」




不可思議な歌を口ずさみながら、大木くんがハンドルを握っている。




俺たちは、詩谷大学へ向かっている。


中型トラックなので、車内も広々だ。




神崎さんは助手席に座り、俺は・・・運転手さんの休憩スペースに寝転がっている。


運転席の後方に広がる空間だ。


中々に快適である。


いいな、デカいトラックも。


今度キャンピングカーでも探そうかなあ。




「・・・運転しなくてよかったのか?」




「僕の我儘に付き合ってもらうんですから、気にしないでくださいよ・・・なんか音楽でもかけますか?」




「うんにゃ、外の音が聞こえる方がいい・・・ですよね神崎さん」




「ええ、重要なことです。いつ襲撃されるかもわかりませんから」




神崎さんは、いつものように拳銃を確かめつつ答えた。




襲撃・・・襲撃ねえ。


龍宮ならいざ知らず、詩谷に走行中のトラックを狙うほどガッツのある奴はいるのだろうかな。


まあ、用心に越したことはないか。




「安全運転で行きますよ~・・・おっと」




何か重いものと接触したような音がして、軽くトラックが揺れる。




「・・・安全運転で行きますよ~」




「オイちょっと待て、今のは何だよ」




こっからじゃよく見えない。




「ゾンビです、問題ありませんね」




なんだゾンビか・・・ならいいや。






しばらく運転していると、大木くんが思い出したように言ってきた。




「なんか詩谷、最近生存者がチラホラ増えてるんですよね」




「増えてるっていうか、慣れてきて外に出るようになってるんじゃないか?ノーマルゾンビは一般人でも完封できるし」




「動く死体を特に気にせず完封できるのは一般人じゃないと思います、僕」




そうかなあ?


動きも遅いし、頭もよくないし。


力のない人でも、なんか重たいもので頭をぶん殴れば十分やれると思うんだが・・・




「僕が言ってるのは精神性の話なんですが・・・まあいいや、今更だし」




「ええ、田中野さんはすごいですから」




「ハハハ、ソウデスネ」




・・・なんかあまり褒められてる気がしないな?




「まあ、でもこれからは食料の奪い合いとかも増えてくるかもな・・・」




避難所みたいに畑を作れる人ばっかじゃないし。


俺も食料調達手段を色々考えないと・・・うん、釣りだな。




「奪い合いっていうか・・・襲撃とか増えそうですよねえ。現に僕の家に来る人達、だんだん増えてますし・・・」




「こりゃ、古本屋が吹き飛ぶ日も近そうだな・・・」




「うへえ・・・そうなったら原野に逃げてもいいですか?高柳運送の近所の適当な家を借りますから」




「それはいいですが、高柳運送で暮らさないのですか?」




神崎さんが不思議そうに聞く。




「いやあ・・・なんていうか・・・田中野さんたちは嫌いじゃないんですけど、やっぱ一人が落ち着くんで」




「うん、気持ちはわかる」




「田中野さん!?」




特に現状に不満はないし楽しいが、たまーに1人になりたくなる瞬間もあるんだよな。


まあそんなときは屋上でサクラと寝てるけど。


・・・今度屋上用にテントでも探してこようかな。


なかなかいいアイデアかもしれんな。




「静かな空間で、ボケーっとしてるのが好きなんですよ。アニメとか見ながら」




「むっちゃわかる」




「田中野さん!?!?」




なんかさっきから神崎さんがちょっと面白い。




「あ、あああの、現状に何かご、ご不満が・・・?」




「あるわけないでしょ。毎日楽しいですよ、頼れる相棒もいるし」




「うぇ!?あう・・・」




それはそれ、これはこれなのだ。


うん。


おせちもいいけどカレーもね。




「・・・田中野さーん、そこのコーヒー取ってください、ブラックのやつ」




大木くんは何か悟りでも開いたような顔をしている。


慣れない運転で疲れているのだろうか。




「んぐんぐ・・・ぶはあぁ!飛ばしますよォ!!」




「えっなんでいきなrうおおおお!?」




いきなりどうした!?


加速に従って仮眠用っぽい毛布に押し付けられた俺は、そのまま身を任せることにした。


でっかい車もなかなかカッコいいな・・・








「到着!・・・麓ですけどね」




大木くんのハイスピード運転によってかなり早く大学に着いた・・・らしい。


毛布にくるまってスヤスヤしていたから何分かかったかわからんし。




ちなみに詩谷大学は、小高い丘・・・というか山の上にある。


なんでも建てる時に山を切り開いたらしい。


なので、周囲にはなにもない。


敷地内にはコンビニがあるくらいだ。


正直、俺にとっては全く魅力はない。


こんなことでもないと来ることはなかったな。




「門は・・・開いてるの?」




「ええ、前来た時は全開でしたよ。もし中に入って閉められても、コイツなら門ごとぶち破れますよ」




ふむ、まあそうだろうな。


中にいる生存者っぽい連中がどう動くか気になる所だ。


不確定要素は怖いなあ。




「ま、臨機応変に対応していくしかないな。常に最悪の状況を想定して動こう・・・武器はガトリングガン、近接要員はメジャー流派免許皆伝レベルくらいで」




「前者はあるわけないでしょ・・・後者は・・・うん、出たら田中野さんに丸投げしますんで!そんなのいたら僕即死しちゃいますし」




うむ、任されよう。


適材適所だ。


大木くんは偵察と・・・爆破要員だな。




「ちなみに大木くん、爆弾って・・・」




「携帯できるやつを・・・ええと、20個ですね。威力は以前見たことあると思います、パイプのやつですよ」




おお、あれか・・・うん、威力は十分すぎるな。


ある意味銃より強力だ。




「銃撃への対処は私にお任せください」




神崎さんも頼もしすぎる。


即席だがいいチームになりそうだ。




「今回はかなりグレーゾーンなもんで、残念ながら動画は・・・ううう・・・」




今更じゃないか大木くんよ。


あ、爆弾を使うかもしれんからNGってことね。


ある意味俺よりだいぶ先を考えているよなあ、大木くんは。


俺なんか平和になった後のビジョンなんて皆無だというのに。




「じゃ、行きましょっか」




気を取り直したように、大木くんはアクセルを踏み込んだ。






ぐねぐねと迂回しながら走ることしばし。


お目当ての正門が見えてきた。


・・・なるほど、全開だな。




開いたままの門の向こうには、けっこうな数のゾンビが見える。




「おっかしいなあ、前見た時にはいなかったんですけど・・・」




そう大木くんは言うが、それから雨が降ったりしたんだろう。


勝手に移動したか・・・それとも『餌』を追いかけたか。




「ま、とりあえず行こうぜ。邪魔なら轢いちゃえ轢いちゃえ」




「ういうーい、4tの破壊力を見よ!」




油断する気はないが、詩谷ゾンビはクソ雑魚だしな、俺にとっては。


パッと見るが・・・やはり当然というか黒ゾンビの姿はない。


あいつら異様に耳がいいからな、この距離ならトラックのエンジン音なんてすぐに聞きつけて突撃してくるだろうし。




唸りを上げるエンジン。




正門を通過すると、音を感知したであろうゾンビが喚きながら寄って来る。


本当なら降りて行動もアリなんだが・・・目的の機材が重いしな。


できるなら実験棟までこのまま行きたい。




「田中野さん、学生ホールに動きがあります・・・2階と3階です」




神崎さんの声に身を乗り出し、横で確認する。


狭くてすいませんねえ・・・むむむ。




