第57話 従魔

 ダグラスさんから、シリコ村で王国最後の支店の設立が終わったと聞かされた。


 シリコ村って大陸でも最南端に位置しているし、ワイバーンという飛竜モンスターの脅威で、あまり近づかないそうだ。


 それでもその周辺で採れる素材が高級品ばかりと言うから、急遽支店を建てる事になった。



 あれから数日後、頭に付けてる『魔物の卵』のMPを吸う勢いが弱まった。


 もうすぐ生まれそうだね。


 お姉ちゃんを呼びに行くと、ディアナちゃんと一緒に見たいと3人で僕の部屋で孵化を待った。



 数分すると、MPが完全に吸われなくなった。



 バリッ



 卵に亀裂が走る。


 バリッバリッ


 と亀裂がどんどん広がり――。


 割れそうになった所で卵から眩しい光が漏れ出した。



 そして数秒して光が収まる。



 卵があった場所を見ると――。


「これって……」


「スライムだよね?」


「可愛いです!」


 そこには、虹色に輝くスライムがいた。



 - 種族『アルティメットスライム』が従魔となりました。-


 - スキル『神獣の加護』により、従魔と意思疎通が可能になりました。-



 ぬお!? 今まで全く反応していないレジェンドスキル『神獣の加護』が!


 そしてこのスライムは『アルティメットスライム』と言うらしい。



「このスライムは、『アルティメットスライム』って種族だって」


「へぇー」「色がコロコロ変わってて可愛いです~」


 僕達が見つめているとスライムがこちらに何かを訴えてきた。


 ん…………?


「あ……、名前が欲しいみたい」


「何か良い名前あるかな~」


 僕の名付けセンス皆無だから……、


「ん~ぷよぷよしてるからプリンかな?」


「プリンって何よ?」


「えっ? プリンってデザートの……」


 あ……プリンってこの世界にはなかったっけ?


「本でそう読んだの」


「そう……でも良くわからないから違う名前ね」


 そんなぁ……僕が考えた渾身の名前だったのに。


「ぷよぷよしてるから、プヨちゃんはどうですか?」


「それただの特徴」


 ディアナちゃんの案もバッサリ切るお姉ちゃん。


「スライムだし、スラちゃんだと安直すぎよね」


 お姉ちゃんも名付けセンスないじゃんか……。



 しばらく3人で名前を考えるも、良い名前は出でこない。


 そこにたまたま通りかかったお母さんが部屋に入って来た。


「あら、珍しいわね。みんなで集まって何をしているの?」


「あっ、お母さん、育てていた『魔物の卵』からスライムが生まれたんで名前に困ってて」


「え? 『魔物の卵』? スライム?」


 お母さんに生まれたばかりのスライムを見せた。


「虹色に光るスライム? ………………まさか……ね」


「どうしたの? お母さん」


「クロウくん、このスライムの種族は分かるの?」


「はい、『アルティメットスライム』らしいです」


 それを聞いたお母さんがまた天を仰いだ。


「そう……か…………」


 ん???


「ふぅ……それで名前だっけ?」


「はい」


「可愛い名前が付けれなくて」


 じーっとスライムを眺めたお母さんは――。


「女の子っぽいし、『ソフィア』ちゃんはどうかな」


 それを聞いたスライムが激しくぷるぷるする。


 何となく、ソノナマエガイイーって伝わってきた。


「あ、凄く喜んでる。その名前が良いみたい」


「そう、それは良かった」


「へぇーこれからこのスライムは『ソフィア』ちゃんなの?」


「うん、君の名前は『ソフィア』だよ」


 そう言うと、スライムがもう一度短く光り輝いた。



 - 従魔『アルティメットスライム』に個体名『ソフィア』が確定しました。-



 おおー、名前も付けれるんだね。


「これから宜しくな! ソフィア!」


 スライム……もといソフィアは嬉しそうに身体を揺らした。




 ◇




 ◆アルティメットスライム、ソフィア◆


 私は生まれてからずっと『卵』のまま存在していた。


 いつかご主人様と出会える日を夢みて、今日もずっと眠り続ける。


 そんなある日、私の身体を抱きしめてくれる手を感じた。


 早く会いたい、だから思いっきりご主人様に甘えた。


 しかし、たった数秒でご主人様は私を手放した。


 それからそのご主人様は私に触る事はなかった。


 それから幾人か私を抱きしめてくれたけど、どのご主人様も数秒で手を離した。


 ご主人様…………。


 私はご主人様にお会い出来ないの?


 どうして、ご主人様達は私を抱きしめてくれないのだろう。



 それからしばらく時間が経った。


 私は卵のまま……今日もご主人様を待っている。



 それからまた私を抱きしめてくれた手があった。


 今回もまた数秒で私は手放されてしまうのだろうか。


 1秒……2秒……10秒……100秒――――。


 今回のご主人様は私を手放す事なくずっと抱きしめてくれた。


 ご主人様……早くお会いしたい。


 だから私も一生懸命になった。


 しばらくして、途中で違うご主人様が私を数秒触ってくれた。


 それから時々そのご主人様も私を抱きしめてくれた。



 ご主人様からいっぱいご飯魔力を頂き、休んでを繰り返した。


 私はいつになればご主人様にお会い出来るのだろう……。



 それでもご主人様は諦めずに、私をずっと抱きしめてくれた。



 遂に私のお腹がいっぱいになったとき、私は卵から出れるようになった。


 あぁ……これからご主人様に会える。



 私は卵から外へ出る。


 初めてみる世界――。


 初めて見るご主人様――。


 目の前には3名の人が私を見ていた。


 真ん中の黒い髪の男の子が私のご主人様だとすぐにわかった。


 右側に見える女の子も時々私を抱きしめてくれた方だと分かった。



 - 種族『アルティメットスライム』は『クロウティア・エクシア』の従魔となりました。-


 - スキル『神獣の加護』により、意思疎通が可能となります。-



 不思議な声が聞こえる。


 真ん中のご主人様が私のご主人様の『クロウティア・エクシア』様だとすぐ分かった。


 それから私にも名前をくださいとおねだりしてみる。



 色んな名前が候補に挙がったけど、どれも嫌だと感じた。


 最後にご主人様のお母さんから『ソフィア』と言われたときに、その美しい響きに嬉しくなった。


 これから私『ソフィア』はご主人様のために頑張ります。


 だからご主人様。


 私を見捨てないでね。









 名前 クロウティア・エクシア

 年齢 6歳

 性別 男

 種族 人族

 職能 アザトース

 レベル 49

 HP 520/520

 MP 45000/45000

 力 490×10=4900

 速 490×10=4900

 器用さ 490×10=4900

 耐 490×50=24500

 魔力 490×300=147000+5000

 精神 490×300=147000


 『従魔』

 アルティメットスライム『ソフィア』


 『レジェンドスキル』

  #&$% 、#!$&、異次元空間魔法、精霊眼、神獣の加護


 『魔法系統スキル』

  中級回復魔法、火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、氷属性魔法、雷属性魔法、霧属性魔法、木属性魔法、光属性魔法、闇属性魔法、転移魔法、次元魔法


 『スキル』

 言語能力、睡眠無効、痛覚無効、多重魔法発動、魔力超上昇、魔法無限調整、魔力高速回復、魔力超強化、魔法高速演算、MP消費超軽減、自動魔法、影封印、超手加減、自動収集

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