第28話 学園祭のチケット
月曜日のホームルームの時間になり、俺と高橋さんが前に出てアンケートの結果を今から発表する。
「クイズ大会とデザートの同点になった。今から多数決を取ろうと思う。その前に、アンケートを書いた人に、どんなものにしたいのかを聞いてみたい」
クイズ大会とデザートを書いた人達は「ビクッ」としていた。やっぱり何も考えてなかったか……ため息が出そうになったが話を進めた。
「クイズは……横田はどんな感じにしたいんだ?」
「えっ……何で俺……?」
「第1希望と第2希望の全てがクイズ大会って書いてたからな。余程クイズがやりたい様に見えたからな」
「いや……ただ……クイズをするだけ……」
やっぱり何も考えてなかったな。
「そうか、分かった。スイーツは谷村さんはどうかな? スイーツの絵も書いてたし」
「うーん……そうね……他の食べ物でも良かったんだけど、喫茶店は他のクラスもやりそうだし、焼きそばやタコ焼きも被りそうって思ったの。スイーツなら口直しに欲しがるかなーって感じかな」
「分かった、ありがとう。今から多数決を取るので手を挙げて欲しい」
やはりスイーツに決まった。クイズするだけって誰が喜ぶんだ?
「スイーツで決定だな。それじゃ、何をするかを決めたい。凝った物は出来ないぞ。全員で楽しめて簡単な物が良い。勉強したい人も居るんだ。当日にすぐ出来る物が理想かな。何かないかな?」
「吉住くん。ちょっと良い?」
「谷村さんどうした?」
「同じ事を考えてたんだけど、チョコバナナはどうかな? 簡単だし、男子でも出来ると思うよ」
1組の出し物は「チョコバナナ」に決まった。勉強したい人、楽しみたい人の全員で出来るし、これで良かったはずだ。鈴木先生も満足そうだった。
文化祭実行委員への報告も終わり、放課後になった。今日は部活に顔を出す日だ。
「陽一郎、ネットを使わせてくれ。リハビリの先生に上半身だけだったらボールを投げても良いって言われてな。投げないと指先の感覚が無くなりそうで怖い」
「構わないが、リハビリの範囲内だけだぞ。それと、土曜日の試合は見に来るのか?」
「試合には行くつもりだ。リハビリはその後に予定してるからな」
陽一郎と部室に向かい、ブルペンで琢磨や先輩達の投球を見ていたが、気になった事があったので聞いてみた。
「先輩達は文化祭で何をするんですか?」
「俺の所はお化け屋敷だな。皆ヤル気になってるよ」
「こっちはフランクフルトだ。全員が出店をやりたいって一致したが、何を出すかで揉めた」
「やっぱり大変なんですね」
「俺達はタコ焼きやーーっ! 公園のオッチャンに弟子入りしてん!」
琢磨はどこに向かってるのか分からんな……野球をしっかりやってくれたら良い。
明日はコウちゃんに会う日だったな。リハビリに行くついでたし、学校の近くまで行こうかな。
翌日になり、リハビリが終わってから、東光大学附属に近いコンビニの前でコウちゃんと待ち合わせていた。
「ヒロ! 待ったか? それに、ギプス取れて良かったよ」
「リハビリが終わって、さっき来た所だよ」
「無理するなよ。それでこれがチケットだ。1枚で良いか?土日のどっちに来るか決まったら教えてくれ」
「分かった。ありがとう」
「せっかく来て貰ったのにスマン。この後、監督に進路の件で呼ばれてるから行くよ」
「進路の話? 大学? プロ?」
「プロに行けるなら行きたいけど、大学に入って実力を更に付けないとな」
コウちゃんはそのまま学校へと帰って行った。進路か……考えた事がなかったな……高校は野球したい為に入って、勉強はやってるから問題がない。来年の夏が終わったら真剣に考えないとな……進路の話が出て真剣に考えていた。
「吉住くん。こんな所で何してるの?」
考え事をしていて、コンビニの前で立ち尽くしている時に、背後から声を掛けられた。
「ん? 相澤さんか、こんにちは。少し考え事をしてた」
「考え事? 駅からここは、西城高校とは反対だよ?」
「東光大学附属の斎藤さんと待ち合わせてたんだ。ほら、俺とぶつかった人」
「そうなんだ。また足の事?」
「違うよ。学園祭のチケットを貰ったんだ。野球部の人達が俺に会いたいんだって」
「あ……学園祭に来るんだ……」
「俺もクラスの文化祭実行委員会になってるから、他校の学園祭がどんなのか見てみたいのもあるかな。そういえば、相澤さんも今から帰り? 俺も用事が終わって帰るけど、駅まで一緒に行く? あっ……でもここだと東光大学附属の人に見られるか……」
「別に見られても平気だよ。帰ろっか」
今でも他校の生徒だから目立ってるのに、本当に大丈夫なのか? 相澤さんが来てから余計に見られてるし……まぁいいか。
「分かった。それじゃ帰ろうか」
相澤さんと2人で東光大学附属の通学路を歩くと変な感じだな。病院や中央公園も近いし、西城高校より便利だよな。
駅への道を進み、近くを歩く東光大学附属の生徒達からの視線を感じながら、相澤さんと2人で歩いた。ふと、中央公園を見ていると、中にグラウンドが見えた。
「相澤さん……ごめん。俺ちょっと公園に寄って行くよ」
「公園に? 何かあったの?」
「あそこにグラウンドが見えるでしょ? 病院の帰りにも寄れる場所だし、軽くボールが投げれる場所か見たくて」
公園の中にあるグラウンドを指差しながら相澤さんに伝えた。
「うん。じゃあ私も一緒に行ってみる」
何故か相澤さんも来るみたいで、一緒に公園へ行く事になった……
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