確かに人影が動いているな。


カーテン越しでハッキリは見えんがあの動きは・・・人間っぽい。




「うっしゃらー!」




どん、と軽めの衝撃。


トラックがゾンビを撥ねたようだ。


あまりスピードが出ていなかったせいか、まだ動いている。




「上へまいりまーす!」




下の方からべきべきとあまりよろしくない音が聞こえてくる。


これならトドメを刺すまでもないなあ。




学生ホールを気にしている間も、トラックは質量兵器と化して進み続ける。


そこまで数は多くないので、このまま行けそうだな。


あまりに数が多いと窓からぶっ叩いたりする必要があると思っていたが・・・大丈夫そうだ。




「・・・学生ホール、見てはいますがそれだけですね。狙撃をするような動きはありません」




助手席で銃床を折りたたんだライフルを持ち、神崎さんが呟く。


そっか、コンパクトだからここからでも撃とうと思えば撃てるのか。




何体かのゾンビを撥ね飛ばし、無力化しつつトラックは進み・・・お目当ての実験棟の前までやってきた。




「ふいー・・・質量兵器はやっぱり最強ですね」




大木くんは、そのまま入り口に助手席側をぴたりと付けて停車した。


さて、こっからは俺たち荒事屋の時間だな。




「実験棟の中にゾンビはいませんね、見える範囲ですが」




「追いかけて来てるのがチラホラいますから・・・先にそっちを掃除しますか」




言いつつ、神崎さんがドアを開けると同時に後方へ向かって拳銃を発砲。


ライフルは、紐的なもので背中にマウントされている。


拳銃にはいつものサイレンサーが装着されているので音も静かだ。




「行きます」




しなやかなネコ科の動物のように、音を立てずに神崎さんが降りる。


降りながらも何度か発砲。


遠くで何かが倒れるような音がする。


サバゲー用のマスクと相まって、本物の特殊部隊みたいだあ・・・いや待てよ、本物だったわ。




「安全になったら言うからな」




「了解です!」




俺もそう言って、兜割を抜きつつ外へ。


神崎さんの死角方向へ降りると同時に、トラックの影からゾンビが出て来る。




「っし!」




「オガゴg!?」




叫ばれてはうるさいので、喉に突きを入れる。


っと・・・おお!?




兜割の先端が、半ば喉を貫通した。




いかん、龍宮ゾンビに馴れてたから力加減がガバガバだな。


こっちのゾンビは防御力まで若干低いのか。


ニンジャ仮面の視界も良好だし、これならいけそうだな。




ゾンビの胸板を蹴りつけ、無理やり引っこ抜く。


さて、おかわりは・・・来た来た。




「アガアアアアアアアッ!?」




新手に、今度は大上段からの振り下ろしをお見舞いする。


唸りを上げた兜割は、ゾンビの額を大きく陥没させて目玉を飛び出させた。


・・・うし、力加減はこんなもんか。




「クリア」




「っと、こっちも・・・です!」




ゆらりと出てきたゾンビのこめかみを殴りつけ、成仏させる。


・・・よし、こっちもこれで終わりだな。




「大木くん、オッケー・・・うお」




「ん?どうしました?」




バッタの改造人間が、体中に爆弾巻き付けて出てきたらそりゃ驚くよ・・・


今の間に準備していたのか。


殺意が高そうな正義の味方だなあ。




「じゃ、行きましょうか。目的地は4階・・・最上階ですねえ、階段嫌だなあ」




ぼやく大木くんを後ろに庇いつつ、俺と神崎さんはドアの前に立つ。


・・・これは・・・?


