第31話 突然の別れ②

今日2話目です。

悲しいのは終わります(*´・ω・)


――――――――――――――――――――

 side:遥香



 私は部活が早く終わったので、一人で下校していた。正門から出て、近くのコンビニ前を通ろうとしたら吉住くんが立っていた。吉住くんの学校は駅から反対側なのに「何してるんだろう」と思って声をかけた。


「吉住くん。こんな所で何してるの?」


「ん? 相澤さんか、こんにちは。少し考え事をしてた」


「考え事? 駅からここは、西城高校とは反対だよ?」


「東光大学附属の斎藤さんと待ち合わせてたんだ。ほら、俺とぶつかった人」


 野球部の先輩と待ち合わせをしていたみたい。話を聞いていると、学園祭のチケットを貰うためと言っていた。仲良くなれて良かったね。でも……学園祭に来るのか……広いから大丈夫だと思うけど、会ってしまって見られたら恥ずかしいな……うん。私のクラスの内容は内緒にしておきたいな。


 一緒に帰る事になって、吉住くんは私の学校の人に見られる事を気にしていたけど、私は気にしないよ?


「公園のグラウンドを見たい」と吉住くんが言ったので、一緒に公園に行ってみた。野球が好きなんだね。


「相澤さんも少し投げてみる?」


 運動が苦手で断ろうとしたけど、野球を知ってみたいと思ってたので教えて貰った。上手に出来ない私にも丁寧に優しく教えてくれた。やっぱり吉住くんは優しい。


 そんな吉住くんと一緒に居ると「ひろとくん」を思い出してしまう。もう比べたらダメと分かってるのに、何でなのか分からないよ……



「それにしても、相澤さんって意外と感情が豊かだよね? 初めは大人しい子かと思ってたよ」


 私は驚いた。改めて言われると自分でも普通に男の子と接していたんだ……と考えていると突然「可愛かったよ」この一言にビックリしたと同時に恥ずかしかった。他の男の子にも言われた事もあるけど、吉住くんに言われて嫌な気持ちにはならなかった。それよりも嬉しいと思っていた。それと同時に……



『はるかちゃん、大好き!』


『はるかちゃん、かわいいね』



 ひろとくん……



「はるかちゃん……僕……遠くにお引っ越しする事になったんだ…」


 ひろとくんは遠くへ引っ越して行った。本当に突然だった。家には家具が……私達の思い出が家の中に全て残ったままなのに……ひろとくん達だけが突然いなくなった。数日後に業者さんが荷物を運びに来て、その場面を私は見ている事しか出来なかった。空っぽになってしまった家……それを見た私は泣く事しか出来なかった。


 後で聞いたらお父さんが亡くなったと聞いた。お母さんも怪我をして、ひろとくんとお爺ちゃんの家に行ったと聞いた。


 やっぱり私は泣く事しか出来なかった。


 ずっと泣いていた……


 お母さんに「ひろとくんの所に行く」と言っても何も教えてくれなかった。


 その一年後、両親が離婚をして、私はお母さんと一緒にお母さんの実家に引っ越した。その時に「佐藤遥香」から「相澤遥香」に……私の名前も変わった。


 その後も私は泣いた。やっぱりお母さんは教えてくれなかった。


 中学生になった時には泣かなくなっていて、改めてお母さんに聞いてみた。


「お母さん。ひろとくんは何処に引っ越したの?」


「遥香も大丈夫そうだから、もう教えてもいいかな。遥香も泣きっぱなしだったし、寛人くんの所も大変だったから教えなかったのよ」


「真理さんには、離婚する時に電話をして、引っ越す事と、今の住所も伝えてあるよ」


「本当に! ひろとくんに手紙を出してみるよ!」


 でも……


 ひろとくんに送った手紙は「宛先人不明」で私の所に戻って来た……


 お母さんにも聞いた。「住所は伝えたし、その後に寛人くん達が引っ越す事は聞いてないよ。私達が引っ越す時に、寛人くんのお爺ちゃんとも話をしたけど、真理さんの落ち込み様が酷くて、真理さんには私達の住所を伝えてから連絡を取らない事にしていたのよ」


 私は目の前が真っ白になった……


 ひろとくんは何処に行ったの?


 ひろとくんから貰った最後の手紙……今も持ってるんだよ?




『はるかちゃん大好き。また会えるよ』




 これが手紙に書いてあった最後の言葉……



 ひろとくん……いつになったら会えるの?



 その手紙を見て、また泣く事しか出来なかった。


 一緒に居たら楽しいし、安心できると感じてしまう不思議な男の子……私は吉住くんが気になっているのかもしれない……


 このままだと……ひろとくんが私の中から居なくなってしまうよ?



 家で考え事をしていたら。携帯からメッセージの通知が2件入っていたので開いて見た。


『次の土曜日の午後に病院へ行くから、その後なら公園に行けるけど、どうする?』


 吉住くんだった。


「うん。私も部活が午前中で終わるから大丈夫だよ。部活が終わったら連絡するね」


 もう1件は綾ちゃんだった。私は自分の気持ちが良く分からなくなっていた。


 私は吉住くんをどう思ってるのか分からないよ……


 私は自分の気持ちが知りたい……

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