8月 猫吸い失敗 

 現世が暑ければ、もちろん【道】も暑い。暑すぎて猫が日陰に落ちているのも現世と同じだ。こんな時は【補助艦艇】の執務室で涼むのが一番なのだが、俺のような戦闘力のある【艦霊】は用事のない時は原則として立ち入り厳禁だ。戦闘力のない【艦霊】は砲が近くにあると落ち着かないのだそうだ。

「ねこー、ねこちゃーん」

致し方ないので、畳の上に落ちている猫を吸おうと【こんごう】の屋敷に上がり込む。洋風な来客向けのゾーンを抜けて、純和風な襖をあければ当たり前のように落ちている猫と【くまの】。猫はともかくとして、タンクトップと短パンで大の字になっている【くまの】はでかいせいで視覚的に大変暑苦しい。そして、俺が来ていることには気が付いているのに、気にせず転がっているのだから大変ふてぶてしい。

「【くまの】、今日は非番?」

「非番でーす。 【あきづき】は?」

「今、警戒終わって吸いにきたところ……あっ!?」

【くまの】がゴロゴロと俺の声に答えている最中に気が付いてしまった。

「あのさ、お前、腋毛は?」

「剃ってるよ?」

当たり前だというように若い【艦霊】は首を傾げる。これがジェネレーションギャップというものだろうか。衝撃ついでにもう一つ聞いてみる。

「ちなみに脛毛は?」

「今、脱毛中!」

「だ、脱毛かー」

これが令和という時代なのだろう。【艦霊】の男と猫は似ても似つかいがどちらにも毛は生えているものだと思っていた。

「とりあえず、【こんごう】に報告するな」

「え? 何を?」


 とりあえず驚いたので、上に報告。報連相は大事なので。

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深海散歩2021~ 加茂 @0610mp

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