第14話 悲惨な戦い

目の前には扉があった。ここがダンジョンの最奥だろう。この前に立てば誰にでもわかると思う。この扉から漏れる異様な雰囲気。何が待ち受けているか具体的にはわからないが非常に強い敵が待ち受けているのは感覚で分かってしまった。



「ディタ、準備はいいか?ってお前大丈夫か?」



ディタは震えていた。ダンジョン3つ攻略したっていたのは嘘だったのだろうか。



「大丈夫、って言いたいけど、正直怖いわ。・・・正直に言うと私みんなの後ろに隠れていたの。怖くて前に出れなくて・・・」



それを先に言いなさい。と思いつつもなぜあの場に置き去りにされたのかわかった。まあ、だからと言って置き去りにしていい理由にはならない。



「ここで待ってるか?」


「いえ、私も行くわ。私だってできるんだから。絶対に見返してやる‼」



震えが少し治まっている。決意に満ちた眼。その決意に俺の手は動く。扉に手をかけた。



「じゃあ行くか。」





そこには、鹿がいた。普通の鹿ではない。普通の鹿より倍以上体格があり、角が異様にオレンジ色に光っている。そして尻尾は炎で包まれていた。いや、炎そのものだった。



「ははっ。お邪魔しました~。」



俺は扉があった方向に向かう。しかし、扉が消えていた。



「無駄よ。入ったらもう出られないわ。成功するか失敗するかまで。」



ディタが怖いことをいう。成功はわかるが失敗とはどこまで入るのだろうか。

しかし、今それを考えても始まらない。



「はあ、これも授業で習ったわよ。だらしないわね。」「だらしなーい。」



ディタはもう吹っ切れているようだ。頼もしくて仕方ない。それにディタに便乗しているやつがいるが今は相手をしている暇はない。後で覚えてろよ。



「じょ、冗談に決まってるだろう。」



「はあ、大丈夫よ。私あいつのこと知っているから。あいつはジャラー・フォーン。弱点はあの角よ。」



「そうか。じゃあファイア。」



指を滑らせ、角に向けて魔法を放つ。やつの角の部分に煙が立ち込めている。やったか?と思ったら違うらしい。角の光がより一層輝いている。



「あんた、バカ⁉炎の魔物に炎の魔法ぶつけてどうすんのよ。力が増すに決まっているでしょう。それに・・・ああ、もう今行っても仕方ないわ。水の魔法を使うのよ。」



ディタはレイピアをやつに向け魔法を放つ。



「アルウィプ・ニードル」



やつの真上に雲が広がり針の様に尖った水滴がやつを襲う。ただ、俺の攻撃より効いていないと思うのだが。



「全然効いていないように見えるんだが、気のせいか?」



「ふふふっ。気のせいじゃないわ。だってこの魔法、相手を遅くさせる魔法だから。」



ディタが駆けだしていた。えっと思った瞬間、やつが突進してくる。あの角を向けて。



確かに遅くなってはいるがそれでもスピードはある。そんなことを考えているともう寸前までやつが迫ってきていた。俺は慌ててディタの後を追う。



「二人で同じ方向にきたら意味ないじゃない‼」



「そんなこと言われたって俺も必死なんだよ。」



「二手に分かれましょう。そうしないと勝てないわよ。」



もうどうにでもなれと思い、ディタとは別方向に駆け出す。そのあとの戦いは悲惨だった。一人が惹きつけて一人が攻撃をする、それの繰り返しだった。いわゆるヒット&アウェイだ。やつも攻撃してくるので、こっちが攻撃する頻度も少なくなる。これは戦いなのかと思えるほどの醜い戦い方だった。もう絶対にこんな戦いはしたくないと思った。



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