324.試練の日々

「本日もよろしくお願いします!」


「こちらこそ、宜しくお願い致します」


 今日もリッチお爺さんの案内で天使さんとの試練が始まった。


 奥さん達も僕と似た状況らしいから僕も頑張らないとね!



 今日も天使さんの激しい攻撃を防ぎつつ、余裕がある時に攻撃を試してみる。


 しかし、相変わらず全て弾かれたり、中には逆に利用されて攻撃されたりと散々な結果だった。



 それにしても……ここまで歯が立たない相手は……前教皇くらいなものだろうか。


 ――休憩時間。


 僕は『次元袋』から食事を取り出して並べた。


 一応リッチお爺さんと天使さんの分も用意している。


「なっ!? 私にも……くださるのですか?」


「勿論です! まだ二日目ですが、僕の為に頑張ってくださっていますから、ささやかですが食べてください!」


 天使さんが驚き、リッチお爺さんを見つめると、リッチお爺さんも骸骨顔のまま笑顔になり、頷いて返していた。


 僕達三人は食事を共にしていた。


「しかし、クロウ様はお強いですね」


「ん~、寧ろ、今まで天使さんみたいな強い方に出会った事がないので……たった一人いたんですが、彼は既に亡くなってますし……」


「ほぉ……クロウ様と対等に戦える存在が我々以外に……それは興味深いですね」


「ええ、どうやら『魔法無効化』を持っていたようで、全く歯が立たなかったんですよ」


「『魔法無効化』!?」


「はい、間違いなく『魔法無効化』ですね」


 天使さんとリッチお爺さんが顔を合わせる。


 二人とも何かを思ったのか頷いて僕を見つめた。


「クロウ様、そいつの名前はご存じですか?」


「はい、エデン・デュカリオンという名前ですね」


「……やはり…………生きてましたか……」


「えっ? 天使さん達と知り合いなんですか?」


「……そうですね。クロウ様が私の試練を乗り越えた時、お伝えしましょう。かの存在について、そして私達について」


「はいっ! 頑張ります! それに天使さん達の事も知りたいですから」


 ふふっと笑顔になった天使さんは、では早速参りましょうと話すと、やる気満々で準備してくれた。


「リッチお爺さん」


「どうしたんじゃ?」


「僕、絶対にこの試練に勝って、天使さん達の事、教えて貰えますからね」


「う、うむ!」


「だから、その時には、リッチお爺さんの事も教えてくださいね」


「――――ああ、勿論だとも」



 午後からの試練も相変わらず、ひたすらに攻めあぐねた。




 ◇




 あれから一か月。


 僕と奥さん達は毎日天使さんとの試練に励んでいた。


 あと二か月……。


 後悔はしたくないから、僕も必死に天使さんの攻撃を受け続けた。


 意外にも一か月も受け続けていると、僕も余裕が生まれ、天使さんの攻撃をいなすくらいには成長していた。


 奥さん達も最近は少し楽になったと言っていたから、この一か月の試練は無駄ではなかったね。



 そして、今日、初めて僕の攻撃が天使さんに直撃した。



 大きな一歩だとそう思った矢先、天使さんが「そろそろ本気出そうかな」とポロリ…………ごめんなさい、これからも頑張ります。




 ◇




 天使さんとの試練が二か月にも及んだ。


 ここ最近は天使さんの本気モードと対峙出来るようになっていた。


 最初、本気モードに手も足も出なくて、僕も奥さん達もだいぶ落ち込んでいたけど、ナターシャお姉ちゃんの応援のおかげで無事立ち直る事が出来た。



 ナターシャお姉ちゃんはというと、何と、僕の技神々の理想郷ジ・アヴァロンにより、今までなかった力に目覚めたそうだ。


 今までアイドルとしての努力がこういう形で実ったと凄く喜んでいた。



 更にダグラスさんから、各国の合同訓練が非常に順調に進んでいるそうで、中でも東大陸の女王様の活躍が凄まじいとの事だ。



 それと、僕達が頑張っている事を知ったセシリアお義母さんも頑張ってくれているとの事で、聖騎士さん達と連日稽古を行っているようで、その中に各国の将達も混ざり、毎日稽古を送っているみたい。


 中でも東大陸のツクヨミ達、スサノオ達が頭一つ分強いらしく、彼らとの稽古は非常に人気との事だ。



 それとアカバネ大商会による大規模避難施設が完成したとの報告がきた。


 その場所は現在『スライムランドパーク』になっているバレイント領の地下に建設された。


 三階分に分かれており、全大陸の住民達を収容する事が出来るその施設には、各国各街から『次元扉』で繋ぎ、来る『決戦の日』の前に避難完了の見込みだ。




 ◇




 ――――『決戦の日』とは。




 イカリくんが言っていた直接相手をしてくれる日の事だ。


 ……イカリくんは今頃、何を思っているのだろうか……。


 今でも……僕の事をんでいるのだろうか……。


 少しずつ、でも確実に近づいている『決戦の日』が僕に重くのしかかった。



 ねぇ、イカリくん……僕は今でも君を親友だと思っているよ……。


 でも僕は君を助ける事が出来ず、君に嫌われてしまったかも知れないね……。


 君はこの世界を崩壊させると言っていたね。


 僕は……。










 親友として、君を止めなくてはならない。

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