第49話 出陣


「……大丈夫、俺は大丈夫……」


 己に言い聞かせるように呟く。

 そして覚悟を決める勇気をニカナから貰うことに。


「ニカナよ……俺に勇気を分けて欲しい……」


 そう祈った瞬間、ニカナから虹色の光が放たれた。


「この輝きは……!? す、凄い……今の俺なら、絶対にイケる!」


 驚く間に虹色の光は消えてしまったが、それと同時に不安や緊張までもが消え、更に精神状態が安定していることに気づき、その一連のことに思わず声を出していた。



 ふと周囲を見渡すと、殆どの冒険者達はギルドから出陣しており、今ギルド内にいるのは僅か9人だけのようだ。

 それは、俺・セリーヌ・ミカゲ・ムツコ・シャカ・エリザ・3人のギルド職員達の計9人である。


「俺もそろそろ行くか……」


 そう呟くと、急に後ろから右肩をポンッと叩かれ声を掛けられた。



「おう、祈りはもう済んだのか?」


「あぁ、もう大丈夫だ!」


 後ろから声を掛けてきたのはミカゲであり、その問い掛けに対し、自身に満ちた表情で返答する。


「そうか……なぁ、俺に殺される前に死ぬなよ?」


「ははっ、お前にも殺されないよ」


 ミカゲからの冗談混じりな激励に冗談混じりの言葉で返すと、ミカゲは笑いながら「じゃあな!」と言ってギルドをあとにした。



「お祈りは済んだですか?」


「はい、もう大丈夫です!」


 ひょっこりとムツコが現れて声を掛けてきたので、自身満々で大丈夫なことを伝える。


「なら良かったです! この街を守れたら、今度こそスイーツを食べに行くですよ!」


「そうですね! 行きましょう!」


 ムツコに元気良く誘われたので、つい釣られて元気良く返すと、ムツコはニコニコと嬉しそうにしながら「楽しみです!」と言い放ち、魔狼を連れてギルドから外へ。



「お祈りはもういいの?」


「あぁ、心配掛けてごめん。だけど、もう大丈夫!」


「ふーん、そっか!」


 まるで順番待ちをしていたかのようにセリーヌが声を掛けてきたので、心配いらないことを伝えると、セリーヌは安心した様子を見せる。


「セリーヌ、気を付けてな?」


「えぇ、そっちこそ!」


 そんなやり取りをすると、セリーヌは出入口へ向かいながら軽く右手を振り、そのまま外へ出て行った。

 セリーヌを見送ったあと後ろへ振り返ると、シャカとエリザがこちらへ向かっていることに気づき、どうせならと俺の方から出向くことに。そして……



「それじゃあ、俺も行ってきますね!」


「あぁ、超気を付けてな!」


「まぁ、死なない程度に頑張ってね」


 合流したあとに出陣の意思を2人へ伝えると、シャカには明るく送り出され、エリザは少し捻くれながらも送り出してくれた。

 しかしエリザのソレは本心ではない。

 何故なら言った側から後悔し気不味そうな表情を見せたからだ。



「はい! じゃあ、またあとで!」


 2人への挨拶が済み、ギルドから出るために出入口へ向かう途中、3人のギルド職員達が遠くからお辞儀をしている姿が見えた。

 その姿を目の当たりにすると、エリザ以外の職員達にも認められたような気がして、嬉しさのあまり自然と笑みが零れる。


「よっしゃ、行くか!」


 一気に気分が高揚し、掛け声と同時に勢い良く出入口を押し開け、その勢いのまま西門へ向けて全速力で駆け抜けて行った……

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