126.実は超高難度魔法
次の日。
「何だか学校で寝るなんて新鮮だね」
「ん? そうだね、昔は想像もした事なかったかな」
「私も」
リサと僕は『ロード』クラス棟三階のテラスでそれぞれの棟を眺めていた。
「ねえ、くろにぃ?」
「ん?」
「セレナ先輩とディアナちゃんに……、あれ秘密にしてるでしょ」
「えっ? あれって何?」
「職能よ」
「あ……そう言えばそうだった。何だか子供の頃に『賢者』って言っちゃったから、ずっとそのままにしてた」
「意外だね?」
リサが首を傾げた。
「何が意外なの?」
「だってさ、くろにぃってセレナ先輩もディアナちゃんも、エクシア家の家族みんな、すっごく信頼してるじゃん?」
「あ~、……うん、
「何で今はなのよ」
「だって、僕生まれてからずっと
そう――実は、明日目が覚めたら、またあの世界に戻るのではないかと不安になっていた。ずっと。
「でもね、先日みんなで宿に泊まった時があってね。あの時、その不安に負けそうになったけど、みんなのおかげで僕はここに生きているんだって分かって、凄く安心出来たんだ」
「それで信頼出来たの?」
「それもあるけどさ、やっぱり一番大きいのは……、リサかな」
「え? わたし?」
リサの目が大きくなった。
「だって妹と言っても前世だし、今の僕の家族が受け入れてくれなかったら……と思っていたけど、でもちゃんとお姉ちゃんもディアナも両親も商会の皆さんも、ちゃんと僕を――僕達を見てくれているんだなーって、思えたんだよ」
「そっか……、だから漸く
「うん、だからやっとかな?
「あの魔法……ね、そもそも、あれ魔法じゃないでしょう?」
「うん? そうだね、あれは『魔法』じゃなくて『技』だよ」
「そっか……やっぱりあれ『技』だったのね、何となくそうだと思ったよ」
「それがどうかしたの?」
「ええ!? くろにぃ……って『技』が何かって分からないの?」
「え?? 魔法と何か違うの?」
「えええ!? 全然違うよ?」
「えええ!? そうだったの!?」
リサと僕はお互いに吃驚していた。
そんなお互いの顔を見てるとふと笑いが込みあがって来た。
「ぷっ、あはは、あはははは」
「ふふっ、あはは、あはははは」
それから暫くリサと笑い合った。
「なに朝からイチャイチャしてるのよ」
後ろから不満そうなセレナお姉ちゃんの声がした。
そこには頬っぺをぷくっとさせて拗ねているお姉ちゃんの姿がいた。
「え!? い、イチャイチャシテナイヨ!?」
あ……お姉ちゃん? 何でジト目に?
「くろにぃ……私トハ……遊ビダッタノネ……」
ちょっと!? リサさん!?
◇
「あはは~ごめんってば! くろにぃ!」
大笑いしながら謝るリサ。
僕の左頬が赤くなっている。
お姉ちゃんから「そんな弟に育てた覚えはないわ!」と言われながらグーで飛ばされたのだ。
リサは悪ノリするから……。
その後、誤解だよってリサから説明したらお姉ちゃんの機嫌も良くなった。
それはそうと、リサから言われたように、僕の職能の事を家族にも話しておいた方が良さそうだと思った。
なので、次回の家族会議と言う名の家族で旅館に泊まる時に話そうと思う。
「クロウ、今日はこのままアリサちゃんのレベルを上げに行こう!」
「うん、分かった!」
「お、お願いします……」
何だか、リサはレベルの事となると落ち込む。
「アリサちゃん? 何処か具合悪い?」
ディアナがリサを心配した。
「えっ!? ううん! 大丈夫だよ!」
「ん? 『リフレッシュ・ヒーリング』」
リサに『リフレッシュ・ヒーリング』を掛けた。
「ちょっとそこ、さらっと超高難度回復魔法を簡単に使わないの!」
リサがすぐ反応した。
あれ? 超高難度回復魔法? でもこれって中級回復魔法だよね?
「え? この魔法って中級回復魔法でしょう? 超高難度??」
「え……、くろにぃ? それ中級回復魔法だけど……超高難度魔法なの知らな……い?」
「へ? だってこれお母さんも使っていたし……」
「フローラ様って……、大陸でも五人もいない『リフレッシュ・ヒーリング』が使える方だからね……」
「え? 『リフレッシュ・ヒーリング』って中級回復魔法なのに使えない人多いの?」
「あ……そこからなんだ……うん、『リフレッシュ・ヒーリング』って中級回復魔法ではあるんだけど、今まで使えた中級回復魔法使い以上でも、一割も使えない超高難度魔法だよ? 中には上級回復使いの『司教』でも大半以上使えないくらいに超高難度魔法だよ……」
し、知らなかった……。
「だってさ? 傷を癒すのと病気を癒すって、回復魔法の中では寒暖差が凄いからね……」
そ、そっか……なんかごめん。
「それにしても、アリサちゃんは回復魔法がとても詳しいのね」
「確かに凄く詳しいわね」
「えっと、それは私のお母さんが凄く強い回復魔法の使い手だから」
「セシリアさんって『現聖女様』と呼ばれてるものね」
ばつが悪そうな顔をしているリサに対して、ディアナの曇り一つない笑顔が眩しかった。
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