一瞬の目配せ。


神崎さんが頷く。




姿勢を低くして入り口の扉を一気に開くと、神崎さんが発砲。




ドアのすぐ後ろにいた3体のゾンビが、呻き声すら上げられずに無力化された。


相変わらずの正確な射撃だなあ。


全員ヘッドショットだ。




「階段はこのまま真っ直ぐです。途中で左右に道があるんで、気を付けてくださいね」




「詳しいねえ、流石卒業生」




「厳密に言えば卒業見込み生です。卒業式やってないし」




軽口を叩きつつも、左右の気配を探る。


・・・うん、周囲に気配はない。




ポケットに入れていた石ころを取り出し、廊下の先へ放る。


静まり返った館内に、反響音が響いた。


しばらくそのままでいると、耳に音が届いてきた。




「・・・聞こえた。上・・・か?」




「ええ、反応がありましたね。この階の音ではありません」




神崎さんのお墨付きも頂いたので、移動を再開。


いつでも振れるように、脇構えの体勢で歩く。




「後ろから見てると、マジで特撮の一場面ですねえ・・・ああ、カメラがあればなあ」




「出演するつもりはないからそれは却下だぞ」




「ぎゃふん」




・・・ぎゃふんって言うやつ俺以外に始めて見たな。




昼とはいえ、電気が消えていて薄暗い廊下を、なるべく音を立てないように歩いていく。


先程大木くんが言っていた左右への分岐に到達したので、神崎さんとアイコンタクトをして分散。


俺が右、神崎さんが左へ一斉に飛び出す。




・・・片手に持ったライトが空間を照らすが、何の痕跡もない。


床に積もった埃が、ここに長い間人が来ていないのを教えてくれる。




「異常なし」




「こちらも」




神崎さんの方も同じようだ。


では進もう。




「上にゾンビはいるみたいだけど、元々そんなに人が来るところじゃなかったのかもなあ」




「ええ、そのようです」




「まあ、この棟には食品関係はほぼありませんからね。あっても・・・確か自販機くらいですかねえ、パンの」




うーむ、なんやかんやでこの騒動が始まってから時間も大分経っている。


もう腐っているだろうな。


いるっぽい生存者も、わざわざここまで来るほどのうまみもないか。




「電気が駄目なんでPCも使えませんし、何よりネットにも繋がらないんで・・・薬品関係も、精通していない人たちには何の魅力もないでしょ」




「確かに、俺なんかガチガチの文系だからな。薬品関係はもう全然わからん」




ゾンビに硫酸ぶっかけたら死ぬのかな・・・?くらいの疑問しかない。




「ゾンビに硫酸って・・・」




「あ、無理です試しました。硫酸撒き散らしながら突撃されたんですよ・・・電撃以外は望み薄ですね」




・・・試していたとは恐れ入ったぜ。




「うまいこと口の中に劇物ぶち込んだりもしたんですけど・・・そっちも駄目でしたね、致死量の20倍の量でもピンピンしてたんで」




「ってことはやっぱり、現状有力なのは電気と・・・暴力か」




「身も蓋もねえ・・・」




やはり物理は偉大だな。


ゾンビを硬いものでぶん殴ると死ぬ・・・これってトリビアになりませんか?




そんなアホな会話をしながら、階段へ到達。




「さて・・・荷物を持って帰る関係上、一階一階クリアリングしていくしかねえな・・・」




「運搬中に襲われたら大変ですからね、しっかり処理しておきましょう」




神崎さんとそう話しながら、階段に足をかけたその時。




「ウウアガ・・・ガアアアアア!!!!」




「っしぃいあ!!!」




直上からの気配と声に体が動き、兜割を跳ね上げる。




「ゴッボg!?」




上も見ずに振り上げた兜割は、落下してきたゾンビの右目に突き刺さった。


重力とゾンビ自身の体重によって、その切っ先は脳に到達。


ゾンビはびしゃりと音を立て、俺の足元へ落下した。




「・・・ふぃ~、不意打ちはナシで頼むよ、本当に」




うまい事衝撃を殺せたので、手首や肩にダメージはない。


こんな所で躓くわけにゃいかんからな。




「お、お見事です!田中野さん」




「すっげ・・・よく当たりましたね」




「よせやい、こんなもんまぐれだよ、まぐ・・・2人とも一時撤退!!」




称賛に照れくささを感じたのと同時に、耳に音。


上の階から、数人分の足音と吠える声が聞こえる。


階段は音が響くからなあ・・・




俺の言葉に即座に反応した2人と共に、階段から離れる。




「ウグウウウウウウウギャガガガガガ!!」




本能のままに疾走するゾンビが、階段の手すりと一緒に落下。


そのまま脳天から地面へと落下し、疑似自殺を遂げる。


いくらゾンビでも、頭が背中側に回っては生きていられまい。


が、そのゾンビの上に新手が落ちてくる。


先に落ちた奴の体がクッションめいで作用し、今度は無事だ。




「任せてください!」




神崎さんが発砲。


即座に無力化する。




「ひええ、まだ来ますよおっ!!」




大木くんの言う通り、まるで滝から落ちるようにばらばらとゾンビが降ってくる。


落ちたゾンビの体がクッションになり、五体満足ゾンビばかりだ。


・・・こんなに上にいたのかよ!




「2階から上では実験パーティでもやってたのかぁ!?」




「何ですかその気色悪いパーティ!?」




「余裕ですね・・・お2人とも・・・」




神崎さんが半ば呆れながら拳銃を発砲。


いつもながら凄腕だが、一気にゾンビが来たので細かい狙いがブレて何体かは急所を外す。




「リロード!」




「了解!」




その連射が途切れると同時に踏み込む。




「りぃ・・・やぁっ!!」




一番手前のゾンビの脳天を砕き、胸板を蹴り飛ばして後方のゾンビを巻き込む。




「ガアアアアアアア!ガアアアアアアアアアアアアアア!!!」




「うるっせえええ!!!!」




その脇をすり抜けるようにして出てきた新手。


下段からの突きを喉にぶち込み、吹き飛ばす。




「田中野さん!」




「はい・・・よっとぉ!!」




神崎さんの声と同時に、地面に伏せつつ手近なゾンビの足を払う。




後方から発砲。




ゾンビがバタバタと倒れていく。


俺も足を払ったゾンビの脳天を伏せたまま砕いておく。




「このまま掃討します!」




拳銃の発砲が終わり、今度はライフル。


リズミカルに銃声が響き、拳銃の時よりもゾンビが景気よく吹き飛んでいく。


やることないから見てるけど・・・やっぱりライフルは破壊力が高いなあ・・・今度は撃たれないように気を付けよ。




最後のゾンビが額をぶち抜かれて仰向けに倒れると、館内に静寂が満ちた。


示し合わせたように皆黙り、耳を澄ます。




気配も・・・音もないな、多分。


ゾンビは息を潜めて待ち構える・・・とか、そういうテクニカルな戦法が取れないしな。


頭ゾンビでよかった・・・




「いませんね、神崎さん」




「ええ、少なくともこの周辺には」




立ち上がって兜割を構える。


さーて、生き残りは・・・いないな。


至近距離でライフルを頭に喰らうとこうなるんだあ・・・




「うぐぐぐ・・・カメラ・・・カメラがあれば・・・」




大木くんは身悶えしている。


だから出演しないってば。




ゾンビの海を踏み越え、階段へ。




階段周辺にたまっていたのか、今はもう気配はない。


あれだけ盛大に大騒ぎしたんだからな・・・後続がいるならどんどん来ているはずだ。


これで一応、安心はできるな。




「念のため、面倒くさいけどクリアリングはしときましょうか」




「そうですね、不測の事態を避けるためにも」




神崎さんを目を見合わせ、俺が先頭になって階段を上る。




「うひ~・・・なんまいだなんまいだ・・・あ、児島くんじゃん」




どうやら先程のゾンビの中に、大木くんの知り合いがいたみたいだ。




「なむなむ~・・・貸しといた30000円は香典にしといてやろう・・・」




ドライだなあ。


そんなに仲がいいわけでもなかったのかな。




「知り合いかい?」




「ええ、同級生です。いやあ、彼も運がなかったですねえ」




あっけらかんとしている大木くん。




「競馬で当てて十倍にするからって言ってました。この様子だと・・・どぶに捨てたようなもんですね、がはは」




「そ、そうか・・・」




苦笑いしている雰囲気の神崎さんと視線を交わし、俺たちは2階へと足を進めた。

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