第99話 試験受けてないよね

 リベリオンの首謀者であるゼブラとモルデアをはじめ、その構成員たちを捕え、無事に冒険者ギルドへと戻ってきた。

 そして彼らはひとまず、ギルドの地下にある牢屋へとぶち込まれることに。


「冒険者ギルドがこの都市を治めてるってことは、このままここで裁かれるってことね」

「多分、死刑?」

「幹部らは間違いなくそうでしょうね。ま、その辺りはあたしたちが気にすることじゃないわ」

「ん」


 これからしばらくの間、この街から外に出る際の検問が非常に厳しくなるという。

 恐らくまだ街の中にリベリオンの残党がいるため、彼らを逃がさないためだろう。


 戻ったら色々と聞きたいとギルド長が言っていたので、面倒だなと思っていたが、幸い深く追及されることはなかった。

 まぁ副ギルド長が敵の幹部だったわけだし、他にもギルド内に協力していた者がいるかもしれないとあっては、そんな暇などないだろう。


 その後、俺たちはかなりの額の報酬を受け取ることができた。

 ファナたちによれば、今まで彼女たちが貰った中で一番の報酬額だという。


 ただ、なぜか俺だけがそんな二人の倍の金額の報酬だった。


「何でだろ?」

「それ相応の活躍をしたからに決まってるでしょ」

「ん。間違いない」


 そんな話をしていると、ゲインとエミリーがやってきた。


「すまない、二人とも。遅くなってしまった」

「ごめんねー、知っての通り、ギルドも今、てんやわんやでさー」

「「……?」」


 何の話だろう、と首を傾げるファナたちに、ゲインが「忘れたのか?」と言って、


「試験の結果だ」

「Aランク冒険者のねー」

「そういえば」

「色々あって忘れてたわ。ていうか、そもそも試験って成立したのかしら? イレギュラーがあったし、レッドドラゴンを倒したのは試験を受けてなかったレウスだし」


 俺は最後にちょっとトドメを刺しただけだけどな。


「ああ。試験そのものは正直、成立するものだったとは言い難い。だが、二人の活躍ぶりを鑑みれば、再試験を課す必要などないと判断した」

「どうせ合格するだろうしねー」

「ということは……」


 何やら文字の書かれた羊皮紙を取り出したゲインは、それを二人に手渡しながら、


「無論、二人とも合格だ。おめでとう。これからは同じAランク冒険者として、切磋琢磨していければ幸いだ」

「おめでとねー。あ、その紙を受付で見せたら、新しいギルド証が貰えると思うよー」


 どうやらその羊皮紙は合格証書のようだった。


「お姉ちゃんたち、おめでとー」

「そしてこれは君の分だ」

「……へ?」


 なぜか俺にも渡される羊皮紙。

 ファナたちとまったく同じ内容で、名前の部分だけが「レウス」となっていた。


「どういうこと? 僕、試験受けてないよね?」

「特例だ。ギルド長が認めた場合に限り、試験を受けずともAランクに昇格することが可能になっている。今回の君の大活躍を受けて、Bランクにしておくのは惜しいと、忙しい中、ギルド長が特別に昇格を決めてくださったのだ」


 えええ……。

 なんというありがた迷惑だろうか。


「さすが師匠。むしろ当然」

「よかったわね」


 仕方なく合格証書を受け取った俺は、ファナたちと共にBランク冒険者専用の受付窓口へ。

 そこでAランクのギルド証を発行してもらった。


「すごい、色がゴールドよ!」

「ん。キラキラしてる」


 ギルド証はランクによって色が異なっているようで、Bランクのときは銀色だったのが、Aランクでは金色だった。


「せっかくだし、Aランクの依頼を受けてみましょうよ」

「妙案」


 完全に萎えている俺を余所に、Aランク冒険者専用の窓口へと向かう二人。

 ファナに抱っこされているので、必然的に俺も一緒に連れて行かれてしまう。


 ちなみに同じパーティ内に一人でもそのランクの人がいれば、専用の窓口を利用することが可能らしい。


 Aランクの窓口はすべて個室になっているようだった。

 入ってみると、ソファが用意されており、テーブルの上には冊子に纏められたAランク用の依頼書が置かれていた。


 さらに綺麗な女性が入ってきたかと思うと、紅茶やお菓子を出してくれる。


「ここでじっくりと依頼を選ぶことができるみたいね」

「ん、至れり尽くせり」

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