344.魔王ノア

「――――ディグニティ様」


「ふむ……また懐かしい名だ。そうか……女神の因子と神の子が一緒になったのは、あいつの仕業だったのか」


「……やっぱり、貴方はディグニティ様とは少し違う・・存在なのですね」


「いかにも、我の名はノア。人が生んだ――――最古最悪の魔王である」


「ノア……、ではディグニティ様は何処に?」


「あやつは既に数十年前に我が飲み込んでおる」


「えっ?」


「だが、あいつの残滓ざんさいが残っていたとはな…………これも運命・・というやらかも知れぬな」


「運命……?」


「お前が持っている『女神の因子』と『神の子』が合わさっているのが証拠であろう。かの時ノ女神の因子を」


「???」


「くっくっ、お前は知らなくて良いのだ。これは――――我々の戦いなのだよ。のぉ? 時ノ女神よ」


「時の……女神?」


「そろそろ出てきたらどうだ? ――――


 









 ――――――、クロノティア」











「クロノティア?」


「……そうか、そこまで力をっておるのか…………かの大女神も寂しさ・・・には勝てなかったとみえる。くっくっくっ、哀れ! 今一度、我が断罪してやろう!」


 ノアから凄まじい威圧感が放たれた。


「くっ! みんな!」


「「「「「神格化!」」」」」


 クロウティアを六人の天使が囲んだ。


「ほぉ! 天使共まで復活しておったのか? いや……なるほど、天使共は『因子』を渡したのか……面白い事をする」


「くろにぃ!」


「リサ……ありがとう。みんなもありがとう。――――戦おう。あの人を止めないと、この戦争はいつまでも続くから……ここで止めなくちゃ!」


「「「「「はい!」」」」」


 ノアの手からクロウティアと同威力の最強魔法が多数放たれた。



絶対防壁イージスの盾!」



 レイラの盾が全員を囲うバリアになった。


 バリアを襲う魔法の数々。


 爆音が終わると、玉座のノアが不敵な笑みで見つめていた。


「ディアナちゃん! 行くよ!」「はい!」


「剣聖技、神殺シノ剣グラム!」「神術、黒狼ノ神ミョルニル!」


 セナの黒い雷とディアナの白い雷がノアに降り注いだ。


 ノアが右手を上げた。


「破滅の光」


 二人の雷を真っ黒い光が飲み込んだ。


「神術、青龍偃月刀真ノ火神ノ大刀!!!」


 黒い光が消えると、赤青の炎がノアを包んだ。


「セイントバースト!」


 炎に包まれたノアに光の剣が刺さった。


 そして、光の剣から大爆発が起きる。



 広場は爆発により、壁や天井が吹き飛び、空が見えていた。



「堕落の腕」


 爆発の跡からノアの声が聞こえ、次第に黒い影の手が多数現れる。


「闇の手!」


 クロウティアの闇の手がノアの影の手を払う。


「レイラちゃん! あれをお願い!」


「はい! 任されました! 絶対防壁イージスの盾!!」


 レイラの力が左手の大盾に集中する。


 ――そして。


「剣聖技、神殺シノ剣グラム!」


「神術、黒狼ノ神ミョルニル!」


「神術、青龍偃月刀真ノ火神ノ大刀!」


 セナ、ディアナ、ヒメガミの剣戟が、レイラ・・・に放たれた。


 三つの剣戟を受け止めたレイラの大盾が、大きなうねりをあげた。


絶対防壁イージスの盾・解!!」


 大きなうねりは数倍に膨れ上がり、ノアに向けて放たれた。


 放たれた衝撃でレイラの装備はボロボロになり、大きく吹き飛ばされるが、直ぐ後ろからアリサが受け止めてあげていた。


【ご主人様! 全属性魔法!】


「分かった! いくよ!」


 ソフィアとクロウティアが空に浮かび、ノアにぶつかっていた四人の大きなうねりに向かい、全属性魔法を一気に放った。


 二重の全属性魔法は虹色に輝き、ノアに追撃した。




 ◇




 『天空の城』の上部より、大爆発が起きた。


 既に戦闘が終わった地上部では、上空をただ眺めるしか出来なかった。


 戦っているクロウティア達には全くの余裕がなく、地上に一切の『遠話』はなかった。


 しかし、指輪を通って彼らの危機を感じ取ったナターシャはある提案をした。


 それは――――彼らの無事を祈る事であった。


 地上にいた全ての者が、彼ら女神の無事を祈った。



 ――その事で、世界は大きい奇跡を起こすのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る