第58話 アルティメットスライム
初めての従魔『ソフィア』が生まれた日。
僕とソフィアはお父さんとお母さんに呼ばれた。
「本当に『アルティメットスライム』なのか?」
「えぇ、クロウくんがそう言ったわ」
僕達を見ながら、にわかに信じがたいと言わんばかりな表情になったお父さん。
「クロウ、これから話す事は大事な事だから『ソフィア』と二人、心して聞いてくれ」
お父さんは真剣な顔で僕達に話す。
「『アルティメットスライム』が確認されたのは、記録でたった一度だけなんだ。虹色に輝くスライムと残されている。
今の『ソフィア』を見ればその記録が正しかったと分かるだろう、ではその記録というのは何なのか……かつて『賢者』だったテライン様が残された手記によるものだ。
テライン様の手記によると、今まで出会った中で最も凶悪だと感じたモンスターは『アルティメットスライム』だと記されている。その『アルティメットスライム』に出会ったのは、偶々ダンジョンの最下層だったそうだ。
『アルティメットスライム』は全ての魔法を飲み込み、あらゆる攻撃を飲み込んだ。『アルティメットスライム』がその気になれば、大陸すら飲み込む事が出来るだろう。と残されている」
僕達の視線が自然とソフィアに集まる。
ソフィアから「ワタシワルイスライムジャナイヨ」と伝わってくる。
「お父さん、ソフィアから自分は悪いスライムじゃないって伝わってきます」
「そうか――――でも残念ながらこの世界はこちらの意見を聞いてくれる程に優しい世界じゃないんだ。だからソフィアが彼らに見つかっただけで…………最悪の場合戦争の火種になりかねない」
お父さんの目がいつにもなく真剣だ。
お母さんも隣で真剣に頷く。
「でも…………僕はソフィアと離れたくないです!」
「うむ、別に離れて貰いたい訳ではないんだ」
「それで私達も色々考えてみたの。どうしたらいいのか…………それで思い付いたんだけど、ソフィアちゃんって『擬態能力』はないのかしら?」
「擬態能力?」
『擬態能力』
自身の身体を変形させ、違う姿を変える能力。
ソフィアがぷるぷる揺れる。
「出来るよーって言ってます」
「そうか、ならせめてソフィアちゃんの色を虹色から普通のスライム同様に青色に変えて貰える?」
お母さんからそう言われるとソフィアがぷるぷる揺れて、身体の色が変わり始め、青色に変わった。
うん、何処から見てもただのスライムだ。
「うん、それなら誰が見てもただのスライム従魔だね」
「お父さんお母さんありがとうございます!」
何とか離れ離れにならずに済んで良かった。
それから魔法訓練所に来た。
ソフィアちゃんからここに来て欲しいと言われたからだ。
どうやら自分の力を見て貰いたいらしい。
魔法訓練所の防壁は以前使い切った事があるので、防壁に『バリア』を最大に掛ける。
- 従魔『ソフィア』から『パスの接続』依頼がありました。-
ん? パス接続ってなに?
『パス接続』
主人と従魔の思考路を繋ぐスキル。
高位魔物の従魔のみが使用出来る。
う~ん、思考路を繋ぐってお互いに考える事が分かる事なのかな?
とりあえず、許可してみよう。
何か僕の中でソフィアと繋がる感覚があった。
【ご、ご主人様!? 聞こえる!?】
おおっ!? これはソフィアちゃんの声!?
【無事繋がったみたいで良かった! ご主人様ありがとう!】
僕も繋がってる所に声を出す真似をしてみた。
【ソフィアちゃん? 僕の声が聞こえるか?】
【え!? ご主人様!? パス会話まで出来ちゃうの!? これって人間には無理なはずなんだけど……】
【多分僕のレジェンドスキル『神獣の加護』があるから出来るんだと思うよ?】
【そっか! ご主人様のスキルにそんなスキルあったもんね! うん! 話せるようになって嬉しい!】
【そうだね、僕もソフィアと話せて嬉しいよ!】
それから暫くデレデレになったソフィアが僕の顔にスリスリしてきた。
ひんやりしてぷにぷにしてとても気持ち良い。
【それでね! ご主人様! 私こうしてパスを繋げてみたら、ご主人様の特別なスキルのおかげで、ご主人様のスキルが共有出来るみたいなの!】
【共有? 例えばどんな事が出来るんだい?】
【うん! 転移魔法も使えるし、異次元空間魔法も使えるし手伝える! あと、異次元空間にも入れるの!】
【ええええ!? 生きたまま入れるの!?】
【うん! 従魔の特権みたい! それでね、私は分体が作れるから何体か異次元空間において、整理整頓しているの!】
【おぉ! ソフィアちゃんは偉いな!】
【えへへ! もっと褒めて褒めて~】
ソフィアちゃんを撫でてあげる。
【それとご主人様が作り続けている『水』は私も一緒に作れるから作るね?】
最近水の消費がどんどん増えてるから助かるかも。
それから攻撃魔法等も試して貰った。
かなり強力な魔法が使えていた。
その中でも回復魔法が使えるのと、闇の手が使えるのが大きい。
しかも、『アルティメットスライム』専用技に究極触手という技があって、闇の手の完全物理版だった。
正直この魔法と技だけで僕は勝てないと思う。
次の日から『プラチナカード』も私が作るねと言われ、彼女の分体が異次元空間で一生懸命作り始めた。
一家に一匹ソフィアちゃん欲しいくらいに便利だね。
そしてその時、僕は気づいていなかった。
彼女が僕に黙って、とある事をしていたことを。
まさかソフィアが……あんな事をするなんて……。
次の日になるまで僕は全く知らなかった。
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