第70話 遥香の頑張り
side:遥香
今日は吉住くんと花火を見に行くんだ。
勇気を出して誘って良かった。
色々とあったけど、私の誤解だった。
そのせいで吉住くんには本庄駅で6時間も待たせちゃった……
待たせたのに吉住くんは優しかった。
いつもと変わらない優しい笑顔だった。
その優しさに私は泣いてしまったんだ。
クリスマスパーティーが終わってから、吉住くんと西城駅で待ち合わせにした。私は遅れて行く事になったんだ。
だって、花火に行くのは皆には内緒だもん。見られたら恥ずかしいし……
遊園地はイルミネーションやクリスマスツリーがあって凄く綺麗……その中でも大きなクリスマスツリーは、見ていて飽きないくらい綺麗だと思った。
その時に少し離れた所からカメラのシャッター音が聞こえてきた。振り向いてみたら吉住くんだった。
「あっ! 黙って写真を撮られたよ」
「でも綺麗に撮れてるよ。今から相澤さんにも送るよ」
送られた写真は私とクリスマスツリーが一緒に写ってた。
吉住くんとも撮りたいな。言ったら撮ってくれるかな……
「一緒に撮れないかな? ダメかな?」
撮ってくれるって言ってくれた。
やっぱり言ってみて良かったよ。でも、何で誰かに頼みに行くの? 自分で撮れるのに……
「吉住くん撮れたよ。ほらっ?」
ほらね? 撮れたでしょ?
いつも綾ちゃんや優衣ちゃんと撮ってるからね。吉住くんの顔が硬くて面白いね。
「そりゃ緊張するよ。相澤さんの顔がここにあったんだよ? 緊張しない奴なんて居ないと思うよ」
顔が硬い理由が分かっちゃった……凄く恥ずかしい事をしちゃった……
その後はもっと恥ずかしかった。
だって、あれって……抱きしめられた?
転けそうになった私を支えてくれただけって分かってるけど……あの瞬間は幸せだったよ。
吉住くんからのプレゼントもあって、今までで一番楽しいクリスマスだった。
また花火を見る約束もしてくれた。
でも、もうすぐ家についてしまう……
やっぱり帰りたくないな……
「もうすぐ家だね……」
「そうだな……今日は楽しかったよ」
やっぱり私は吉住くんが好きだよ。
その言葉を言っても、また一緒に花火を見に行ってくれる?
「相澤さん……あのさ……」
吉住くんが何かを私に伝えようとしてくれてる。私と同じ気持ちだったら嬉しいんだけどな……
「あー! 遥香と吉住くんだ! 2人で何してんの? もしかしてデート? 何処に行ってたの?」
綾ちゃんだ……
綾ちゃんには花火の事は言ってない。
このままじゃ吉住くんに綾ちゃん達を誘ってないのがバレちゃうよ……
私は綾ちゃんを連れて家に帰った。
せっかくのクリスマスなのに……何で綾ちゃんは最後に邪魔するのかな……
それから新年になって、3日に綾ちゃん達と初詣に行く予定をしていた。
毎年1日なのに何で今年は3日なんだろう……疑問に思っていたけど理由が分かった。
田辺くんを誘ってたみたいで吉住くんも一緒だった。
本当は吉住くんと初詣に行きたかったんだ……クリスマスの時は「綾ちゃんが邪魔をした」とか思ってゴメンネ。
順番にお詣りをして、待ってる間に吉住くんが何をお願いしたのか聞いてみた。
「俺? 俺は甲子園出場だよ。それが叶う時は東光大学附属が甲子園に行けない事になるね。相澤さんからしたら複雑かもしれないけど」
やっぱり甲子園だった。私は東光より吉住くんを応援するよ?
私の事も聞かれたけど、内緒にしちゃった……言えないもん……吉住くんと今年も一緒に居れますようにってお願いをした事なんて……
それからファミレスで食事をして、吉住くん達は野球の話をしていた。
野球の話をしている吉住くんの顔が真剣だった。
その真剣な目を見てると不思議な感じがする……何処かで見たことある様な……懐かしい感じ……
考えてると野球の話が終わって帰る事になった。
私は吉住くんを公園に誘ったんだ。
ボールを投げるのが上手になったのを見て欲しかったから。
「おー。凄い! 届いたね……それじゃ行くよ」
「相澤さん。上手くなった?」
やっぱり気付いてくれた! 吉住くんもビックリしてる。
「ああ……ビックリしたよ……」
「吉住くんを驚かせようと思ったんだよ! これで私も一緒にキャッチボールができるよね?」
今度は一緒にキャッチボールをやってみたいな……そう思ってたら急に聞かれたんだ……
「相澤さん……聞きたい事があるんだけど……相澤さんって好きな人は居るの?」
「えっ? う……ん……居るよ? どうして……かな?」
「いや! ちょっと気になっただけだよ! ごめん変な事を聞いて! 気にしないで! 続きをやろうか? それじゃ行くよ」
私の好きな人は吉住くんだよ?
大好きだよって言っても良い?
その事を考えると泣きそうになる。
一緒に居るだけで幸せだから。
言ったら会えなくなるかもって思うと怖くなるんだよ……
吉住くんって私の事をどう思ってるんだろう? 私の事を好きになって欲しいな……
それからコンクールの練習で忙しくなって吉住くんには会えなかった。
でも、どうしても会いたかった日があった。2月14日にチョコを渡したかった。
綾ちゃんも田辺くんに渡すって言ってたから、私が吉住くんに渡すのも不自然じゃないよね?
「遥香、それってチョコ? 誰に渡すの?」
「内緒だよ。綾ちゃんは田辺くんに今日渡せるの?」
「えー! 遥香だけ言わないってズルイよー!」
綾ちゃんに言ったらまた誰かに言うかもしれないから教えないよ……
それから放課後に西城駅で吉住くんが通るのを待った。部活は無理を言って今日だけ休ませて貰ったんだ。
そして待っていると西城高校の人達も何人か居たけど、吉住くんは部活だからまだ来ないと思う。
「なぁ、吉住って手作りチョコを全部断ったって知ってる?」
「聞いた聞いた! 可愛い子も渡してたのに手作りってだけで受け取ってなかったな」
「俺なら喜んで貰うのに……」
「義理チョコを1個でも貰ってから言えよ。まぁ俺もだけど……来年は欲しいなー」
こんな会話が聞こえた……
吉住くんって確か1人しか居なかったよね? 手作りって駄目だったの?
私……頑張って作ったんだけどな……
受け取って貰えないんじゃ悲しいよ……
会いたかったけど、もう帰ろう……
それからも吉住くんとは会えなかった。
全国大会が終わったら会いたいな……
半月が経って全国大会も終わった。
4月になって新入部員が入るまで部活は今まで無かった休みが増えた。
そして、学校で綾ちゃんと一緒にお弁当を食べていた時だった……
「西城との試合って吉住が投げるんだろ? 本人から聞いてないのか?」
「友達だけど、他校だから聞けないよ」
森下くんと奥村くんの会話が聞こえてきた。吉住くんも前に練習試合があるって言ってたね。
「西城との試合? いつなの? どこで試合?」
2人の話に割り込んだのは綾ちゃんだった。
「遥香! ウチのグラウンドだって。見に行くから一緒に来てよ」
綾ちゃん……また田辺くんかな?
「うん。分かったから。興奮しなくても大丈夫だよ」
「えっ? 相澤さん。応援に来てくれるの!?」
奥村くん……私は吉住くんの応援に行くんだけど、言いにくいな……
でも、吉住くんに久し振りに会える。
この前思ったんだ。ケーキは食べてくれたんだよね。もしかしたらチョコが駄目ってだけかも……作ってみようかな?
それからお弁当も作ってしまったんだ。
駄目なら綾ちゃんに食べて貰えば良いかな……
でも、頑張って作ったから吉住くんに食べて欲しいな……
そう思いながら練習試合のあるグラウンドに向かったんだ。
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