349.神と女神と天使①
女神クロティアとなったメティス。
再度女神になる事を躊躇していたメティスだったが、彼女にも奇跡が起きた。
メティスは世界に自身の降臨を知らせ、世界の平和を促した。
本来自分が住まうはずだった『天界』は既に、存在しない。
『天界』となっていた島は……既に、大きな島に飲み込まれ、人々で賑わっていたからだ。
行き場を無くしたが、その島には彼女の相棒が住んでいたので、迷う事なく島に住む事となった。
そんなメティスに起きた奇跡その一。
なんと、身体が離れたクロウティアと、繋がりが保っていた。
本来ならクロウティアのスキルから生まれた自身。
しかし、過去の『時ノ女神』の頃の記憶を持っていた。
そんな彼女は、クロウティアの繋がりが断たれる事を不安がっていたが、実際断たれる事は無かった。
メティスは女神クロティアとしての活動を行いつつも、クロウティアのメティスとしての活動も可能となっていた。
クロウティアを驚かせようと、新しく獲得したスキルを見たメティスが、《天の声》で話掛けると、直ぐに気づいたクロウティアだった。
それからはいつものようにクロウティアの傍で、彼を見守る事にした。
そんな中、メティスに少し困る事が訪れた。
それはクロウティアとその妻達の事である。
世界が平和になりつつも、復興がどんどん進んでいる。
アカバネ島もとい『天空の島』もまた復興が素早く進み、落ち着きを見せているのだ。
――しかし。
それでもクロウティアは
いや。
動かなかったのではなく、知らなかったのだ。
既に友人でもある妻達は、どうしたら良いモノかと悩んでいたのだ。
それを知ったメティスは、クロウティアをコッソリ呼び出し、一冊の『本』を渡した。
決して、誰にも見られないようにと――――告げたその『本』。
クロウティアはその『本』を必死に読み終え、渡されてから数か月後。
決心を固めたクロウティアが遂に動いた。
クロウティアと常に繋がりを持っているメティス。
元々女神であり、人の営みなど、全く気にしてはいなかったが、友人でもあった妻達を
眠らないメティスは、夜の時間が少し困り、世界を飛び回るようにした。
闇夜に紛れ、世界の平和を願いながら飛び回る彼女は、いつしか、地上民達から『
そんな事を続けていた彼女に二つ目の奇跡が起きた。
その日も彼女は一人、夜の空を駆け抜けていた。
その時、彼女は眩い光に包まれ、その場から消えた。
◇
「ん……ここは?」
暖かい風が美しい黒髪を優しく撫でた。
そして、メティスの目の前には信じられない光景が広がっていた。
「えっ……う、嘘…………どうして?」
美しい女性二人は、満面の笑みで両手を広げていた。
メティスは直ぐに二人に向かい走った。
目がら溢れる涙など気にする暇もなく、メティスは二人の女性に抱き着く。
そして、メティスを抱き抱えた二人の瞳にも次第に涙が溢れ、三人は嬉し涙を流した。
「ほっほっほっ、ティアや、元気そうで何よりじゃ」
「アマテラス様!? 随分と
「そうじゃ! これも全てクロウくんのおかげじゃ」
「ふふっ、ではこの世界も?」
「勿論じゃ、あの子のおかげで、この『神界』に『想い』が溢れるようになったのじゃ、だから儂に出来る事を出来る限り、果たそうと思っておってのぅ…………遅くはなったが、ティアにも随分と苦労をさせてしまったからのぉ。儂の罪滅ぼしではあるが……どうにか、この二人を連れ戻す事が出来たから呼んだのじゃ」
優しい笑顔のアマテラスが二人の女性を見つめた。
「本当に嬉しいです! こうして……またシスとラスと会えるなんて……思いもよりませんでした」
「ふふっ、ティアは昔から泣き虫だったからね」
シスが優しくメティスの頭を撫でた。
「だって……二人が帰って来てくれるなんて……思わなかったから……」
「私達も『石』の中からずっと見ていたよ。長年、一人にしてしまって悪かったね、ティア」
「ううん、私は帰って来てくれただけで嬉しいわ。ラス」
こうして、一人きりの女神となったはずのメティスは、『神界』に帰還を果たし、二人の大好きな友人と再会した。
そして、最後にもう一つの奇跡。
――――それは。
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