124.検証
あれから数時間が経ち、外はすっかり暗くなっていた。
そして、漸くディアナが目を覚ました。
「ディアナ! ごめん!」「クロウ様――申し訳ありません」
僕とディアナちゃんは同時に謝った。
「え? 何でディアナが謝るんだよ……」
「私が不甲斐ないばかりに……クロウ様の貴重な魔法に耐えられず申し訳ありません……」
「そんな事ない! 寧ろ何も考えず使った僕が悪いんだ。だから本当にごめん!」
「いいえ、私が……」
「いいや、僕が!」
……
…………
「こらっ! 二人共いい加減にしなさい! お互いに謝ったからそれで良し! 後はその先の話しをしましょう」
セレナお姉ちゃんの言葉に僕とディアナは小さく頷いた。
「それで、ディアナちゃん、先程はどんな感じだったの?」
「はい、クロウ様から魔法が掛かった瞬間、頭が割れそうでした」
「確か――魔法が掛かった瞬間に悲鳴を上げていたものね……」
「はい……」
「それで、クロウ? あの魔法って最大に掛けたとか言っていたけど、調整は効くかしら?」
「うん? ……一応補助魔法と似たモノだから調整は出来るよ」
「そう、では次は私に一番弱いの掛けて頂戴」
「え!? お姉ちゃんに?」
「そうよ、私に! それとも
「えっ!? 私でも良いですよ?」
「いえ、ここはまた私が……」
「「ディアナちゃんだけはダメ!」」
むむむっ……お姉ちゃんとリサ…………。
「分かったよ、お姉ちゃんお願いします」
「うん!」
「それじゃ……行くよ?
まずは全能力値を
お姉ちゃんの身体から淡い赤色の光が放たれた。
僕の時のような威圧感は全くない。
そして、お姉ちゃんにも何も起きなかった。
「ちょっと待ってね! ――――、うん。クロウ、ちゃんと
「よし、成功だ。ではここから徐々に上げていくから、少しでも違和感感じたら、すぐ言ってね?」
「分かった!」
それから僕は数十回、お姉ちゃんに
◇
あれから全ステータスを九千百掛けた時、少し違和感があるとの事で一旦中止した。
「九千までなら全く問題なかったわね」
「そうか……何か法則でもあるのかな?」
それを聞いたセレナお姉ちゃんは、何かを閃いたような顔になった。
「この魔法の法則……うん、分かったかも」
「え!? お姉ちゃん、本当?」
「ええ、私の職能って『剣聖』でしょう?」
「うん」
「職能によって各ステータスの補正値が違うのは分かるよね?」
「うん」
各職能によって上がるステータス値が千差万別だ。
魔法使いの場合は、力や速さは上がりにくいが魔力が上がりやすい。
戦士の場合は、力と速さが上がりやすくて魔力は上がりにくい。
その全て、
「それじゃ、クロウ、『剣聖』の力の補正値は分かる?」
「え? 全然分からない!」
「ふふっ、分かったわ。『剣聖』力の補正は四十五倍なの、クロウの『賢者』の魔力の補正値もそれに近いはずよ?」
え? ……ごめん、お姉ちゃん、僕……『賢者』じゃないから知らなかった。
「そして、私のレベルがね、今丁度二十なの」
「う~ん、レベル二十で四十五倍――人はレベルの数だけ全ステータスが十ずつ上がるから、レベル二十で全ステータスが二百。それに補正を四十五倍すると……
「うん。つまり、その魔法は恐らく、全てのステータスの中で一番高い数値の
「うん! そうかも知れない! そもそも他の低いステータスだとしたら、全ステータス九千も上昇させられないし」
「そういう事!」
「ありがとう! セレナお姉ちゃん!」
いつも困ったらセレナお姉ちゃんだ……本当にありがたい!
「そう言えば、最大って幾つ上げられるの?」
「ん~、三万までかな?」
「「「三万……」」」
本当は他のステータスも細かく決められるんだけど、大変だから全ステータスを同じ量で上げた方が僕は楽だからね。
「クロウ様、今度は私に、もう一度掛けて頂けませんか?」
「え?」
「先ほどの仮説が正しいのなら、私にもう一度機会を与えてください」
ディアナが真剣な目で語ってきた。
「分かった……でも少しでも違和感を感じたらすぐに言ってね?」
「ありがとうございます。私は一万二千でお願いします」
「えっ!? セレナお姉ちゃんより高いの?」
「クロウ……、彼女は銀狼族なんだから、人族と種族値が違うのよ? 私より力か素早さが高いと思うわ」
「あ、そっか、ディアナって獣人族だった! 偶に忘れるんだよね」
あんな可愛い耳と尻尾だけど、毎日一緒にいると、獣人族である事を、たまに忘れてしまう。
「あれ? くろにぃ……昔あんなに動物好きだったのに?」
「えっ……それは……」
「ん? 何かあったの?」
「えっとね、以前『スレイヤ』のミリヤお姉さんの耳をモフモフしたら凄く怒られて……それからしないように我慢しているの」
「――ッ!? クロウ様!? 我慢なさっていたのですか!
「はうっ!? ご……ごめん、我慢しなくちゃって……でも僕そんなに見ていたのか……」
ああ……自覚がない……あの耳をこう……モフモフしたぃ……あっいけない。
「クロウ様! 私はいつでも良いので好きに……好きになさってください!」
ディ……ディアナ……。
うう……この子は僕のため……なんて優しい子なんだ。
そんな僕をジト目に見ているお姉ちゃんと妹。
「ふ~ん、私、
「くろにぃ……獣人に生まれなくて、ごめんね?」
「ええええ!? ゼンゼンキニシテナイヨ!?」
拗ねたお姉ちゃんと妹が最高に可愛かったのはここだけの秘密だ。
それと、なでなでされてる時のディアナも滅茶苦茶可愛かった。
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