第56話 暗号資産
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「野掘殿、すまーとふぉんのぱすわーどというのはどのように決めればよいのでしょうか?」
「円城寺君、最近スマホ買い換えたんだよね。パスワードって具体的にどこで使うパスワードのこと?」
ある日の朝、私は同じクラスの
「銀行口座のあぷりを使っているのですが、起動時のぱすわーどを自分の生年月日にしていたら通信事業者の店員さんにそれはよくないと言われたのです。ただ、これまでずっと生年月日とか自宅の郵便番号にしていたので……」
「スマホとかインターネットの初心者にありがちだけど、生年月日とか郵便番号とか個人情報をそのままパスワードに使うと簡単に情報が
円城寺君は以前からスマホやSNSを使っていたが実家がお寺であることもあって電子機器には不慣れらしく、私は彼がクラッキングや情報漏洩の被害に遭わないようパスワードの決め方を教えてあげた。
「なるほど、それでは
「確かに、たいてい文字数制限があるよね。そもそも自分が覚えられないと意味ないし」
「円城寺と野掘さん、何か悩んでるの?」
どう助言していいか分からず悩んでいると、後ろの席から
「実はかくかくしかじかなのです。梅畑殿は電子機器には詳しいでしょうから、いいお知恵を頂けませんでしょうか」
「そうかそうか。資産を暗号で守らないといけない訳だから、確実に覚えられて他人には推測できないやり方にしないとな。一例を挙げると、ゴニョゴニョ……」
「それは素晴らしいです! 例えばこういう感じですね!?」
梅畑君は上手なパスワードの設定法を円城寺君に教え、円城寺君はすぐさまパスワードを設定すると私たちに見せてくれた。
>アプリ起動時のパスワードを入力してください。
>□□□□□□□□□□□
>ヒント:微巨普貧豊爆美
「この場合、ぱすわーどは『afcbegd2002』となります。2002は
「このヒントで分かるの? 私全然分かんないけど」
「大丈夫、男なら絶対分かるから! 例えば朝日さんは『普』に相当してぬぐふっ!!」
「○ね!!!」
いつの間にか見にきていた朝日千春さんから頭部にゲンコツを叩き込まれ、梅畑君は気絶して倒れた。
「だ、大丈夫ですよ、朝日殿も寄せて上げれば『美』ぐらいには」
「(暴力に)訴えてもいい?」
「ひえーお許しをーー」
拳をポキポキ言わせながら呟いた朝日さんに、円城寺君は始業前にも関わらず教室から逃げ出していったのだった。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます