第24話 ライバル

「ライバル? 俺の?」

 その日の夜は「ポー・ストークスマン」たちが起こした事件が解決し平野平秋水、息子の正行、石動肇が居酒屋で飲み会をしていた。

 正行は既にハイボール三杯でいい心地だ。

 だから、聞いた。

「親父にライバルっていないの?」

 石動は素早く言おうとした。

『あのな、正行。おやっさんは世界一の傭兵だぜ。ライバルなんて……』

「いるよ」

 その前に丼で日本酒を飲んでいた秋水はあっさり肯定した。

 滅多に酔わない男の頬が少しだけ赤い。

「へえ、どんな人?」

 子供が親に何かをねだるように聞く。

「そうだな……人を真っすぐ見ていて、それなりに強いけど本当は泣き虫で、それを押し殺してみんなのために頑張る……」

 秋水は思い出すように語る。

 だが、正行の集中力は途中で切れたのか眠ってしまった。

「正行」

 隣の石動が正行の硬い肩を叩くがハイボール六杯と半分で正行は夢の世界だ。

 ため息を吐いて石動はホルモンと野菜炒めを食べている秋水を見た。

「おやっさん」

「何?」

「正行が鈍くてよかったですね」

 秋水はその言葉を丼に注いだ酒で飲みほしながら聞いた。

「こいつ、自分を低く見過ぎているんだよ」

 困ったように秋水は熟柿臭いため息を吐いた。

「自信過剰も困るがな……すいませーん、ウィスキーのロック!」

 店員に注文して石動を見て秋水ににやりとした。

「でもな、もうそろそろ、こいつは起きるぜ」

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『WONDERFUL WONDER WORLD』短編集 隅田 天美 @sumida-amami

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