第25話 文化祭実行委員
休み時間になり高橋さんがやって来た。
「押し付けてごめんなさいね」
「いいよ。やるって決めたんだから、気にしないで」
「高橋さん、気にしなくて良いよ。寛人に任せておけば大丈夫だから。傍観してる様で困ったら助けてくれるし、問題を解決するから安心しててよ」
「陽一郎、いつの事を言ってるんだ?」
「中学のシニアの時の事だよ」
「それと今回は違うだろ?」
「今回は嫌われ役になっただろ? 誰かが言わないとダメなんだよ。あの時も俺では無理だったし。まぁ、全員が協力する事になったから良いじゃないか。野球部主将としては、部活に来ない間に無理してないか心配だったけど、文化祭実行委員なら安心だな」
「陽一郎……主将を押し付けたと思ってるだろ」
「ハハハ。少し思ってるだけだから安心しろよ。部で何かあれば頼むよ」
「楽しんでる所を悪いけど、文化祭実行委員の集まりがあるから放課後宜しくね」
いきなり今日からかよ……今でこそ俺達は仲が良いけど、主将の陽一郎と琢磨は険悪だったからな、他のメンバーもバラバラだったし……懐かしいな。本当に良く優勝したと思うよ。
放課後になり、高橋さんと集まりのある視聴覚室に向かった。終わったら部活に顔を出してから帰宅の予定だ。
聴覚室に着くと、各クラス2名ずつだが、生徒数の多い学校だから多くの生徒が集まっていた。
「全員揃ったかな? 文化祭実行委員長の3年の山平です。手元にアンケート用紙があると思います。これをクラスで配布し、集計しておく様に。これを元に各クラスの催しを決定します」
アンケートを配って集計する。後は文化部の出品や展示。運動部は学園祭の当日に持ち回りで巡回や係員があり、その割り当てが発表された。
実行委員の俺達も同様で、巡回の割り当てがあった。
集まりが終わり、高橋さんは質問があるからと残り、俺は視聴覚室の出口へと向かうと、高橋さんが俺を呼び止めた。
「吉住くん。来れない日もあるでしょう? 連絡先を教えてくれないかしら?」
「そうだな。それなら来れない日はメッセージで内容を教えてよ」
高橋さんと連絡先を交換してグラウンドへ向かった。
「おっ! 吉住。ギプスが取れたみたいだな。田辺からも聞いている。手伝いやリハビリで来るのは良いけど参加はさせんからな」
「治療に専念します。秋季大会は誰が投げるんですか?」
「1年の坂本と、2年の木村と早川だ」
「木村さんと早川さんと琢磨ですか。琢磨はムラっ気がありますが、先輩達なら大丈夫そうですね」
「吉住が居ないのが痛いけどな……時間ある時で構わないから木村と早川のピッチングを見てやってくれるか? 本人達が頼んできてるんだ」
土曜日の午前中に練習へ参加し、琢磨も含めて投球を見る事になった。
「練習を見てるだけだと暇だな」
「寛人、土曜日まで来るな。もう帰れ」
「分かったよ。陽一郎、何かあったら連絡してくれ」
見てると練習に参加が出来ないので、全員に挨拶をして帰宅した。琢磨は「文化祭で俺のクラスはタコ焼きやねん!」と言って走り去って行った。陽一郎に聞いたら工業科の琢磨の7組は、琢磨みたいなのが沢山いるらしい。
7組は本当に大丈夫なんだろうか?
土曜日の先輩達や琢磨の練習の事を考えながら、何か使えないか……と久しぶりに自宅の倉庫に向かった。
これ……父さんが買ってくれた電子ピアノだ。
「寛人。これで鍵盤に慣れてごらん。ペダルも無いけど、指を慣らすには良いと思うよ」
「お父さん、ありがとー。僕、いっぱいいっぱい練習するね。早くお父さんみたいに弾いてみたいもん」
「ハハハ……まずはピアノを楽しむ事かな。お父さんも楽しかったからね」
買ってくれた時の事を思い出していた。父さんが居なくなってからピアノには触っていない。辛くて触れなかった。それから野球を本格的に始めた。でも、指先の感覚を養うのにピアノが役に立っていたと気付いていた。
久しぶりに出してみるか。まだ母さんも帰ってないし、出しても大丈夫だろう。
自室に電子ピアノを持って行き、久しぶりに鍵盤に触れた。
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遥香ちゃん…どこ行った…
たぶん明日は…大丈夫かも…(´・ω・)
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