妹side
第13話 兄への気持ち:妹
私がアイトプを始めてから、一カ月、二カ月三カ月と過ぎていた。ファンはケンさんのおかげで、日に日に増えて、もうすぐ千人を超えようとしていた。
アイトプを始めてから、私は毎日心が温かい。こんなにも、私の事を応援してくれる心温まるファンがいるのだと感動している。私は応援してくれる人の期待にこたえたいと、配信を決めている曜日と時間は必ず守った。テスト期間だろうが、学業がなんだろうが、なんとか空いた時間で勉強などはやり通し、アイトプの時間を作るために一生懸命に走っているのだ。
ケンさんという私のファン第一号は、毎日一番に私の配信に来て、必ずコメントをしてくれる。それが心強くて、とても嬉しい。もし、会えるのならば、どんなご馳走でも振舞うし、どんなものでも買えるだろう。たくさんお礼をしたいくらい感謝しているのだ。
そして、私の大切なファンのケンさんは、自分の妹と仲良くしたいと心から願う素敵な人だと知った。私が配信の中で行う相談コーナーでは、いつも妹さんを想った素敵なことばかり、コメントしてくる。
そんな兄がいたら、いいなぁ……なんて、私は何度も思ったが、うちの兄がそんな素敵な妹想いの兄ちゃんになることはない。だって、いつも嫌なことばかりで私をバカにしているんだもの。
しかし、ケンさんの妹さんへの想いや、相談を配信のコメントで聞いているうちに、私も、もしかしたら同じ気持ちなのかもしれないと、考えるようになっていた。
私は今、兄と仲が悪いのだが、本当は仲良くしたいのかもしれない。いや、あいつにそんな感情はあるわけ……と頭をぐるぐるさせながら、最近、自分の本心に、ケンさんは気が付かせてくれている気がする。
あんな兄だけれど、昔の楽しい思い出もいっぱいある。あんな兄だけれど、本当は笑って話したいと思う。あんな兄だから、無理だけど。
私の事、馬鹿にして、見下して。
私は兄が、あんなだから、きっと諦めていて、ケンさんと同じように、素直になれないだけなのかもしれない。
でも、いいのだ。私は今、アイトプが楽しいのだから。兄と仲良くなれなくったって、私は十分幸せだもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます