第81話 商会の一新

 アカバネ商会が一新した。


 『アカバネ島』が商会の中心地となり、正従業員達が島で暮らす事となった。


 毎日正従業員達が各支店へ向かう形を取っている。表向きではそのまま支店で暮らしている事になっているので不思議がる人はいないはずだ。



 そして一番の課題の一つであった警備隊の件だ。


 ディアナちゃんのお父さんである警備隊指南役のアレウスさんからの提案で、全ての警備隊を『アカバネ島』で常駐させ、定期的に数人で各支店を見回りしつつ、『遠話の水晶』を使い緊急時には全員が出動出来るようにする。


 警備隊を三組に分けてそれぞれ日替わりで『見回る組』『緊急時対応組』『レベル組』に分けた。実戦が一番の経験だという事で『レベル組』は毎日ダンジョンでレベル上げをしている。


 警備隊は全員で15人なので各組5人ずつで、リーダーのカスカルさん、指南役のアレウスさんヘレネさんの3人がそれぞれのリーダーとなった。


 基本『見回る組』のリーダーがカスカルさん、『緊急組』がアレウスさん、『レベル組』がヘレネさんだ。



 警備隊全員には補助魔法を全力で掛けているので、全員『上級剣士』に食らいつける程に強かったりする。


 その中でもアレウスさんだけは特別に強い。戦闘能力の高い銀狼族の中でも天才の黒銀狼だからだ。


 因みにディアナちゃんも黒銀狼らしくて黒銀狼で生きてる女性としては唯一だという。


 女性は黒銀狼職能開花時に病気を発症し死んじゃうという……そう言えば彼女と初めて会った時、そんな病気だった気がする。


 そんな銀狼族の中でも最強のアレウスさん。


 補助魔法も掛かっているので、『剣聖』ですら勝てないくらいに強かった。


 時々セレナお姉ちゃんが稽古に来るらしくボコボコにされて喜んでいた。


 セレナお姉ちゃんは補助魔法で既に『剣聖』になった時くらいと同じステータス値になっている。



 警備隊だけでなく、料理隊にも大きな変化があった。


 うちの料理人達はその名を轟かせるような料理人達ではなかった。


 しかし、毎日新鮮な素材をふんだんに使い、大量の料理を作る。それが彼らのスキルアップにも繋がりどんどん上達した今ではかなりの腕の料理人達となっていた。


 ジャンルも色々、食材も環境も最高な状態で彼らが作る料理は大陸中で一番の食堂となっているはず。


 正従業員達は給料からお金を払ってでも食堂を使いたいと言う程。


 まあ、正従業員の特典で食堂は基本無料だけどね! 追加で食べたい物がある場合は直接交渉し料金を支払って食べられて、大半の正従業員達がデザート等を毎日頼んでいた。


 毎食頼んでも給金も多いのでと、使い道があまり無かった給金を使うようになったみたいだ。



 それと各地の服も買取されていたため、島で販売した所、従業員達の好評もあり島内部での販売等を行っている。


 それと、休店日には食堂も休みなので、食材も売って欲しいと頼まれて、島生産だったりシリコ村産高級品等を安価に売っている。



 気づいたら島で住んでる正従業員はその数が二百を超えていた。


 中々の大所帯だ。


 これからもどんどん増える予定なので、空家もたくさん作る。


 各地の欠損奴隷だけでなく、通常奴隷でも誠心誠意で働いてくれる奴隷は購入する事にしている。


 将来大陸全土の支店を運営する予定なので、人数はどんどん確保したいね。



 それから更に嬉しい誤算があった。


 それは水産物だ。


 島周辺の海にも『奇跡の大地』の補正が掛かるようで、漁を行ってみたところ、最高品質の魚が取れた。


 僕は肉よりも魚が好きだったので、これには歓喜した。


 僕があまりに喜ぶものだから、島で一番力入れた事業は漁になっていたのは驚きた。



 美味しい魚と野菜を腹一杯食べる幸せを思うと、僕が如何に恵まれているか実感出来る。


 ふと、前世の妹の事を思ったりしたけど、これからだ。


 アカバネ商会が広まれば、必ず会える。


 僕はそう思い、今日もアカバネ商会をどうしたら大きく広めるかと悩んだのだった。




 ◇




 ◆ダグラス◆


 アカバネ島が完成して数か月が経った。


 アカバネ商会設立以来ずっと欲しがってた専属土地だ。


 しかもどの国にも属さない、我々のオーナーの島だ。



 我々のオーナー、クロウ様。いや……クロウティア・エクシア様。


 最初に会った時、ただの子供ではないと思ってはいたが、新しい魔道具を作られ……俺の夢だった、自由に商売を出来る環境を提供してくださった。


 彼がどのような人物だろうと生涯仕えると誓った。


 それからクロウ様がまさかのエクシア家の三男などとは思わず、偶々エクシア家に交渉に行った時に会ったのだ。


 それから、オーナー専属の島が出来ると言われて……。


 気づけばアカバネ島が完成した。


 何処へでも通じる『次元扉』と物資の共有出来る『次元袋』。


 アカバネ島とアカバネ商会が恐ろしい速さで成長した。


 今では大陸でも有数の商会へと成長した。



 先日王国から勝ち取った王国領内の税金無しのおかげでアカバネ商会は販売も出来るようになった。


 超高品質農作物が飛ぶように売れ、シリコ村で取れる高級品も飛ぶように売れている。


 今期の決算会議では……我々のオーナーであるクロウ様に一泡吹かせたい。


 いつも驚かされてばかりだから、今期は大量の金貨を積み上げ、あのクロウ様に押し付けてやりたい。


 あの可愛い顔を驚かせたいと、俺達は今日も懸命に働くのであった。

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