第6話 怪しい男


 空が赤く色づいた頃、ようやく町に着くことができた。



「はあ、はあ。やっと着いたぁ。」



「お疲れ様。ロガ。」



 こんなに遅くなったのはこいつのせいだというのに、

 呑気にジャーキーを頬張っている。



 ボカ ボト



「あー。ボクのジャーキーが。何するんだよ。」



「レクスお前のせいで、こんなに疲れてんだよ。呑気にジャーキー食いやがって。お前が蜂の巣に不用意に近づくからこんな目にあったんだ。」



 そうレクスは蜂の巣に近づきあろうことかその巣を突いたのだ。

 呑気に”なにこれ?”とかいいながら。案の定蜂たちは怒って追いかけてきた。

 理解できなかったが、レクスではなく俺の方に全部襲い掛かってきたことだ。

 なぜだ?なぜなんだ?一瞬考えてしまい固まってしまった。


 だが、近づいてくる羽音に危険を感じ、全速力で駆けた。

 日が暮れ出した頃、俺はひらめいた。”燃やせばいいじゃん”、と。

 そして魔法で蜂たちを燃やし、事なきを得た。


 えっ⁉気付くのが遅いって⁉うるせー。

 こっちは必死だったんだよ。それゆえの疲労困憊状態である。



「てへへっ。」



 レクスは悪びれることなく、可愛いこぶっている。

 追撃しようと思ったがそんな体力はなかった。

 それより早く宿屋を探さなくては。





 町の入り口にでかでかと



 ”温泉の町、アエトスへようこそ‼”


 と看板が立っていた。



 どうやら宿屋を探すのに時間はかからなそうだ。


 宿屋は温泉の町というだけあって宿屋は沢山あった。

 ただ、他の問題が発生していた。



「た、足りない・・・だと⁉」



 そう、お金が足りないのだ。所持金と宿屋代の金額が一桁違う。

 これは宿屋に泊まるのは諦めて野宿にするか。

 まあ、いつもならそっちでもいいんだけど、

 今日はさすがにベッドの上で休みたかった。

 仕方ないか。そんなことを考えていると誰かに声を掛けられた。




「おーい。そこの君。宿屋探しているのかい。よかったら家においでよ。」



 声の方に振り返ると、胡散臭そうな男がいた。

 ヒョロヒョロしていて少し突いたら倒れそうな体をしていた。

 よく見ると男の体にヤモリみたいなものが這っていた。

 うん。これは関わらないに限るな。



「あっ。ちょっ、ちょっと待って。タダ、タダでいいから、ね。」



 勝手に耳がピクピク動き、足が勝手に泊まっていた。



「はあ、よかった。泊まってくれた。僕はヒル・インパールっていうんだ。

 ほらあそこの宿屋をやっているんだ。どうだい、泊まっていくかい?」



 ヒルが指さした先に、いい意味で素朴な建物があった。

一瞬断ろうかとも思ったが、雨風をしのげるだけいいかと思い泊まることにした。



「・・・お願いします。」



「はいよ。一名様ご案内~‼」



 ヒルは嬉しそうな声でそう言った。それに大の大人がスキップしている。



「ねえ、ロガ。大丈夫かな?ボク怪しいと思うんだけど。」



「うーん。大丈夫じゃないか?それに襲われても何とかなりそうだし。」




 そういうとレクスは口を大きく開けたまま動かなくなった。

 そうこうしているうちに宿屋に着く。



「ねえ、お兄さん。本当にお金払わなくていいんだよね?」



「ん?ああ。あっ、でもその代わり・・・」



「ほらロガ、言ったじゃないか。逃げようよ~。」


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