発見
--- ノッガー侯爵さまはアデラインさまを嫌っておられるというよりは ---
--- むしろ、アデラインさまとの接触を徹底的に避けていらっしゃるだけの様に思えますわ ---
目から鱗が落ちるとはこの事か。
誰よりもアデラインの近くにいた筈なのに、僕がその発想に至ることはなかった。
「嫌ってはいない。・・・確かに、そうかもしれない、けど・・・」
「ええ。だって、それ以外のことは全てやって下さっているのでしょう?」
それは僕も不思議に思っていた。
衣服も、食事も、教養面での支援も十分過ぎるほどで。
人伝てだけれど、要望を出せば直ぐに叶えられていた。
嫌いだったら、関心がなかったら、普通は。
「だったら何故・・・アデラインを悲しませるようなことを・・・」
訳が分からない。
頭を押さえて椅子に座り込んだ。
そんな僕を見ていたアンドレは、やがて立ち上がると辞去を告げた。
「ノッガー家の事情を色々と聞いてしまったが、口外するような恥さらしな行いはしない。エウセビア嬢もそのつもりはないだろう」
「勿論ですわ」
「何か助けが必要ならば力になる。まあ、出来ることしかしないが」
「・・・そうですわね。これ以上は、わたくしたちは詮索するべきではありませんね」
「・・・ありがとう、エウセビア嬢。それにアンドレも」
馬車に乗り込む二人を見送りながら、出会い方は最悪だったけど、良い友人に巡り会えたとしみじみ思った。
一人で考えていたら、きっともっと時間がかかっていたと思う。
義父とアデラインとの奇妙な関係は、僕には難しすぎる問題なのかもしれない。
そのきっかけは分かってるけど理由は分からないまま、どうしたらいいかずっと見当がつかなくて。
ついつい大きな溜息を吐いた。
「大丈夫? セス。疲れているのではなくて?」
ベッドに横たわるアデラインが、すまなそうな表情で僕を見上げる。
「大丈夫だよ。ちょっとぼーっとしてただけ。体温計、そろそろかな? ちょっと見せて」
アデラインから体温計を受け取り、かなり熱が下がったことを確認する。
「うん。だいぶ良いね。でもまだ油断しちゃダメだよ。大人しく寝てないと」
そう言って、ブランケットの位置を直していた、その時。
廊下の方で微かな物音がした。
侍女が来たのかと思って、そのまま待っていたけれど、誰も入って来る様子はない。
「・・・?」
念のため、と思って立ち上がり、そっと扉の外を覗く。
誰もいない。
でも、階段を降りる足音が聞こえてきて。
そのまま耳を澄ませていると、階段の足音が止んで暫くしてから、一階の東側の方で扉が閉まる音がした。
一階の東側、それは義父の執務室がある方角で。
--- 嫌っておられるというよりは・・・
一瞬、エウセビア嬢の言葉が脳裏を過り、僕は混乱する頭をどうにか整理しないと、と睡眠不足でぼんやりしながら考えていた。
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