第13話 共闘者
俺たちは魔物から逃げることができ、今開けた場所にいる。うろつく魔物もいない、いわゆるセーフティエリアってとこだ。
「こんなところがあるなら早く言ってくれよ。そうすれば、こんなに疲れなかったのに。」
「ご、ごめんなさい。あの時はその・・・あーもう、それにこれは授業でも習ったでしょ。覚えていないあなたが悪いのよ。」
謝ったり、怒ったり忙しいやつだ。ディタはいつもの調子を取り戻していた。
「一応自己紹介するわね。私はディタ・グラセ。で、こっちがパートナーのエミンよ。」
これはまた意外な。エミンはゾウであった。あのゾウをそのまま小さくしたような見た目をしている。俺はなぜ今まで気づかなかったのだろう。
「ウチ、エミンいいますの。よろしゅうおたの申します。それよりさっきはディタを助けてくれておおきに。助かりましたわ。」
なんか近所のおばさんにこんな感じの人いたような気がする。そのくらい親近感があるやつだった。
「ただの気まぐれだよ。それに俺は何もしてない。」
「ぷっ。戦わないで逃げ出してたもんね。」
ボカ
何か悲鳴がするが気にしない。
「俺、エミンの方がよかったかも。」
レクスが寂しそうな顔をしている。
「そ、そんなこと言わないでよ。ほら、ボクの方が可愛いよ。」
そういって、レクスが可愛いと思っているポーズをやり始めた。そこにエミンが割って入ってくる。
「あら、聞き捨てなりませんな。ウチも可愛さなら負けへんよ。」
なんだか謎の可愛さアピール合戦が始まった。ああ、もうどっちも可愛いな、畜生。いけない、いけない。それよりもディタに聞かなければいけないことがあった。
「ディタ、このあとどうするんだ?」
ディタもあいつらに夢中になっていたのか返事が遅れていた。
「ん?なに?どうかした?」
「はあ、だからこのあとどうするんだ⁉」
「ああ、えっとその良かったらなんだけど、一緒に着いて行ってもいいかしら。」
正直一人の方が気楽だった。でも、このダンジョンを見る限り一人で攻略するのは無理ではないにしろ厳しいものを感じている。それに、ディタを一人置いておくこともあまり最善の策ではないし、あいつらとすれ違いでもすればディタは一瞬のうちに潰れてしまうだろうとそう思ってしまった。そうなってくると答えは一つしかなかった。
「・・・いいよ。」
ディタの顔は満面の表情に包まれた。まだ最後まで言っていないのに。ただ、一瞬の気の迷いかもしれない。だから俺はこう言い放つ。言い放った瞬間、ディタは複雑そうな顔をしていた。
「ただし、とりあえず一時的な共闘だ。このダンジョンを攻略したらどうするか真剣に考えろよ。」
「一瞬このダンジョンまで、って言われると思ったわ。・・・わかったわ。宜しくね、ロガ。」
よし、話は終わった。あの2匹に視線を移すとまだアピール合戦が続いている。
「うう、やるね。エミン。これならどうだ!・・・ってエミンがいない。」
俺はエミンを引っ張り駆け出す。
「ふふふっ。レクスはん、どうやらウチの勝ちのようどすわ。」
「な、なんで?ちょ、ちょっと待ってよー。」
「ちょっと待ちなさいよ。エミンは私のパートナーよ。返しなさい。」
こうして、不本意だが、一時的とはいえ仲間ができた。さてこれからどうなるのやら。
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