第21話 里山だより
「下にある別荘のどこにいるんだい?」
「一番下の別荘です」
「一番下の別荘……ああ、真一さんのお孫さんかい?」みつ子さんはあらためて綾乃さんを見た。
「はいそうです」
「そうだよ、真一さんの孫娘はうちの孫と同い年で綾乃っていうんだと聞いてたよ。お孫さんが来てくれたんなら亡くなった真一さんもきっとよろこんでるだろうよ」そう言って微笑んだ。
「お祖父ちゃんはどんな暮らしをしていたんですか?」
「私はあまりくわしくないけど、この近くで畑をやったり、頼まれたら大工仕事をやったりしていたみたいだけど……優しくていい人だったよ」
「そうですか」
「この上の笹原さんのおじいちゃんが仲が良かったからたずねてみるといいよ」そう教えてくれた。
「ありがとうございます」お礼を言って二人は別荘へもどってきた。
「よかったね、お祖父ちゃんのことが少し分かって」微笑む。
「はいよかったです」綾乃さんはクスクス笑っている。
「どうしたの綾乃さん」
「お似合いのカップルですって、新さん」僕の背中を突っついてきた。
「えっ、そっち?お祖父ちゃんの話じゃなくて?」
「もちろんお祖父ちゃんのこともですけど、お似合いのカップルもうれしいでしょう」
僕は冷や汗をかきながらズズッと後ずさりした。
午後の仕事を終えると綾乃さんは夕食の支度にとりかかっている。
たくさんもらった野菜で和食を作ってくれた。
「綾乃さんなんでも作れるんだね……」と感心しながら食べはじめる。
「野菜がとってもおいしいなあ」思わず漏らす。
「そうでしょう、みつ子さんすごいわ」
「本当に自然の味がするね」感心しながら食べている。
「いいですね、毎日こんな野菜が食べられたら」綾乃さんも笑顔を見せた。
みつ子さんの誤解は少し気になったが、悪い気はしていない。そんな自分を少しだけ不思議に思った。僕は胃袋以外にも何かつかまれているような気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます