第83話 新しい島から

 あれから数か月が経ち、四度目の『アカバネ祭』が行われた。


 四回目ともなると、みんな慣れた手つきで準備を進めていた。


 それと売上にも大きな変動があった。


 前回一位から十位まで独占したギルド『アマゾネス』達が上位六位から十位までしか入れなかった。


 では、上位一位から五位は誰が入ったのか。


 それは何と、エクシア家の当主と奥様、そこに連なる貴族三名だった。



 何故そうなったかと言うと……。


 三回目の『アカバネ祭』後に魔道具の賃貸問題から王国領内の税金無しになったのだけど、その事により今まで買取に重きを置いていた商売が、今度は販売に重きが置かれた。


 それに伴い、これからは購入してくださったお客様にも『プラチナカード』の点数が貯まるようにした。


 それで起こった事が、アカバネ商会の商品を爆買いする騒動だ。


 しかもアカバネ商会の販売品って超高級品や高級品を扱っていて、そう安い物ではない。


 だからこそ、それを貴族が買い占めたのだ。


 主にエクシア家が。


 何でかっていうと。


 最初お父さんは大反対だったが、それではアカバネ商会とエクシア家で結託して堂々と王国を敵に回す事に見えかねないとダグラスさんの説得で、お互いがあくまで利益のために協力していると強調するために一定割合を支払う事になった。


 その納税金額により、今までの大陸史上で最も高い納税額となった。


 お父さんはこのままうちに貯めていては領民のためにはならない。なら利益を出させるために手っ取り早く高額品を大量に買おう。そう決めたそうだ。


 お母さんはアカバネ商会で売っている超高級品の農産物に目を付け、大量に購入し、各地の友人貴族に贈ったりした。


 その結果、あまりの美味しさから王国全土の貴族から注文が殺到。


 超高級品農産物は一般領民達が買わなくても全部売られるようになった。


 そうなると問題になるのが、『プラチナカード』の点数問題だ。


 あまりの購入額にエクシア家が断トツ一位になってしまったのだ。


 それから半年間、エクシア家やその友人貴族で独占、上位一位から五位を圧倒的な差で独占したのだ。


 ちなみに、お父さんお母さんは『プラチナカード』の事を知らず、執事のサディスさんがこっそりとお父さんとお母さんの分二つをエクシア家として契約していたらしい。さすが名将サディスと言われる手腕だ。



 アカバネ商会としてはあくまで全員平等にしたいと、今回の貴族であっても参加可能にした。


 今回上位十一位から二十位も取ろうとしたギルド『アマゾネス』は他の冒険者達からも押され、最終的に五位から十位までしか取れなかった。



 四回目の『ライブ』も物凄い盛り上がりを見せた。


 ナターシャお姉ちゃんの腕を振り上げるとそれに合わせてお客さんも腕を振り上げる。


 腕を左右にリズム良く振るとお客さんも合わせて左右に腕を振った。


 ナターシャお姉ちゃんとお客さんで凄い一体感を感じられる。


 更に『アンコール』を二回行うも以前は倒れ込んだナターシャお姉ちゃんだけど、しっかり体力作りをして今回は大丈夫だった。


 今回も物凄く楽しい『ライブ』だった。




 ◇




 四回目の祭りも終わって数日。


 セレナお姉ちゃんから来て欲しいと言われたので、行ってみると……。


「「クロウくん!」」「師匠!」


「えっ!? 『スレイヤ』の皆さん!」


 久しぶりの顔ぶれだ。


 もう数年会っていなかったけど、三人共全然変わってないな。


「実は先日エドイルラ冒険者ギルドで出会ったの」


 お姉ちゃん!? いつの間に冒険者ギルドに……。


「それでクロウにお願いがあるの」


 お姉ちゃんが両手を合わせて目を潤ませるおねだり・・・・ポーズをする。


 はわああああああああ!


 うちのお姉ちゃん世界一可愛い!!


 な、何でもいいぞ! 何でも叶えてあげるんだ!


「うぅ…………こちらの『スレイヤ』の皆さんを島に招待したいんだけど…………駄目かな?」


 その『駄目かな?』の部分で首を傾げるのは反則じゃああ!!


「うぉぉぉぉ! お姉ちゃんのためなら何でも叶えてあげるんだからぁあああ!」


 その後の「えへへ」ってその笑顔、絶対守りたいその笑顔。




 スレイヤ』の皆さんにはアカバネ商会の秘匿情報を秘密にする契約だけして貰い、アカバネ島へ招待した。


 これからは島へ自由に出入りして良いと許可も出しておく。


 そもそも、僕のレベル上げも助けてくれたし、おかげで木属性魔法も覚えられたから感謝しかなかったから、言ってくれれば拒否なんてしなかったけどね。



 島にある意味初めてのお客様になった『スレイヤ』の皆さん。


 ヘレナから「折角のお客様を迎えるのなら、宿を作られては如何ですか?」と言われたので、早速宿屋を作るように頼んだ。


 数か月後には宿屋も立つので、『スレイヤ』の皆さんが拠点にしたいと言っていた。


 ちなみに、食堂で安価で美味いご飯が食べれると喜んでいた。



 最後に、シリコ村からの高級品が売られているように、バイレント領からも何か良い案はないかと相談があり、農産物はアカバネ島、高級品食材はシリコ村があるので、畜産業をお願いしてみた。


 それから数か月にかけてバレイント領では全域で畜産業に転換してくれた。


 勿論、畜産業の動物等は全額アカバネ商会で持ったけど、それ以来バレイント領から育てられた肉類は高品質で非常に人気になった。


 バレイント領肉と言えば高級品と大陸中にその名前を知らしめたのである。



 こうして新しい僕の島『アカバネ島』を中心にアカバネ商会は王国内でも最上位の商会となったのであった。

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