193.掃除と言えば

 結婚式の次の日は……さすがに全力の休みにしたかった。


 でも残念な事に、そうもいかなくて……。


 何故なら、結婚式の後片付けが必要だったからだ。


 なので、次の日、僕達は皆で後片付けを手伝った。



 エドイルラ街の広場に残された花びらが多く散らばっていた。


【ご主人様! 花びらはソフィアに任せて!】


 そう話したソフィアは、分体百体と共に、花びら回収スライム軍隊になっていた。


 人の足に踏まれても、問題ないので広場中にスライムだらけでも、誰も気にしなかった。


 それを見ていたリサは、


「くろにぃ、ソフィアちゃんが掃除機みたいだね」


「あ~、あのテレビで見たあれか~、確か――――ゴミを吸うんだっけ?」


「うん、確かそんな感じだったような?」


 そんな話をしていると、セシリアさんも話に入ってきた。


「クロちゃん、アリサちゃん、向こうの話?」


「セシリアさん、はい、ソフィアが掃除機みたいだねって」


「そうだね~、実はね、あの後、掃除機が進化してね、今のソフィアちゃんみたいに丸っこい掃除機が一人で掃除してくれるようになったんだよ?」


「本当に!? 凄いね!」


「うん! 一人で掃除してくれるのか! う~~~ん」


 ソフィアみたいな掃除機……。


 寧ろ、ソフィアが掃除機??


 そう言えば、この世界に掃除機ってないよね?


 確か、昔作った『使用者がゴミと認識したモノを拭き取り、異空間に送る雑巾』なら作ったよね。


 あれは今でもアカバネ商会の清掃隊で使われているはずだ。


 今思えば、あれが掃除機の代わりになっていたのね。


「あ、掃除機、作ったかも」


「え!? くろにぃ、もう作ってあったの!?」


 リサとセシリアさんが驚いた。


「ほら、あれが掃除機だよ?」


 僕が指を指した所では、アカバネ商会の清掃隊員が、例の雑巾で床を拭いていた。


 拭いてすぐに綺麗になっている。


「あの雑巾で拭いたらゴミとして判断したモノを異空間に送るんだよ」


「――――、えっと、くろにぃ? どこからつっこんで欲しい?」


「ええええ!? 何で!?」


「まず、ゴミとして判断するのって何?? 異空間に送る?? どうやって??」


「え? ほら、いつも異空間から食べ物取り出したりするじゃん? そんな感じでゴミを『ゴミ専用スペース』に送ってるよ?」


 リサとセシリアさんがジト目になった。


「アリサちゃん……、クロちゃんの常識に合わせちゃダメよ?」


「お母さん……、うん、大丈夫」


 何で二人で納得してるの!?




「次は自動で動く雑巾掃除機を作ろうかな~」


「サラッと凄い事言ってる……」


「でも便利そうね、自動で掃除してくれるならとても助かるわね」


 う~ん、まず雑巾をどうやったら動かせるかな?


 と、そんな事を思っていると――


「こら! そこの三人! 掃除しなさい!」


 清掃隊のエプロンとホワイトブリムメイド用カチューシャをして、ほうきを持っていたセレナお姉ちゃんだった。


 そう言えば、リサとセシリアさんもそうだね。


 みんな似合っている。


「セレナお姉ちゃん、今、掃除機を作ろうとして」


「そうじき?? 何よそれ」


「えっとね、その雑巾が一人で掃除してくれるモノかな?」


「え!? この雑巾が一人で??」


「うん、でも雑巾を一人で動かせる魔法が思い当たらなくて……」


「いや、くろにぃ……魔法ってそんな事に使うモノじゃないと思うんだけどね……」


 リサがボソッと呟いた。


「ふ~ん、動かせないんなら、集めて貰えばいいんじゃないの?」


「え? 集めて貰う? どういう事? お姉ちゃん」


「ほら、先日、森で木々を引っこ抜いたみたいに、風属性魔法でゴミを一か所に集めれば、後はそれを回収すればいいんじゃないの?」


「はっ!? 雑巾が動くのではなく……ゴミに動いて来て貰うのか! ……うん、ちょっと試してみようか」


 僕は出来る限り弱く、風属性魔法を周辺に使い、一か所、つまり範囲の中央に集める事にしてみた。


 結果は――――。




 大成功だった!




 風属性魔法に乗った軽いゴミが床から少し浮いて、一か所に集まった。


 では、次はそこに回収用箱を置いて、その中に入るようにしてみた。


 数分後、風属性魔法によって集められたゴミで箱が一杯になっていた。



「よし! 動く掃除機ルンバ?の完成だ!」


「クロウ、動いてないわよ?」


「うん、動いてはいないね」


「クロちゃん、ゴミから来たんだから、動くのは違うと思うわ」


 うっ……皆して……。


「じゃあ、もっかい! 吸引ゴミ箱ルンバ?完成!」


「掃除じゃなくなったわ」


「掃除機は何処に……」


「名前が……ゴミ箱に……」



 三人のボヤキは置いといて、僕は新しい掃除機? を作る事に成功した。


 名付けて『吸引型ゴミ箱』だ。


 一時間に一度、勝手に周辺のゴミを吸引する箱を作った。



 後日、これを商会に披露したとき、ナターシャお姉ちゃんから、可愛く作ろうと言われて、元となったソフィアと似た形になった。


 丸っこくて、置いておくだけで一時間に一回、頭の蓋がパカッと開いて、周辺のゴミを吸引する。


 蓋はいつでも開けられて、中のゴミを捨てやすくした。


 ソフィアからは形を自分に似せてくれて、物凄く感謝された。


 ううん、寧ろ、アイデアをくれて、こちらこそありがとうね!



 その後、アカバネ商会の『アカバネ魔道具』の一つとなり、価格も安かったため『エアコンキューブ』よりも多く貸し出しになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る