第146話 文化祭の真相
「えっ? それじゃあ、西城高校の文化祭で一緒に売り子をする事になったのって……西川さんが言い出したんじゃなくて……遥香ちゃんが言い出したって事なの?」
「……うん」
学校までの通学路を寛人くんと一緒に歩いていた。
その時、文化祭で私達が売り子をする話になったら理由を言ったんだ。
◇
東光大学附属の学園祭の日。
この日は私の誕生日で、本当の寛人くんと会えた日だったよね。
学園祭が終わり、寛人くんと西城駅で待ち合わせをしていて、綾ちゃんと2人で学校を出たんだ。
「あー! 学園祭楽しかったねー! 田辺くんも一緒だったし!」
綾ちゃんは田辺くんと一緒だったので凄く楽しそうにしている。
「うん。楽しかったね」
今年も寛人くんと一緒に学園祭を回れた。
学校が違うから、この時しか学校行事を2人で楽しめない。
やっぱり一緒の学校に行きたかったな。
でも、文化祭といえば去年って確か──
「そういえば、綾ちゃんって去年は西城高校の文化祭で田辺くんを手伝ってたよね?」
……手伝ってたというか、綾ちゃんが強引に参加した気もするけど。
「うん。去年は楽しかったよー! 急にどうしたの?」
「ううん。良いなあ……って思っただけだよ。私も一緒の学校だったら良かったのにって思っちゃって……」
それなら毎日一緒に居れるもんね。
小学3年生までは寛人くんと毎日通学していて、教室も一緒だった。
やっと会えたけど、あの頃とは違ってしまったんだよ。
会えなかった時は、会いたい気持ちしかなかった。
なのに、今はもっと一緒に居たいって思ってしまうよ。
これじゃダメだよね……
寛人くんに迷惑だって思われちゃうもん。
「でも、やっぱり同じ学校に行きたかったな……」
「遥香……」
綾ちゃんが私の名前を呼んで立ち止まった。
もしかして寛人くんの事ばっかり考えてたから怒っちゃったのかな?
「綾ちゃん、ゴメンネ。私……一緒に居るのに考え事をしちゃってたよね」
「ううん、大丈夫だから。遥香……少し待ってて」
そう言った綾ちゃんはスマホを取り出して、誰かにメッセージを送っていた。
綾ちゃんはスマホの操作を続けている。
「ねえ、遥香。吉住くんと同じ学校になりたかったんだよね?」
すぐにスマホに返事が来ていて、綾ちゃんは私を見ないで言ってきた。
「……うん。でも、もう良いの」
無理だって分かってるもん。
……だから、この話は止めようよ。
「遥香。私は本気で聞いてるんだけど」
スマホから顔を上げた綾ちゃんは、真剣な目を私に向けていた。
「ねえ? どうなの?」
綾ちゃんが怖い女の子になってるよ……
どうして無理な事なのに真剣に聞いてくるんだろう。
「えっと……うん。寛人くんと一緒の学校に行きたかったよ」
これで良いかな?
すると綾ちゃんは急に笑顔になった。
「やっぱりそうだよね! 遥香……もしだよ? もし、西城高校の文化祭に参加できるってなったらどうする?」
綾ちゃんの言った事が理解できなかった。
内容は分かったけど、西城高校の文化祭に参加って言ったよね?
えっ? だって学校が違うんだよ?
「綾ちゃん……無理な事を聞かれても困るよ。だけど、寛人くんと同じ学校だったら一緒に出し物とか楽しめたかもしれないもんね。そうだね……やっぱり良いなあ……」
綾ちゃんが変な事を聞くから、また想像しちゃったよ。
「じゃあ"参加"で話を進めるわよ」
参加? 何に参加するの?
「えっ?」
驚いて綾ちゃんを見ると、スマホの操作に夢中になっている。
そもそも誰と連絡してるんだろう?
「だから西城高校の文化祭に参加するって言ってるのよ。田辺くんと吉住くんのクラスは"石窯ピザ"をするみたいで、運動部が売り子だから私達も売り子をすれば吉住くんと一緒にできるよ。クラスの役割分担は決まってないけど、運動部の売り子は確定だって」
「私も一緒にできるの?」
本当に? 寛人くんと一緒にできる?
でも綾ちゃん……どうして寛人くんのクラスの事を知ってるの?
「うん。今聞いたけど、谷村さんも『相澤さんが参加してくれるならお願い!』だって。だから私達もするよ」
綾ちゃん……谷村さんって誰?
……私の参加をお願いされたの?
「あの、綾ちゃん……誰と連絡してるの?」
「えっ? 谷村さんだけど? そうか、遥香は知らなかったよね。谷村さんは田辺くん達と一緒のクラスの女の子だよ」
綾ちゃんって私より交遊関係は広いけど、寛人くんのクラスにも友達が居たんだ……
聞いた事がなかったから知らなかったよ。
「去年の西城高校の文化祭だけど、私は田辺くんの手伝いをしてたでしょ? その時に彼女と連絡先を交換してたのよ」
「そうだったんだね」
うん、覚えるよ。
去年の文化祭の時は驚いたもん。
綾ちゃんがチョコバナナを一番売ってたから。
それで売上1位になったんだよね。
「うん。谷村さんは今年も現場のリーダーをするみたい。それで、今聞いたら私達の参加がOKになったのよ。遥香……良かったね」
「うん! 綾ちゃん、ありがとう! 早く寛人くんにも教えてあげたいなー」
寛人くん驚くかな?
「まだ2人には言わないでね。田辺くん達には谷村さんに伝えてもらうから……」
寛人くんに言ったらダメなの?
「どうして教えたらダメなの?」
「逃がさないためよ……2人が売り子の担当が確定した時に私達の参加を伝えるから」
寛人くんが逃げる?
私が参加するから?
「綾ちゃん……私が参加するって知ったら、寛人くんが嫌がるって事?」
やっぱり迷惑だよね。
違う学校だもん。
「えっ? 吉住くんが遥香を迷惑に思うって? それは無いわよ。吉住くんは遥香が大好きなのよ? 吉住くんは喜ぶに決まってるじゃない」
……寛人くんが私を大好き。
綾ちゃんに言われたら恥ずかしいよ。
「でも逃げるって、綾ちゃんが言ったもん」
「吉住くんの事じゃないから。遥香は心配しなくて大丈夫よ。逃がさないって……こっちの事だから」
綾ちゃんは笑顔で私に言ってきた。
その笑顔は凄く可愛かったけど、一瞬だけ少し悲しそうにも見えたんだ。
side:寛人
「えっ? それじゃあ、遥香ちゃんが言い出したって事なの?」
「うん……やっぱり迷惑だった?」
遥香ちゃんが少し悲しそうにしている。
俺は迷惑だなんて思わないよ。
西川さんが言い出して、遥香ちゃんは巻き込まれたと思ってたんだ。
「迷惑じゃないよ。俺は遥香ちゃんと一緒に文化祭ができて嬉しいと思ってたし。でも、遥香ちゃんが言い出したって知って驚いた」
「だって、一緒の学校になりたかったもん……だから、綾ちゃんから文化祭なら大丈夫かもって聞いて嬉しかったんだよ」
「遥香ちゃん……そうだな。一緒の学校になれなかったけど文化祭は2人で楽しもうか」
「うん!」
遥香ちゃんの気持ちが嬉しかった。
俺も同じ学校になりかったから。
遥香ちゃんの一言で行動した西川さんには驚いたけど、今回ばかりは感謝しかない。
……今年の文化祭が楽しみだな。
この後も2人で通学路を歩き、しばらくすると東光大学附属の正門が見えてきた。
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