日本を飛び出して世界の色々な国でワイン造りに携わった筆者の体験記ですが、まるで青春小説を読むような清々しい読後感が残りました。ひとつひとつのエピソードには沢山の苦労が詰まっていますが、それをユーモアで包み、読者を飽きさせません。国によって異なる風土や文化、人々の様子も垣間見られて、一緒にワイン造りを体験させてもらうような心地です。そこにはワインに対する愛情と造詣の深さが溢れ出ています。
冒頭で紹介されるワインの説明、料理の組み合わせも面白く、ワインに対する固定観念を取り払ってくれることでしょう。
どんな環境に置かれても順応し、逞しく乗り越えるバイタリティに感服します。ワインにかかわらず、物事への視野を広げてくれる素晴らしいエッセイです。
ここをおとづれると、至高のワインリストと、異国への旅路が開きます。
「つまり、ワインを造るということは、その土地に根ざしていくということ」
-----------------------------©出っぱなしさま「神の血に溺れる」より抜粋
作者さまはワインを探求する広く長い旅をされています。
日本とちがうお国柄で感覚の違いもあり、危険なこともある
だけれど、美酒を生み出す葡萄を育む土地の個性は前向きで
希少種の葡萄を手に入れるために、崖を渡る冒険は明るい。
コロナの脅威が襲う中、ワイナリーオーナーがワイン作りのみなさんをまもって
とりどりのコンテナを家としつらえ、楽しい町を創る回など、世界の視野の大きさの圧巻を知れて
作者様ご自身が見て触れて聞いて感じてこられた、異国の地の人の魅力にも酔わせてもらえます。
銘品の葡萄の産地で饗されるワインと、食とのコラボレーションはスマートなご文体に具現化され
うっとりとしてしまう神の血の色彩は気泡までも鮮やかで、ワインパートナーの食の美味しそうさにはお腹をクウクウ泣かされる罪深さも。
人と美味と共に、美酒が生まれる奥深い物語を。
さまざまな味わいの神の血に、それらを生み出すストーリーに、広々とした異国の風に
ここちよく酔ってみませんか?