第13話 大部屋へ
Side:寛人
「寛人ー! 来てやったぞ! 治ったかー!!」
「はぁ……琢磨、うるさい」
ベッドの上に座って読んでいた本を閉じ、「こいつ病院って分かってるのか?」と意思を込めて琢磨を見た。嫌な予感がしていた陽一郎がすぐに注意していた。
「ここ、大部屋だから静かにしろ。他の人に迷惑だろ」
やっぱり陽一郎は頼りになる。琢磨……何でお前はいつも落ち着きが無いんだ?
「寛人、久しぶり。来れなくて悪かった。スタンドから見てて、タンカで運ばれた時は焦ったよ」
「おぉ、和也も来てくれたのか! 久しぶり! 今日来てくれて嬉しいよ」
「座る所も無いし、外に出ようよー」
「うん、琢磨もうるさいからねー」
翔と翼の双子は毎回同じ考えをする。少し子供っぽいけど、野球でも息がピッタリの二遊間で頼りになる。
「そうだな。動けるんだろ、寛人?」
「大丈夫だ、あっちに談話室があるから行こうか」
俺は松葉杖を持ち、同室の住人達に「騒がしくしてすみません」と挨拶をして病室を出た。
大部屋は4人部屋で、ベッドは1つ空いていて3人で使用していた。
足を骨折している女性と、腰を悪くしている女性、2人は年配の人達だった。
「寛人! 寛人! 聞いてやー! さっきな、可愛い子がおってん!」
「なぁ……皆……琢磨は何を言ってるんだ?」
「俺の学校の子に会ったんだよ」
「和也の学校?」
「さっき来る時に和也の同級生に会って、その子と一緒に居た女の子の事だ」
「「うん、可愛いかったよねー」」
やはり、この双子は息がピッタリだ。
「それで病室に来た時からテンションが高かったのか……それで……琢磨、それがどうかしたのか?」
「寛人! なに言ってんねん! 大事な事やろ!」
「すまん。サッパリ分からんし、東光大学附属だろ? 俺達は会う事もないし、俺は顔も知らん」
どうでも良いよ、とりあえず早く退院したい。来週だったな……
「それで和也、甲子園は良かったか?」
久しぶりに和也が来た事もあり、俺達は中学時代のノリで色々と話をして、皆は帰って行った。
甲子園か……やっぱり楽しそうだよな……
病室に着く頃、人が病室の前に立っていて、知ってる顔だったから声を掛けた。
「斎藤さん、こんにちは」
「帰ってきたか……来たけど居ないから待ってたんだ。動いて大丈夫なのか?」
「もう来週退院ですからね」
斎藤さんは俺と激突した人で、何度も来てくれてお互い緊張も無く話せる様になっていた。それにしても、今日は人が来客が多いな。
「来週なんだな。今日来たのは、何日まで入院か知りたかったんだ。ウチの親は隣の県に居て、こっちに来て吉住の親に会いたいそうなんだ」
「俺の親にですか?」
俺は何故なのか分からなかった。しかし斎藤さんの言葉に納得した。
「その……俺が怪我させただろ?」
「いや、あれは誰も悪くないですよ。試合中の事故って話してたじゃないですか」
「親からしたら違うみたいでな。すまん……退院の時に親は来るのか?」
「荷物もありますから来ますよ。昼過ぎには退院します」
透さんは医者だし、毎日この病院に居るけど仕事中だしな……退院日は母さんと一緒に休みを取って来てくれるし問題無かったはずだ。
「昼過ぎか、じゃあ午前中にウチの親を連れて来るから伝えてて欲しい」
来週の退院の日、俺と斎藤さんの両親が会う事になった。
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