第12話 久しぶりの合流
side:西城の4人
「東光大学附属めっちゃ強かったな」
練習が終わり着替えてる時に琢磨が言った。
東光大学附属は甲子園でベスト8で敗退し、優勝は果たせなかったが勝ち進んだ試合は圧勝だった。
「ハハハ……強すぎだな」
「やっぱり甲子園に慣れてた感じだよねー」
陽一郎が続き、山崎翔・翼の兄弟も頷いていた。
「俺達の方が東光を追い詰めたけどな」
チームは秋に向けて猛練習で負けた悔しさを払拭していた。
もうすぐ合宿と遠征も控えていて、新チームは入院中のエースが戻って来るのを待っているだけだった。
「寛人はどうなんや?」
「この前行ったら元気にしてたよ」
「これから寛人の所に行くか?」
「そうやな。東光も甲子園から帰ってきてたし和也も誘ってみるか?」
「あいつ……昨日、甲子園から帰って来て明後日の合宿まで2日間休みって言ってたぞ」
「はぁ? スタンド組だろ? 休まずに練習しとけよ」
中学時代の仲間で、東光大学附属に進学した森下和也に連絡をして、合流する為に部室を出た。
「あ~! 野球部の子達だ~」
他の部活の先輩達だった。
「吉住くんは元気?」
夏の予選で、東光大学附属を追い詰めた試合を全生徒が見ていた。その為、入院中の寛人の様子を心配する声が多い。
「まだ入院中ですが元気そうですよ。これから俺達も寛人の所に行くんです」
「え~。私達も行きたい~」
「吉住くんと話してみたいよね」
「吉住くん……確か特進クラスでしょ? 背も高いし運動も出来て、顔も整ってて感じも良いよね」
野球部の1年生エースで、生徒数の多い西城高校でも寛人は目立っており、何故か女子の先輩達から大人気で、知らないのは本人だけだった。
「まぁ、新学期には退院してるんでしょ? まだ私達も部活だし私達の分までお見舞いよろしくね」
先輩達は手を振って戻って行った。
「俺達も行こうか」
「何でいつも寛人ばかりモテるねん! 俺も彼女が欲しいんやー!」
琢磨は叫びながら、正門の方へ走って行った。
「西城駅前で待ち合わせで良かったよね?」
「琢磨、走って行っちゃったよー」
「和也とは西城駅で待ち合わせだ。琢磨は放っといても大丈夫だ」
東光大学附属高校と西城高校は最寄り駅が同じだった。西城駅が市内で一番栄えていて、中央改札口側から出て、東光大学附属高校は「東側」で、西城高校は「西側」と反対側に学校があった。
西城駅で待っていると、和也が走ってきた。
「お待たせ! 久しぶりー!」
「和也、日焼けが凄いな。練習焼けじゃなくて応援焼けか?」
「うるせー! 部員数が多すぎるんだよ! お前達は相変わらずだなぁ」
「まぁまぁ落ち着け。俺達の分まで甲子園を楽しんだか?」
「スタンドだけどな……斎藤さんが凄かったわ」
別の高校に進学した和也だったが、5人は以前と変わらない会話をして、病院に向かっていた。
「あれ? 森下くん?」
「おー、西川さん」
和也が同じ学校の女の子に話しかけられた。
「森下くん、野球部は休みじゃなかったっけ?」
「明日まで休み。なので今日は中学の時の仲間と会ってた」
「そうなんだ。私達は今から買物してから帰るんだ」
西城高校の4人は、和也達のやり取りを眺めてるだけだった。
「あー、ごめん。彼女は同じクラスの陸上部の西川綾さん。一言で言うと元気すぎる子だな」
「なにそれっ! あ……こんにちは!」
4人は西川さんと挨拶を交わし、和也と西川さんを含めた6人で「試合見てたよー」「甲子園暑かった」等を話していた。
「綾ちゃん……時間がなくなるよ?」
西川さんの後ろにいた女の子の声だった。
「そうだね。森下くん、友達といた所ゴメンネ。遥香そろそろ行こっか」
「おう、西川さんまたね、相澤さんもまた」
西川さんは手を振って過ぎて行って、もう1人の子は「ペコッ」と会釈だけして行った。
「誰やっ! あの子!!」
「和也の友達なの?!」
「和也が羨ましいよー!」
琢磨と翼に翔が目を輝かせ、陽一郎は3人を見て笑っていた。
「あー、同じクラスの西川さんと相澤さん」
「あのもう1人の子! メッチャ可愛いやん!」
琢磨が興奮していた。
「相澤さんな、学校でも大人気だぞ」
「そうやろうなー」
「入学して半年……告白されまくって全滅させてるって聞いたし、男嫌いって聞いた事あるぞ。俺も同じクラスだけど挨拶しかした事ないな」
「そういえば、さっきも西川さんに話し掛けるまで無言だったな」
「いつもだよ。女の子と話す時は笑ったりしてるんだけど、男になるとダメみたいだな」
5人はくだらない会話をしたまま寛人の所に向かっていた。
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