最終決戦編

331.決戦の日、開幕

 『決戦の日』。


 『アハトシュライン』が世界を崩壊させると告げた日だ。


 この日、世界は震撼した。


 世界を照らす太陽を大きなが塞ぎ、世界に闇が広がる。


 既に『避難所』周辺を守っていた多くの兵士達は、本来自分達を照らすはずの太陽を見つめた。


 そこに映っていたモノは……。




 ◇




【クロウ様並びに各位へ、敵の襲来を確認。場所は、上空。大陸から太陽を隠しております】


 ミューズの『全体遠話』が伝えられた。


 クロウティア達も空を見上げた。


 そこに映っていたモノ。


 それは、空を飛んでいる大きなお城だった。


 お城がある島は下に真っ黒な触手のような木の根があり、徐々に大陸を目指して降りて来ていた。




【分析結果、上空の島より植物の反応あり、『世界樹』に酷似しておりますが、性質は真逆と予想されます。結果――――上空の島が大陸に落ちた瞬間、世界が――――崩壊するモノと推測されます! これより目標を『天空の城』と呼ぶ事にします!】




 ◇




「みんな! これから飛び乗るよ!」


 僕は奥さん達を『闇の手』で掴まえて、空を飛んでいる島『天空の城』を目指した。



 僕達が辿り着く前、『天空の城』から大きな『ドラゴン』が現れた。


 黄色いドラゴンは、多くのモンスターを連れて僕達には目もくれず、地上に降りていった。


【ミューズさん! 『天空の城』からモンスター多数! 大型ドラゴンが一体と、その背中に強そうな気配の特殊なモンスターが複数いました!】


【クロウ様、かしこまりました! 地上は我々で対処します! クロウ様は『天空の城』をお願いします!】


 地上に向かっているモンスターの大軍を横目に僕達は『天空の城』に入って行った。




 ◇




 『天空の城』に辿り着くと、お城前の広場に一人のメイドが立っていた。


 メイドは僕達を見つけると、深く頭を下げた。


 取り敢えずは戦いにはならなさそうだから、メイドさんの前に着地した。


「お待ちしておりました。クロウティア様、わたくしは案内役を務めます『ベル』と申します」


「初めまして、クロウって言います。よろしくお願いします」


「これから皆様をご案内致します。皆様には……それぞれの『大罪の間』に入って頂きます。その『間』を抜けた先に、我らの王様がいらっしゃいます」


「分かりました。案内をお願いします」


「かしこまりました、こちらになります」


 僕達はベルさんに付いて行った。


 お城の中に入っても周りには誰の気配もしなかった。


 少し……寂しそうなお城だね。


 暫く城内の道を真っすぐ歩き続けた。


 そして、辿り着いたのは広い広場であった。


 広場の正面からは、七つの扉が見えていた。



「こちらが皆様に通って頂く『大罪の扉』となっております、これから指定させて頂いた『門』にそれぞれの方で進んで頂きます」



 ベルさんの指示で、僕達はそれぞれの扉を入る事となった。


 左から一番目『傲慢の扉』にはヒメガミさん。


 二番目『嫉妬の扉』にはセナお姉ちゃん。


 三番目『怠惰の扉』にはディアナ。


 四番目の真ん中『憤怒の扉』には僕。


 五番目の『強欲の扉』にはアリサ。


 六番目の『暴食の扉』にはソフィア。


 最後の七番目の『色欲の扉』にはレイラお姉さん。


 こうして僕達は分かれて、それぞれの扉から進む事となった。


 僕はみんなを見送るまで広場に残っていた。


 最後のリサを見送り、メイドさんのベルさんを見つめた。


「ベルさん、案内ありがとうございます…………それと、お手柔らかにお願いします」


「…………ご存じでしたか」


「ええ、恐らくは……ディアナの所でしょうか……」


「その通りでございます。ですが、クロウティア様。我々はご主人様の為に……どうしても世界を崩壊させたいのです。それだけは譲れません」


「……そうですか…………分かりました。僕が……彼の元に……『魔王』の元に辿り着いたら説得してみます」


「…………無意味だとは思いますが、上手く行くといいですね」


「……」


「ではわたくしもそろそろ向かうとします……もう二度と会う事はないでしょう……」


「……」


「それでは失礼します」


 僕達にとっては敵。アハトシュライン。


 本当は彼らと無事に終わればいいなと思うのは、甘い考えかもしれない……。


 誰かが犠牲になり続けないと終わらない戦いは……嫌いだ。


 僕は消えたベルさんからこれから入るであろう『扉』を見つめた。



 イカリくん……。


 君がこの先で待ってくれているのね……。


 僕は重い足取りで『憤怒の扉』を開いた。


 開いた扉の向こうからは怒りの感情が流れていた。

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