247.卒業
遂に学園も最後の日を迎えた。
校長先生からは、おでこに汗がにじみ出るくらい緊張した面持ちで、どうか最後のパーティーに出てくださいと嘆願された。
そこまでお願いされる事なの!?
◇
◆学園アルテミス、卒業パーティーのとある令嬢◆
私はグランセイル王国のとある子爵令嬢だわ。
学園ではそれなりに有名だったし、人気もあったと自負しているわ。
そんな私には、一人の男性の方をずっと恋焦がれていたわ。
本日はその方と会える最後の日。
最近流行りのアカバネ大商会の豪華なパーティードレスを身にまとい、私はあのお方が現れるのを待ちに待った。
そして、参加者の名前の号令と共の登場が、最後の人の番となった。
「クロウティア・エクシア様!」
遂に彼の登場の号令だわ。
でも――そこで私の想像もしていなかった出来事が起きたわ。
「――――と、アリサ様!」
号令係は、二人の名前を告げたのだわ。
卒業パーティーに一つ、ルールがあるわ。
パーティー出席者は登場時、名前を告げられる。
それは、初めて会う人に失礼に当たらないように、という計らいもあるけど、実は違う。
後になればなるほど、権力がある家柄なのだわ。
もちろん、今年最後の人はクロウティア・エクシア辺境伯令息様。
更にもう一つのルール。
それは――――、一緒に登場する人、つまり「誰々さん
二人は
会場に現れたクロウティア様は――それはとても――――美しかったわ。
隣で一緒に登場したアリサさんも……とても綺麗だわ。
あの二人を見た私は、ああ……私なんかが付け入る隙など……なかったんだと確信したわ……。
一通り、色んな方と談笑した後、私はクロウティア様とアリサさんに挨拶をしたわ。
ほんと……近くで見るとますます美しいお二人だこと…………。
私はそんな二人にありきたりの短い談笑をし――――、一度も伝える事が出来ないまま、私の恋は終わったのだわ。
◇
年が明けて、僕も晴れて十五歳となった。
そして先日、僕は学園を卒業した。
卒業して一番最初にした事は、イカリくんの実家を訪れる事だった。
本来なら……もっと早く訪れたかったのだけど、イカリくんから生前、実家には決して行って欲しくないと言われていたからだ。
――十五歳として、大人になった僕は、亡くした親友の過去に向き合いたかった。
あまり多人数で押しかけるのも、悪いと思ったので、僕一人でハイランド家を訪れた。
この日。
僕は自分が想像だにしなかった現実を目の当たりにした。
◇
ハイランド家に入って、イカリフィアくんの友人と話すと、メイドさんに案内され、貴賓室で待たされた。
貴賓室はとても整理整頓されており、部屋全体も非常に綺麗でとても好印象を抱いた。
暫くして、入って来たのは、五十代程の男性だった。
鋭い目に形よく揃えた髭が印象的な方だった。
「初めまして、私がハイランド家の当主、ルイトと申します」
「初めまして、イカリフィアくんの友人、クロウティア・エクシアと申します」
「!? え、エクシア!?」
「はい、エクシア辺境伯の三男です」
「そうでしたか……はは……まさかこれ程の方が訪れようとは…………」
どうやら当主ルイトさんは、僕の事をイカリくんから聞いてないようだ。
そして、僕達はソファに座った。
「それで、エクシア様――「クロウと呼んでください、私が偉いわけではないので、普通でお願いします」、そうですか……分かりました。それでクロウさんはどうして、うちにいらしたのですか?」
「はい――――、どうして先日の
実は、先日カナンの町を作る前の、多くの人が参列した鎮魂の儀式。
その中に当事者であるイカリくんの
「成程……そういう事でしたか……、失礼ですが、クロウさんは、うちのイカリフィアとはどれ程のご関係で?」
僕はルイトさんを真っすぐ見つめ、迷いない言葉で話した。
「世界で一番の親友だと思っております。今も」
それを聞いたルイトさんは驚き、少し考え込んだ。
「あまり家の事を他家に話すのは…………したくないのですが、クロウさんはここまでいらっしゃるほどに、イカリフィアの事が知りたかったのでしょう……分かりました。どうして私
「それはもちろんです。私も自分の親友の家に迷惑を掛けたくはありませんから」
それからルイトさんは、家の事、イカリくんの事を話してくれた。
イカリくんがどうして実家とは関わらないで欲しいと言っていたのか……僕はその実情を知る事となった。
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