第133話 CEROレーティング
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「野掘さん、ヨンテンドージョイッチの『ビーストハンターアライズ』って知ってる? その件でちょっとお願いがあるんだけど……」
「どういうゲームかは知ってますよ。お願いとは一体……?」
ケインズ女子高校硬式テニス部との練習試合の日、私、
「私の弟の
「なるほど、確かにああいう通信プレイがメインのゲームって小学生がよくマナー関連で問題起こしてますよね」
ビーストハンターアライズは同じクラスの
今日の食事会の費用をおごって貰うことをお礼に私は依頼を引き受け、翌週の始業前に早速梅畑君に話を持っていった。
そしてその日の放課後……
「まなちゃんまなちゃん、今日は私がスーパープレイを見せるよ! エアリアルガンスピアー使いのはたことしてインターネット上でも有名なんだよ!」
「へえー、はたこ先輩ってビーハン得意だったんですね。楽しみにしときます」
高校生プロゲーマーである梅畑君は界隈では有名すぎるため通信プレイには協力できないと依頼をあっさり断られ、梅畑君はその代わりにとビーストハンターアライズをいつも遊んでいる
言うまでもなく同じ硬式テニス部員なので宇津田さんははたこ先輩に直接頼んだ方が早かったのではと思いつつ、私は制服姿のままはたこ先輩の自宅にお邪魔し、先輩の部屋で通信プレイのセッティングを始めた。
「よし、シンジ君と同じ部屋に入れたよ! 今から2人で通信するからシンジ君が問題起こさないか見ててよ!!」
「分かりました。何も問題がないといいですけど……」
宇津田さんが教えてくれた暗証番号をゲームに入力するとはたこ先輩のアバターは真嗣君と同じ部屋に入り、これからお互い武器を持ち防具を身にまとって強大なモンスターを狩猟しに行くようだった。
私はゲーム画面とチャット欄を注視し……
>はたこ:よろしく
>SHIN:よろしくお願いします
>はたこ:くしゃるのくえてつだつて
>SHIN:分かりました。超風圧無効の防具に着替えてくるので少しお待ちください
>はたこ:はちみつください
>SHIN:沢山ストックしてあるので10個どうぞ
>はたこ:ひやくもいい?
>はたこ:ふんじんはやくして!
>SHIN:どうぞ
>はたこ:でんわかかつてきた
>SHIN:ドンマイ!
>はたこ:ほうぎょくがでない!! ふざきんな!!
>SHIN:下位クエストだと
>野掘さん、どうかしら? 何か真嗣がひらがなばっかりで変なチャットしてるように見えたけど……
>真嗣君は何一つ問題のない優良プレイヤーでした。ご安心ください。
はたこ先輩と真嗣君が通信プレイに興じている間、メッセージアプリで私にゲーム画面の解釈について尋ねてきた宇津田さんに、私はどっちが小学生かこれもう分かんないなと思った。
(続く)
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