259.初めての賢者
どうやら普通の人は、賢者様を前にするのその威圧感で、普通には話せなくなるらしい。
と、隣にいたレイラお姉さんから教えて貰えた。
僕が何とも感じないのは、強いからだと教えて貰えた。
――因みに、隣にいたセナお姉ちゃんからも、『戦慄の伯爵』様とかも同じだと教えてくれた。
今まで、あまり他人から強い威圧感を感じた事はないからね。
しいと言えば、元教皇と戦う時くらいかな?
「それにしても、全く強さを感じないっておかしいね」
と言いながら、僕をぐるぐる回りながら隅々まで見つめるアレクサンダーさん。
「え、えっと……僕、そんなに強「うちの旦那様は滅茶苦茶強いわよ?」――――」
ちょっと!? セナお姉ちゃん!? セナ奥さん!? …………セナ奥さんはちょっと違うか。
それを聞いた二人の賢者様はまた「ほぉ」と声を漏らした。
「仮面の騎士殿がそういうなら間違いないじゃろう。しかし、他人に強さを感じさせない強さか……興味があるのぉ」
「成程ね。確かに全く感じさせないのも不思議だね」
「それはそうと、アレクお兄様?」
「ん?」
「クロウ様がさっきほどの『ハナビ』? というモノに興味があるようでして」
「『ハナビ』って何だ?」
「空にドカンドカンって打ち上げていた魔法ですね」
「あ~、あれか。あれは火属性魔法と風属性魔法を一緒に上空でぶつけて爆発させていたんだよ」
「ああ、なるほど! だから
僕の質問にアレクサンダーさんが笑い出した。
「そんなもん、一緒に撃てたら苦労しないよ! ハハハッ、出来ないからフライト爺さんに手伝って貰ったんだよ」
そうなのか?
僕は徐に右手に小さな火属性魔法と左手に小さな風属性魔法を燈してぶつけてみた。
さっき見た上空で爆発していた『花火』に似た爆発の仕方になった。
「へー、火属性魔法に風属性魔法をぶつけると、こういう爆発の仕方になるんですね~」
「「な、なななな、なんじゃそれぇえええええええ!?」」
アレクサンダーさんとフライトさんが、顎が外れるんじゃないかってくらい吃驚していた。
え!? 二人ともどうしたの!?
「おい、クロウくんとやら、それどうやったんだ! もう一度見せろ!」
「儂もじゃ、儂も見たいんじゃ」
二人に両肩を掴まれた。
それから一時間程、同じ花火魔法を延々と使わされた。
◇
「へぇー面白れぇ、
「そもそも多重魔法は構築を別々に出しておる、この
「それだけじゃねぇ、爺。本来なら交わる事がない魔法も、片手ずつにする事で、両手に変換出来るんじゃねぇか?」
「さすがアレク坊じゃ、儂も同じ事を思ったわい。こんな
「爺さん、単純と言っても、理論が単純なだけで、決して簡単ではないぞ。俺も今まで散々色んな魔法を使ってきたが、この片手詠唱は想像も出来んわ」
「そうじゃな、片手にする事で威力も半減させる事も出来るのがまた凄いのぉ」
「そこよ! 俺が考案した『広範囲スタン』も片手にすればもっと広く撃てそうだ」
「そもそも同じ魔法を片手で撃てるのか?」
「おお! 爺さん、良いとこ、目が付くね! そっか、本来なら一つの魔法を両手で撃っていたけど、一つの魔法を二つ片手ずつ撃てるのか!」
「うむ、言うのは簡単だが、難しいのぉ」
「そんなもん、練習すりゃいいだろう! 爺さんは後先短いから俺に任しとけ」
「はん! 若者に後れを取る程、歳を取った覚えはないわい。儂が先に完成させてやろう」
「いんや! 俺が先だ!」
そう言いながら、二人は魔法練習場に走り去ってしまった。
……お二人が何を言ってるのが全く理解出来なかった。
僕、魔法の
あ、でも分かった事はあった。
片手ずつに同じ魔法を燈す。
うん、これなら簡単だね。
――――これをして何がどうなるのかは、よく分からない。
◇
◆レイラ・インペリウス◆
クロウ様をアレクお兄様に紹介して、『ハナビ』となるものを教えて貰ったら、クロウ様ったら、一瞬で使えるようになっていました。
更に、その規模も、物凄く小さい。
魔法ってあんな小さく使えるのですね。
一時間程、クロウ様とお兄様とフライト様の魔法講義会が始まり、最終的にはアレクお兄様とフライト様が何やら掴んだようで、色々仮説を並べられました。
私は魔法は使えませんが、理論はある程度勉強していたので、何を話しているのかくらいは理解出来ました。
ただ、あれは普通の人には理解出来ない会話だと理解しました。
そもそも、魔法を片手で使うのが既に人離れしていますから。
お二人が練習のため、練習場に走って去られたあと、ポカーンとしていたクロウ様が両手にそれぞれ同じ魔法を展開なされました。
ああ…………お兄様とフライト様があれだけ難しいと語っていた事が、クロウ様にはいとも簡単に出来るんですね。
これは……ますますクロウ様が素晴らしいお方だと分かります。
ああ……。
クロウ様……。
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