187.許嫁の真相
「まず、僕に最初の婚約話しが来たのは、五歳の時だったよ」
五歳!? そんなに早く!?
「でもその年に、クロウくんが生まれ、家族が気が気でなかったから、婚約の話しが流れたんだよ」
え!? 僕のせいで……ごめんなさい……。
「ううん、寧ろ、クロウくんには感謝してるよ。おかげで五歳から許嫁が出来なくて済んだからね」
ううっ、それは良かった事だったのかな……。
「それから、誕生日会でも多くの婚約話しがあったけど、そのどれも僕ではなくエクシア家の長男としての申し込みだった」
ライお兄ちゃんはこれからエクシア家の当主となるのだから……当たり前と言えば、当たり前の事だったのかも知れない。
「ふう、本当は僕もクロウくんみたいに、外で自由に――――なりたかった時期もあったよ」
ええええ!?
「僕もクロウくんみたいに魔法で何処でも行けたら――――何て事も考えた事もあったっけ」
そ、そうだったんだね……。
「でもお父様やお母様がね、飛べなくても、ちゃんと出来る事は沢山あると言ってくれたの。それからエドイルラ街を歩いてみたら……うん。分かった気がしたんだ。だから僕は強くなると決めて、今ここまで来ているんだと思う」
ライお兄ちゃんは僕の補助魔法で強くなった――――しかし、それだけで簡単に強くなる程、世界は甘くないはずだ。
何故なら、アカバネ商会で子供達にどれだけ補助魔法をかけても、補助魔法無しのディアナに手も足も出ていなかったからだ。
補助魔法で単純にステータスやバリアが掛かっていても、戦いでは経験が最も効果をもたらす。
バリアは決して無敵になるわけではない。
元々、ライお兄ちゃんの『剣士』と通常の『上級剣士』では、そのくらいの差があるはずだ。
補助魔法で『上級剣士』に食らいつけているのは、僕の魔法のおかげ
ライお兄ちゃんが日ごろ、どれ程稽古を頑張って来たのか、今の訓練を見て、分かっていた。
「そして、アカバネ島が出来て、色んな人達と沢山出逢い、色んな話しを聞いて、自分がどれ程小さい者なのか、分かったんだ」
ライお兄ちゃん……。
「だから、学園時代には全ての婚約話は断っていたよ。僕はただ強くなりたかった。守れるためにね」
ライお兄ちゃんは何処か懐かしむ表情をしていた。
「そして卒業して、お爺様に誘われ、ここに来て、僕はますます訓練に身が入ったんだ」
卒業してからの方が、逞しくなったように見えるしね。
「そんな時かな、レオナという女性に婚約してくれと言われたんだよ」
あ、そこでレオナさんが現れ――――、って!? ここ最近の話しじゃん!?
「そそ、ここ最近の話しだよ。そんな彼女には、僕は自分より弱い女性には興味がないと言ったら、決闘を申し込まれてね」
ええ!? 決闘!?
「もちろん、そんな深い意味の決闘ではなかった。僕が勝ったら素直に諦めて貰う、僕が負けたら許嫁になってあげる、そんな事だったんだよ」
内容はとても大事な決闘に見えるけどね……。
「そして、ボッコボコにされて負けた。だから彼女は僕を許嫁と呼ぶようになったの」
ええええ!?
ライお兄ちゃんって『上級剣士』にも負けず劣らないはずなのに!?
ボコボコにされたの!?
「ああ、今度、クロウくんも相手して貰ったらいいよ、中々面白い戦いになると思うから」
そうなんだ! 今度お願いしてみようかな。
「こほん、それで、僕の許嫁になったのはいいが……結婚出来ないと彼女には伝えたよ」
え!? どうして!?
「――――――、僕には既に好きな人がいるからね」
えええええ!?
初耳なんですけど!?
「あはは、僕もまだお父様にしか相談していないからね、それにまだ、本人にすら伝えてないからね」
えええええ!?
さっきから驚く事ばっかりなんだけど!?
そんな話しをしていると、レオナさんが入って来た。
「そろそろ、わたくしも混ぜてくださいまし」
「レオナ、悪かったね」
「良いですわ、それで? さっきから何やら楽しそうな話しをしておられますが、どんな話しを?」
「ふふっ、僕の
「ああ、あの
えええええ!?
許嫁さんが、別な人に告白するの知ってるの!?
「そりゃ、最初、許嫁になるのに、その約束から取り付けたからね」
「ええ、わたくしはライフリット様の
「あはは、レオナは手強いな」
僕は良く理解出来てなくて、バッドステータス『混乱』状態になっていると、ライお兄ちゃんがちゃんと説明してくれた。
「僕はレオナに負けて、許嫁になってくれと言われた時に気づいたのさ、本当に好きな人は……レオナには申し訳ないけど、違う人だって事に、そしてレオナからは、それでも良いからもし告白が成功したら彼女が第一夫人で、自分が第二夫人で構わないと言ってくれたの。
でも、もし振られたら、その時はレオナの事をちゃんと第一夫人として見てくれれば良いって……これ程素晴らしい女性にそこまで言われたんだ。断われるはずもないだろう?」
それを聞いたレオナさんも満面の笑みだった。
自分は第二夫人でも全然構わないと言っていた。
そして――――。
「だから、僕は、明後日の休日。彼女に告白しようと思っているよ」
更にライお兄ちゃんから、想像もした事なかった言葉が飛び出た。
「アグネスさんにね」
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