サトルくんの都市伝説
サトルくんの話
ねえ、サトルくんの話を知ってる?
どんな質問にも答えてくれる、サトルくんという子がいる、都市伝説を。
公衆電話に10円玉を入れて、自分のスマホに電話をかけて。繋がったら受話器に向かって、『サトルくん、おいで下さい』って唱えるの。
それからしばらくすると、スマホにサトルくんから電話が掛かってくるんだよ。この時、すぐに電話にでないと儀式は失敗しちゃうから、注意してね。そして電話に出たら、サトル君が言うの。「今◯◯にいるよ」って。
それから何度か電話が掛かってきて、その度にサトルくんはどんどんこっちに近づいてくる。最初は隣の県だったのが、隣の市、隣町って具合にね。
やがて「あなたの後ろにいるよ」って言って背後から声がしたら、いよいよ質問タイム。誰々の好きな人を教えてとか、宝くじの当選番号が知りたいとか聞いたら、サトルくんは答えてくれるの。
ただひとつ注意しなくちゃいけないのは、質問している時は絶対に後ろを振り返っちゃいけないってこと。もしも振り返ったら、サトルくんにどこかに連れて行かれちゃうから。
その辺はちょっと怖いけどさ、あたしサトルくんを呼び出してみるよ。
だって今度のテストで100点取ったら新しい靴を買ってくれるって、ママが約束してくれたんだもの。テストに出る問題を教えてもらったら、簡単でしょ。
え、怖くないのかって? 平気平気。だって振り返らなかったら良いんだもん。
これからやってみるね。
◇◆◇◆
椎名さんから相談があると言われて。
私と葉月君は放課後、彼女に連れられて学校近くの公園に来ていました。
「わあ、祓い屋のお姉ちゃんだ」
「本当に、美樹姉ちゃんと友達だったんだ」
公園で待っていたのは、目を輝かせている小学生の女の子と男の子。
この子達には見覚えがあります。前に塀のシミに宿っていた悪霊から、助けた子達です。
男の子の方、宗太くんは椎名さんの弟だと言うからビックリ。世間って狭いですね。
「まさか姉弟そろって知世に助けられるなんてね。なんだか最近、あたしの周りって怪奇現象ばっかりじゃないの?」
「かもね。実はこういう事はよくあるんだよ。一度そういったものと縁が結ばれたら、似たような体験を何度もするようになったりするんだ」
「へえー、そうなんだ。今回の相談も怪奇現象絡みだし、本当にそういう運命になったのかもね」
葉月君の説明を聞いて、苦笑いを浮かべる椎名さん。けどまずは、本題に入らないと。
「相談があるのは、この子達なんですよね。宗太くんと、山本明美ちゃん」
「はい。実は僕達の学校で、変な噂が流れていて」
「同級生の真由子ちゃんって女の子が、サトルくんに連れて行かれて行方不明なの」
サトルくん?
葉月君と顔を見合わせます。行方不明って、穏やかではありませんね。
「サトルくんって、うちの師匠と名前が似てるけど、ひょっとしてアレかな? 何でも質問に答えてくれる、都市伝説の『サトルくん』のこと?」
「その話なら私も聞いたことがあります。電話で呼び出すと質問に答えてくれるけど、もしも話している途中で後ろを振り返ったら、どこかに連れて行かれる、でしたっけ?」
尋ねてみると、宗太くん明美ちゃんはコクリと頷きました。
「真由子ちゃん、昨日サトルくんに電話してみるって友達と話した後、行方不明になったの」
「次のテストに出る問題を教えてもらうんだって言ってたみたい。今警察が探してるみたいだけど、見つからないんです」
そんな、どうしてそんな軽い気持ちで、電話を掛けたんですか。昔同じクラスだったケンタくんといい、この前のこの子達といい、小学生って危機感が無いのでしょうか?
言いたいことはたくさんありますけど、まずは真由子ちゃんを見つけるのが先決ですね。
「葉月君はどう思います? やっぱりサトルくんと話す途中で、うっかり振り返ってしまったのでしょうか?」
「かもしれないね。この事は、上に報告しておこう。調べてもし本当にサトルくんの仕業ってなったら、祓い屋を派遣してもらえるからね」
「でもそれだと、時間がかかりすぎませんか? モタモタしてたら、取り返しのつかないことになるかもしれません」
すると明美ちゃんが「え、真由子ちゃん死んじゃうの⁉」って真っ青な顔になります。いけません、怖がらせてしまいました。
「もう、脅かしてどうするのさ。けど、トモの言うことももっともだ。上に報告はするとして、ここは俺達が」
「そうですね。今一番早く動けるのは、私達なんですから」
それに宗太くんと明美ちゃんは、私を頼って来てくれたのです。人任せにはできませんよ。
「けどさ、本当にサトルくんに連れて行かれたのなら、どうやって真由子ちゃんを探すのよ? サトルくんの家にでも行って、本人に聞いてみるの?」
椎名さんの疑問ももっとも。けど、サトルくんがどこに住んでいるか何て知りませんし。
けど話を聞いた葉月君が、突然叫びました。
「それだよ椎名さん! サトルくんに聞いてみたら良いんだ」
「えっ、あたし冗談で言ったんだけど。葉月君は、サトルくんの家知ってるの?」
「違うよ。俺達も呼び出しの儀式をして、サトルくんに聞いてみるんだよ。サトルくんはどんな質問にも答えてくれるそうだから、真由子ちゃんの居場所だって知ってるはずだよ」
なるほど、その手がありましたか。
もしも今回の件にサトルくんが関わっていなかったとしても、これならどのみち真由子ちゃんがどこにいるかわかります。
「ただこの作戦、一つ欠点があるんだ。もしもサトルくんを呼び出して、うっかり後ろを振り返っちゃったら、今度は俺達が危ないかも。けど、それでもやるよね?」
「もちろんです。後は私たちに任せて、椎名さん達は家で待っていてください」
危険が怖くて、祓い屋がつとまりますか。
宗太くんも明美ちゃんも、安心して待っていてください。真由子ちゃんは必ず、私達が見つけ出しますから。
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