345.魔神ノア
「これが女神と天使の因子を持つ者の力か……大したモノだ」
大きな爆発の跡から、ノアは何もなかったかのように現れた。
しかし、その表情には余裕があるようにはみえなかった。
それと、僕は一つ、彼の魔法に気づいていた。
「……その力。どうして貴方
「ふむ、まだ女神からは説明がなかったのか? 時ノ女神は薄情だな。自分の力くらい、自分の因子を持った者に教えてやっても良かろうに」
ノアはどうやら『時ノ女神』というものに執着しているように見える。
度々『時ノ女神』の名前が出ている。
そして、その女神の名前も『クロノティア』……僕の名前に酷似している。
「ふん、最後までだんまりか、それならそれで構わん。今度こそ、地獄に引きずり落としてやろう!」
ノアの言葉の直後、ノアの足元が崩れた。
そして、その中から現れたのは、天使の姿となっていたリサだった。
ソフィアが事前に触手を伸ばしており、ノアの一瞬の隙を付いた。
崩れた足場から現れたリサは一瞬の瞬間を利用して、ノアの足に短剣を刺した。
ノアの身体から禍々しい光が溢れ、大きく爆発した。
爆発寸前にセナお姉ちゃんがリサを救出しており、僕とソフィアで光属性魔法を盾代わりに対処した。
「ふぅ……危なかった」
「リサ、無理し過ぎだよ」
「うん……でもこれくらいしか方法が思いつかなくて」
「でもよくやったわ! あの短剣ならノアも無事ではないでしょうから」
ノアも恐らく『魔』に分類されるはずだ。
『魔』の者ならリサの聖なる短剣の効き目が非常に強いはずだ。
案の定、爆発の跡に見えたのは、人型のノアではなく、魔族形態になったノアだった。
そして、その姿に僕達は見覚えがあった。
「…………エデン・デュカリオン」
その姿は、前教皇と瓜二つ……いや、本人と言えるくらい似ていた。
「聖なる短剣か……やりおる……我をここまで追い詰める存在がいるとはな。あの天使共でも我に勝つ事は出来なかったというのに」
「ルシフェルさんから聞きました。貴方の強さも。貴方の力も」
実は、天使の試練を突破して少しして、天使さん達は宝石に戻らないといけないと言われた。
しかし、それが
最後に自分達が戦った最強の敵、魔王エデン・デュカリオンについて詳しく教わっていた。
魔王ノアと魔王エデン。
そして、ディグニティ様。
この三人は一体どういう存在なのか……。
「我をこの姿に戻したご褒美に、名を覚えてやる。貴様。名は?」
「……クロウティア」
「くっくっくっ、くはははは! なるほど……お前の『女神の因子』と『神の子』を受け継いだのには、そういう
「貴方達は一体どういう存在なのです? その姿……以前、僕が倒したエデン・デュカリオンにそっくりだ」
「そうであったな。お前がエデンを倒して
「ノア・デュカリオン……」
「そして、お前が倒した『エデン・デュカリオン』、『ディグニティ・デュカリオン』もまた我である」
「!?」
「我々三名は元々、
「元々……一緒……」
「そして、ノアが魔王として覚醒した。そして、魔王となったノア……つまり、お前がエデンと呼んでいる存在は、策略を繰り返し、遂には女神をも堕落させた。そして、女神の石を手に入れたノアは『魔神』となったのだ」
『魔神』という言葉に一瞬の寒気がした。
言葉だけで恐怖を植え付けられるような、そんな感覚だった。
「『魔神』となったノアだったが、最後の女神を堕落させる事が出来ずにな、その時に既に大きくなり過ぎた力は、ノアの身体だけには収まらなくなった。だから、『魔神ノア』は精神を三分割する事でその力を保とうとした。
元々人間だった頃の
本来のノアは、言わば、我ではない。我はノアが生んだ『最悪の産物』に過ぎぬのだ」
『ノア』『エデン』『ディグニティ』のパズルが少しずつ形を整うようだった。
「では、何故エデンは、元々の『ノア』という名を捨てて『エデン』となったのか……それは、己から『恐怖』を除きたかったからなのだ。恐怖を無くし、虚無となる存在を作り、本人は名を変え生き永らえる。実に元の
「そうやって生き残った貴方は、虚無と言ってましたが……どうして今の力が?」
元々、何も持たせず、ただ『ノア』という名だけを与えられた存在。
それが今の僕の目の前にいる存在のはずだ。
けれど、今、僕の目の前にいる『ノア』は全てを持っている。
それなら『虚無』である事に辻褄が合わないのだ。
「ああ、元のノアであるエデンは、一つ偉業を成し遂げた。それが『神』と等しい存在になる事だ。お前も既に会っているだろうが、あの『想い』の集合体の神は絶大な力を持っている。だが、そんな力にも必ず影が存在する。それを狙ったのがエデンだった。
エデンは最後の女神である『時ノ女神』を墜とす事に成功し、遂に手に入れたのだ……神にも等しい力、『
その名をノアが口にした瞬間。
世界が全て止まった。
そして、『ノア』と『クロウティア』だけを残し、世界は少しずつ灰色に染まっていき、何もない『虚無』の世界に変わった。
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